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異世界電車の旅  作者: TOKU MATSU
異世界初日
1/99

絶望した人生

「お〜い!こっちに来–い!集まれー!」

先生が叫んだ。

赤煉瓦の建物でホールのような作りのせいか、先生の声が良く通る。

大きなリュックを背負い、或いはキャリーバックを引いて、制服を着たクラスメートが冗談を言ったり、ぶつぶつと文句を言ったり、ワイワイと騒ぎながら一カ所に集まって来た。

ただでさえ音が響く建物なので、話声がうるさく感じる。

「いいかお前ら!これから改札を通ってホームの近くまで行く。そこで少し待ってからホームに行って電車に乗る。くれぐれも逸れるなよ!」

「せんせー!」

「なんだ?」

「おしっこした〜い。」

「バカ!小学生か?我慢しろ!」

みんなが笑った。反響音で笑い声がエコーがかかったようになり、大きな騒音になっていた。

だけど自分だけ笑わなかった。

笑いたくなかった。

友達がいなく、馬鹿にされ、いつも異物を見るような視線をクラスメートから向けられてる。

そんな雰囲気の中で、心から笑う事なんか出来ない。

周りは僕の事を笑う。

暴力を振るったり、馬鹿にしたり、いじわるをして笑う。

厳密に言えば、自分も笑う事がある。

だけどそれは無理やり笑えと言って笑わされている。

本当は泣きたいのに。

先生ですら自分をネタにして笑う。

本当はいじめに気づいている。

けれども助けてくれたり、相談に乗ってくれたりした事が無い。

良く言う「これも人生の試練」とか「いじめる奴も悪いが、虐められる奴も悪い」と言う事のようだ。


今回の修学旅行は行きたくなかった。

行った先で酷い事をされるのが分かっているし、楽しい旅行になる筈が無い。

さぼりたかったけど、さぼればさぼったでそれを理由にまた何かをされる。


もう嫌だ。

もう何もかも嫌だ。

逃げたいけど逃げられない。

もう生きる気力も無い。

いっそこのまま電車に飛び込みたい・・・。


・・・そうだ。みんなの見ている目の前で飛び込もう。

そうすればニュースになるし、先生もいじめてたクラスメートもこの先の人生が終わる。

これは復讐だ。

遺書はトイレへ行った隙に書けばいい。

それしかない。

もうこの苦しみから逃れたい。


改札口へ向けてみんなが動き出した。

面倒くさそうに歩く奴、ヘラヘラと笑いながら通る奴。

他の人から見れば、普通の中学生に見えるのだろう。

だけど自分にとっては悪魔にしか見えない。


自分がホームから飛び込み、電車に跳ねられる。

それを見たクラスメートが悲鳴をあげ、先生がオロオロする。

やがて遺書が発見されマスコミに出る。

ワイドショーや週刊誌が偽善者ぶって騒ぐ。

クラスメートや先生は、馬鹿で愚かなネット民に実名を晒され外出すら出来なくなる。

彼らの人生はこれでTHE END 。

・・・こんな妄想をしながら、クラスメートの一番後ろに付いて改札を通った・・・。


改札を通った?

いや、通ったはず?

なんだ?何か変だ。

いやなんだこれ?


突然、目の前が真っ暗になった。

目を開けているのかいないのか分からないほど暗い。

歩いているのか?立っているのか?

自分がどういった状態なのかも分からない。

振り向いても、首を上に向けても、暗闇ばかりで何も見えない。

そもそも自分の体がどうなっているのか?

音も聞こえない。

暗黒と静寂の世界で自分が何者かも分からなくなりかけた。

「僕は死んだのか?でも何故?何もまだしてないのに!」

どんな形であれ、死んだのなら儲けもの・・・なのか?

復讐に・・・なっていない?

死んだのなら考えても無駄・・・でも無い?

だんだん思考が停止・・・していない?

あれ?

あれ?

あれ?


突然、目の前が真っ白に輝いた。

今度は逆に眩しすぎて何も見えない。

音も少しずつ聴こえて来た。

人の歩く音がする。

呼び込みのような大声も聞こえる。

やがて「ヴォ〜ッ」っと言う汽笛の音が聞こえた。

目が慣れて来て、目の前の風景に驚いた。

「えッ?ここどこ?」









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