電車に戻った
こちらも今後の展開の為に大幅に追記、修正しました。
恐怖の騒ぎが治った。
その後、奇妙な現象が起きた。
店から猫人の店員さんが消えて、代わりに虚ろな目をした人族の店員さんが立っていたのだ。
「・・・・・お店を・・・出ましょう。」
「う、うん。だけど外に出て大丈夫なの?」
「もう・・・大丈夫よ。全て終わったから。」
ミナは顔が青ざめていた・・・それに少し震えているような気がした。
いや、実際に震えていた。
「ありがとうございました。」
店員さんが言った。
だけど、気のせいか心がこもっていないような気がする。
再び商店街に出て駅に向かって歩き出した。
しかし、来た時と違って凄く静かだ。
ロータリーに着くと、更に違和感があった。
雰囲気が違う。
なんだろう?
静かだ。
そうだ人がいない。
降りた時は、いろんな種族の人がいたけど・・・。
みんなどこへ消えたのだろう?
駅へ入った。
構内は降りた時と同じようにカウンターがあって、喫茶店もあった。
けれど・・・カウンターは人間のおばさんに代わっていたし、給仕も人のウェイターに代わっていた。
どちらも先程の甘味処の店員さんと同じで、目が虚ろだ。
カッパのメイドさんは何処へ?
オークのおばさんは?
そのまま駅の改札に向かった。
「おかえりなさい。切符を拝見します。」
こちらもさっきとは違う人族のおじさんが改札をしていた。
言葉使いは丁寧だけど、目が虚ろで精気を感じられない。
ゾンビとまでは行かないけど、ロボットみたいだ。
何が起こったんだ?
さっきの騒ぎと関係があるのか?
あるとすれば、何が起きたんだ?
耳に断末魔のあの叫び声が残っている。
思い出すと恐怖心が蘇る。
恐怖感を抱えながら、そのまま逃げるように電車に駆け込んだ。
席に座ってもまだ足が震えてる。
早く!早く出発してくれ!
けど、お客さんが戻るまで発車しないんだっけ?
「まもなく発車時刻になりまーす。乗り遅れが無いようにお急ぎくださーい。」
車掌さんが大声で、電車の外に立って案内をしていた。
えっ?発車時刻?
不思議そうにしていたら、ミナが説明してくれた。
「厳密に言えば発車時刻はあるの。それは乗るお客さんが全員駅に入ったら決まるの。」
分かったような、分からないような・・・。
また謎なルールが出て来た。
発車ベルが鳴って、笛が鳴り、ドアが閉まった。
チンチンと鐘が鳴った。
「フォーン」と警笛を鳴らし、唸るようなモーター音と共に電車は駅を離れた。
ガタン、ガタン、ガガガ、ゴトン。
ポイントを通過して電車はスピードを上げた。
外の風景は大きな建物から小さな建物へ変わっていった。
どうも住宅街を走っている様子だった。
しかし、来た時と違って人・・・と言うより獣人や亜人がいなくなったように見える。
さっきの悲鳴や鐘はなんだったのだろうか?
未だに怖さが消えない。
「あの・・・さっきの・・・」
「始めての異世界の町はどうだった?」
ミナが突然僕の言葉を遮り、恐怖心を打ち消すように明るく聞いて来た。
まるで何事も無かったかのようだ。
けど無理をしているように見える。
いや、実際に無理をしているのが見え見えだ。
ミナも怖かったのだろうか?
僕は敢えて先ほどの騒ぎを聞かず、ミナに合わせる事にした。
「歩いている人以外は、日本と変わらないんだね。あと・・・」
「あと?」
「魔法は無いの?」
この世界に来てから魔法を見ていない。
魔導具らしきものはあったけど・・・。
「魔法はあるけど必要がある時以外は使わないわ。使うような町は実は危険な町でもあるの。そのうち・・・・滅多には無いけど、そう言う場所に行くと思うわ。」
さっきのケースでは使わないのか?
あれは魔王が現れたとか、そう言うのでは無いのか?
「あとで魔法の使い方を教えてあげる。電車の中では教えれないからどっかの駅でね。」
「う、うん。ありがとう。」
「タケルの荷物の中に、魔法関連の物があるかも知れないわよ。」
「そ、そうなんだ。楽しみだな。後で見てみるよ。」
結局僕は、今の現象を聞けずそのままになってしまった。
ガタガタガタン。
電車はガタゴトと揺れながら住宅街を抜け、やがて家がまばらになり、車窓には畑や田んぼが広がり始めた。