荷物の中身
修正、加筆の第三弾です。
一応変えたかった場所はここまで・・・の筈です。
ガタゴトと電車は揺れながら、郊外から畑や田んぼが広がる地域に入った。
線路は複線で、時々、茶色の電車や煙を吐いてる蒸気機関車とすれ違った。
やがて、さっき降りた駅で最初に見かけたような亜人や獣人が、線路沿いを歩いているのを見かけるようになった。
日本では絶対に見ない光景なのだけど、何故だか安心してしまった。
やっと落ち着いた気分になって来た。
逆に言うと、先程の騒ぎと光景が余りにも異常過ぎたのだと思う。
ガタン、ガタン、ガタン。
電車は小さな駅を通過した。
小さな駅では電車を待っているのか、人や獣人、それに亜人がホームに立っていたり、ベンチに座っていたりした。
カン、カーン、カ〜ン、クワーン、クワ〜ン、クワアアァン
踏み切りも通過した。
踏み切りの音は、日本の踏み切りのような電子音では無く、本当の鐘を鳴らしているようで、音が違っていた。
遮断器の向こうには、人や荷車が列をなして並んでいた。その中にはクラッシックカーのような車も止まっていた。
そんな車窓を眺めていてふと上を見上げた。
網棚にミナの皮製のスーツケースがある。
その横には、自分の皮袋の荷物が載っている。
自分の荷物なのに中身を見ていない。
いい機会だ。
気分転換に見てみよう。
席を立って網棚から荷物を降ろした。
なにが入っているんだろう?
ゴクリ。
唾を飲み込んだ。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ・・・タブン。」
ミナが笑いながら言った。
いやだからその多分が怖い。
さっきの騒ぎもあったし・・・・・。
覚悟を決めて、袋の上にあった紐を緩めた。
中を開けると・・・まず目に付いたのは杖?魔導具?
形はイギリス映画の魔法学校に出て来たものに似ているが少し大きい。
そして短剣が出てきた。
日本の懐刀のようなものが良かったんだけど、出てきたのは洋式の、剣の両側に歯が付いた短剣だった。
ちょっとガッカリした。
これも実は魔導具か?
更に分厚い聖書みたいな本。
これは魔導書かな?
「ふ〜ん。魔導具三点セットね。これだけあれば大概の事には対処出来ると思うわ。良かったわ。」
「そうなんだ。ありがとう。」
「後は・・・」
他にはランプに携帯コンロ、コップとかお皿とかのお食事セット、歯ブラシやタオル、毛布が出て来た。
それに服とか・・・下着・・・うわッ!?
直ぐに隠した。
「キャ、キャンプ道具みたいなのが多いね。日本のRPGで言う職業『冒険者』とか、そう言う類のための道具かな・・・」
そう言って苦笑いしながらミナを見た。
ミナは顔を真っ赤にしてポソリ
「・・・トランクス、青のシマシマ・・・」
と呟き、顔を手で覆った。
うわーッ!思いっきり見られてたー!
恥ずかしい!
なんでこれだけ日本にいた時と同じものが入っているんだよ!
中身を確認して、荷物をまた元に戻した。
魔導具以外はキャンプ道具みたいな感じだったけど、この後野宿するような事はあるのだろうか?
そもそも魔王とかとの戦いは無いって言うし・・・・。
でもさっきの騒ぎはなんだ?
あれで本当に戦いは無いのか?
あんな恐ろしそうな事・・・。
冷静に考えると、音と声だけで実際は何も無かった。
戦いどころか、何も破壊されていなかったし、逆に街は物凄く静かになっていた。
獣人が精気の無い人間に変わってはいたが・・・・。
でも物凄く怖かったのは事実だ。
けどこの世界で出会ったゴブリンや魔物系は、今のところ人畜無害だ。
これは間違いないと思う。
ミナはこの事で、特に注意するような事は言って来ない。
僕はラーメン屋のマスターを思い出した。
ゴブリンだったけどいいおじさんだった。
あの騒ぎの後・・・あのおじさんはどうなってしまったのだろうか?
「短剣が入っていたり、キャンプ道具みたいなものがあったけど、この先冒険みたいな事はあるの?」
ミナに聞いてみた。
「着いた駅で悪い人に絡まれる事はあるわ。
もっとも、そう言うところは決まっているし凄く希よ。
今のところ、そう言う場所には止まらないと思うわ。
でもずっと乗っていると必ずそう言う場所はあるの。
それまでには魔法の使い方は覚えていた方がいいかも。」
本当に魔法は覚えた方がいいみたいだ。
「後、辺ぴな場所に駅が作られている事があって、だいぶ離れた町まで買い物に行く事もあるの。
そう言う時にキャンプ道具は便利よ。」
そんな場所に何故駅を作るのかと思ったが、思い出してみると海外でもそんな辺ぴな場所に駅があるところがある。
荷物の中身を確認して良かった。
今後の方針がおぼろげに見えて来た。
まずは魔法を覚えよう。
そう思ったらミナが言った。
「そんなに気負わなくていいわよ。ここは異世界でもちょっと違うから。」
ん?どう言う意味だろう?
聞こうとすると、
「深く考えない方がいいわ・・・・・。」
またそれ?
けどミナの顔は少し怯えているように見えた。
さっきの騒ぎのせいか?
ミナにそれ以上聞くのはやめた。
また気に入らない場所があったら変える・・・かもです。