73.3人の到着
「そうかしら。好みの押し付けになっちゃったらと心配だけど・・・」
『あ。まって、蒼が、もう人型AIに私たちをリンクさせようかって言ってるけど、どうかな。そしたら、私たちがそっちで具体的にお手伝いもできるよー』
「お手伝いは大丈夫だけど、そうね、じゃあリンクしてもらっていても大丈夫。ふふ、茜ちゃんと蒼くんも一緒にお家に招いているみたいになるわね」
『うん』
「あ、じゃあお客様が来られるまで、茜ちゃんをお家案内しようか?」
『わ、それ嬉しい! 良いよね蒼! やったー、良いってー!! あ、一旦これ切るね!』
「うん」
なんだかユリと茜で怒涛の会話をしている、と思っていたら急に会話は終わり、2秒後に、人型AIの頭部に画面が現れて蒼と茜の顔が表示された。
『リンク完了したよ』
『ユリちゃん、これで話そー!』
「えぇ。いらっしゃい、茜ちゃん、蒼くん。サク、私、茜ちゃんをお家に案内するわね」
「うん。蒼は?」
『茜だけで。僕は仕事中だから』
なんだか急にお客さんが一杯だ。
僕が少し驚いているのを察したらしい、蒼のAIが僕のところにススッとやってきて、謝ってきた。
『すみません、騒がしくて』
「いいえ。いろいろありがとう」
『どういたしまして』
満足そうに、どこか誇らしげに蒼が僕に笑みを見せる。
***
ユリと茜のお陰で、にわかにおもてなし準備が始まった。
テーブルの上には先にクッキーなんかが用意してある。レストランで流れるような音楽も流している。
僕は何もしなくて良いんだろうか。
あの3人におもてなしって何が良いんだろう。そわそわしてしまう。
『サクさん、確認してもらえますか』
「え。はい」
蒼のAIが僕の傍に来て、まるでトレイを見せるようにして情報パネルを見せる。
蒼がしてくれた対策がそこに表示されている。
僕はただ頷いた。
どこまでで十分なのか分からないし、蒼はとても細かく考えていろんなことをしてくれている。
「ありがとうございます」
とお礼を言うと、
『どうしたしまして』
と答える蒼は頼もしい。
『ちなみに、思う存分対策ができて、僕も仕事冥利につきます』
「はは。そうでしたか」
『はい。それから、サクさんは僕も一緒に行動します。ユリちゃんには、茜がつきます』
「ありがとう」
『何かあったら、AIの機能で守ります』
「はい」
***
ついに、3人の乗った車が到着した。
こんなに準備万端で、僕は緊張してきたけれど、会えることにも高揚を覚える。
「迎えに行って良いですか」
『玄関を開けたところで止まってください。駐車場にまではいかないで』
少し残念に思ったけれど、僕はさっそく立ち上がって玄関に向かう。
扉を開けると、3人が、車を降りてキョロキョロ周囲を見回している。
「皆さん!」
僕は大きく手を振った。
さっと蒼のAIが僕の前になるように割り込むのを邪魔に感じるぐらいだ。
「こんにちは!」
「サク坊!」
「サク坊ー! よぉ、元気か!」
「おい、なんで俺たちの到着を知ってる」
ガーホイ、ヴェド、お店の人が僕をみて嬉しそうに声を上げる。
「ようこそ!」
僕が手を振り続けるのを、皆が顔を輝かせつつ、それぞれ車から荷物を持ち上げる。大きい。
ちなみに事前に蒼が内容を解析済みで危険物はない。食料をいろいろ持ってきたらしい。
3人そろって僕の待つ場所に走り込んできた。
「サク坊! 元気そうだな!」
とヴェド。
「ありがとうございます」
「あれ、サク坊の嫁さんは・・・? いないのか?」
とはガーホイ。
「あ、中にいますよ」
「出迎えはサク坊だけか・・・?」
とガーホイが少し心配そうに落ち込んだような声を出す。
「それはなんだ」
と横から口を出してきたのはお店の人。ちなみに蒼とリンク中の人型AIを見やって僕に聞いてきている。
「えっと、ユリは中でおもてなしの準備中で、そのAIは、友人の蒼くんが今使っています。もう1体人型のAIがあって、ユリの友人の子が使っていて。ホームパーティみたいになります」
「ホームパーティ!」
ガーホイが嬉しそうに目を輝かせた。
「へぇー」
と興味深げにお店の人もAIを眺めている。
「入って良いか?」
とはヴェド。
「どうぞ」
と僕。
「靴のままで良いのか?」
「はい、あ、このマット踏んで下さい。そうしないとユリが怒るんです」
「早速尻にひかれてるな」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど。ユリにとっての常識みたいです」
「お嬢様かよ」
「えーと、皆さん、会う前にユリの悪口は止めてくださいね」
「おい、ヴェド謝れよ」
「へい、スンマセンー。ていうか悪口じゃねぇよ」
「奥さんが気を悪くしたら俺たちが居心地悪いだろう」
わいわいと急に騒がしいけれど、僕はなんだか中央のチームの頃を思い出して懐かしくなる。
***
応接室に、僕とユリ、蒼と茜、そして中央の3人が集まった。
もともと騒がしい人たちだけど、今の3人はいつもより興奮しているように見える。
「すげぇ! でかい家だな!」
「広い部屋だな、おい! 豪邸かよサク坊のくせに」
「音楽流してるのか!」
見たままを口に出すように話し続ける。
とても騒がしいので、ユリはやっぱり怖いみたいだ。頑張っているけど、表情が強張っている。
ちなみに僕はまだ3人にユリを紹介できていない。
とはいえ、僕はこの人たちに慣れている。皆の言葉の切れ目を待ってから声をかければ良い。
「えぇと、皆さん、紹介させてください。僕の結婚相手の、ユリです」
「おぉ!」
3人がピタッとそろってユリを見る。ユリは分かりやすく身を震わせたが、一生懸命笑顔であいさつした。
「はじめまして」
「おー初めまして!」
「それから、こちらが、友人の蒼くんです。AIとリンクしてる状態です。こちらが茜ちゃん」
『こんにちは』
『こんにちは』
「おー! ちはー!」
「おー! ちわー」
「こんちは」
「で、こちらが、ヴェドさん。チームで僕がお世話になりました」
「おぅ」
「こちらがガーホイさん。チームでお世話になりました」
「おー」
「こちらが、えーと、夕食の時に行く店の店主みたいな人」
「おー」
やっぱりお店の人は、名前は言わない方が良いのかな、と思いつつ、紹介はこんな風に終了。
「えーと。じゃあ、どうぞ、おくつろぎください」
「おー」
「サク坊、なんか挨拶とかしてくれねぇのか?」
「え?」
「ほら、はるばる来てくれて嬉しいですー的な、なにかこうよぅ」
「えーと。本当に来てくださるなんて。遠かったのに、ありがとうございます。会えて嬉しいです」
「へへへ」
「ひひひひひひひ」




