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74.打ち明け話

僕は本当に楽しく話をした。

途中から地下の話になって、蒼も興味を引かれて話題に積極的に参加していた。

ユリと茜はちょっとついていけなかったみたいだ。


話の途中で、3人は宿泊先も決めていないと分かった。


『ユリちゃんの仕事端末なら詳細確認できるし、僕たち仕事の話で盛り上がってるし、茜とユリちゃん、この人たちの宿泊先予約してきてくれないかな』

と蒼。

『うん、良いよー』

と楽しそうに茜も返事して、チームの3人は、蒼のこの申し出に期待したように目を輝かせている。

『一旦茜と席を外してもらって・・・』

と蒼がユリを見る。


ユリが僕に視線で、いいのかしら、と確認している。僕は3人の様子を確認して、ユリに頷いた。

「ユリ、じゃあお願いできる?」

「えぇ。すみません、少し席を外します」

「おー、すいません、ユリちゃん」

「すいません」

「すいません」

と3人が揃ってユリに少し気を遣ったように頭を下げる。ユリに対してはこの人たちは礼儀正しくなろうとするようだ。


ユリが茜のAIと移動して応接室を去った途端、蒼が切り出した。

『僕は、皆さんにお伝えしたいことがあります』

「ん? なんだ」


なんだろう。僕も蒼を見る。


『皆さん、どうやら、サクさん以外がいるから、切り出せない話があるのでしょう』

との蒼の言葉に、3人が分かりやすく動揺した。特にガーホイはうろたえが出ている。


『だから僕も、茜にも言っていない打ち明け話を一つ。実は、僕の祖母は、研究所で生まれた人でした。もう亡くなりましたが、とても優しい人でした』

皆で驚いて蒼の画面を見つめる。蒼は落ち着いていて、笑みさえ浮かべている。


『だから、僕は多分、他の普通の人より、研究所という組織のしていることについて、詳しいです。それに秘密は守ります。僕は同席させてもらいますが、打ち明けたいことがあるなら、是非今をオススメします』


「・・・」

皆で驚いて蒼を見ている。どこか澄ましたように見える蒼。


チームの3人が蒼について少し探りをいれているような雰囲気を察したので、僕がまず口を開いた。

「じゃあ、僕が本当はまだ少年だって言うのを知って、あまり驚いた様子じゃなかったのも、研究所がらみだって察していたということ?」

『そうですね』


「ユリと付き合う時に、僕が何か違うって、蒼は気づいていた気がする」

『はい。一般的な常識では測れないかもしれないという可能性には気づいていました。そもそも祖母の事で、祖父はいろいろ調べました。祖母をきちんと迎え入れたかったということで、そのために』

「おぃ、それは、どうやって知り合ったんだ?」

と聞いたのはお店の人だ。

急に割り込むような質問だったので、僕も蒼もお店の人を見ると、ちょっと情けないような表情になった。

「いや、俺たちなかなか、普通の人間と交流する機会がなくてな。移動範囲に制限がある」

「制限あるのは誰でもだけどな」

「まぁな」


『祖父の仕事の手伝いを、祖母がしていたそうです。祖父は教員でした』

「へぇ」

「やっぱり職場かよ・・・」

チームの人たちが項垂れている。


「ドーギーさんは、結婚してるみたいですよね」

と僕は聞いてみた。

「あぁ。リナさんはドーギーの対のナンバーだからな」

「ふぅん・・・?」

つまり僕にとってはソルトのような関係の人と結婚したってことかな?


『皆さん、良いんですか。とにかく、話すなら今です、とお伝えしたいんですが。そのうち、茜もユリちゃんも戻って来ますよ。言いづらい話なら、どうぞ、今』

と蒼が急かす。


3人が困ったようになった。

「俺、サク坊に、相談があった」

とガーホイが言った。

「おい、何だその話? 聞いてねぇぞ。それより土産が先じゃねぇのか」

とヴェド。

「サク坊。秘密を打ち明けても信用して良いか」

とお店の人。


「・・・はい。蒼くんは真面目な性格です。ユリもです」

『茜は・・・』

蒼がボソッと尋ねてきたけど、茜はどちらかというと、親切心から秘密も話してしまうタイプだと思う。バスの運転手として皆を見てきた僕個人の勝手な印象だけど。


どう言おうかな、と僕と蒼のAIが静かに視線を合わせた時、バンバン、と膝を叩いて中断させたのは、お店の人だ。

「よし。手短に言うぞ。俺たちは、サク坊に土産を持ってきた。何かって言うと、普通じゃねぇモンだ」

「貴重品だぞ」

「ありがたく思えよー」

「ありがとうございます」


「で、庭を貸してくれ」

「え? 庭?」

良いけど・・・。とは思ったけど、家の建物の外に出ることを止められた身としては確認しておくべきだ。


「何するんですか?」

「畑作ってやる」


「え?」

「俺たちならチャチャっと作ってやれる。だからよ、ダブルセブンが来たんだよ。本当はエーゼだったんだがよ、話し合ってこうなった」

「それ言うなら、てめぇもグローズだったじゃねぇか」

「おぅ。良いじゃねぇか。サク坊とよく話してたヤツの方が良いってなったんだ、文句あるかよ」

「ねぇよ。俺も得したから」

ちなみにエーゼもグローズもチームの人の名前だ。どうやら本当はその人たちが来る予定だったのかな。

と思ったけど、僕にはそれより気になることが。


「ちょっと待ってください。家に畑はないんです」

「今から作ってやるんだよ」


「えーと、それはユリに聞いた方が」

「サク坊、俺たちわざわざ、ホンモノ持って来てやったんだぜ」


ということは、ひょっとして。


「種ですか?」

「種からだと苦労するだろ、苗木だな。あと、鳥も持ってきた」


「え、食用ですか?」

「おぅ」


「えーと」

「あ、毎日卵を産むからそっちがメインだぞ。簡単に食うとかいうなバカ」

「悪ぃ」



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