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69.相談や連絡

「明るい話って何だろうって思って、そう思ったのにやっぱり暗くなってしまって。反省して、もう一度考えたら、すごく、曖昧な話になっちゃって」

「そう・・・」


「・・・ユリなら、明るい話って、何を話す? 教えて」

「明るいお話・・・? そうね・・・茜ちゃんと蒼くんたちも結婚していって、私も嬉しいってこととか」


「そっか。そうだね」

「・・・サクの、曖昧だけど明るい話は何だったの?」


「うん? 僕のはね・・・恥ずかしいんだけど」

「えぇ」


「ユリと一緒に暮らしていて・・・僕も回復して・・・子どももいたら良いなって」

「うん」


「仕事もしてるけど、僕は明るいところで仕事したいなって、言ったと思う」

「明るいところ?」


「うん。太陽の光が届いているところ」

「うん・・・」


「そういう、仕事無いかな」

「・・・ねぇサク、良いお仕事だったら、私も一緒にできれば良いのに」


「ユリはどういうお仕事が良い?」

「分からないわ・・・」


「一緒に探さない? ユリが良かったら」

「えぇ・・・」


少し考えたようになってから、ユリが嬉しそうな笑顔を見せてくれた。僕も嬉しくて笑う。


***


ユリとも、色んなことをまた話せるようになったと思う。

僕たちはお互い、遠慮していたのだと思う。今もやっぱりそうだけど、少し落ち着くことができた。


とはいえ、毎日の流れは変わらない。


午前中は、ユリは仕事で、僕はソウのところに行く。

戻ってきてから、ユリと一緒に昼食を食べて、僕はリハビリをしたりカウンセリングを受けている。

ユリの方は、午後も仕事の時間に使い始めた。それが普通の、本来の暮らしの流れであることと、少しでもきちんとやってみて色んなことを考えてみたいと、ユリが決めたからだ。


同時に、僕たちは、他にどんな仕事があるのかなんてことを、探しはじめている。


そんなある日。夕食後の時間に、僕はとても懐かしく思う人からの連絡を貰った。


***


『おぅ。久しぶりだな、調子はどうだ、サク坊』

ドーギーだ。

前ぶれもない急な通信だったので、僕は本当に驚いた。ちなみに傍にいたユリも驚いている。


「こんばんは。こちらは回復しています。ドーギーさんたちはどうですか?」

『んー。いや、それがなぁ。急な話で、悪いんだがよ』

「え、はい」

画面の中のドーギーが、困った様子で頭を撫でつけている。


『サク坊お前、見送りに行った連中に、「新居に来てくれ」と言ってくれたのか?』

「え、は、はい」

え、なんだろう。動揺する。でも確かに僕はそう言った。

隣のユリがズイ、と僕の端末をよく見ようと身を寄せて来る。


『本当に行っても良いのか?』

「え、はい」

答えながら、チラ、とユリを見ると、ユリの目は据わっていた。僕は慌てた。

「ちょ、ちょっとだけ待ってください」

ピ、と急に画面を停止させる。


「皆良い人だし、寂しがってくれたし」

「ねぇ、サク。どうして大怪我したのか、分かっているのよね」

ユリが怒っている。

僕はさらに慌てた。

「だけど、もう二度と会えないのも嫌だと思ったし、本当にお世話になったんだ」

「嫌よ。い、やー!」

「そんな事言わないで」


言い合っていると、通信具から、ピーピーと音が出る。待たせているから注意、の合図だ。

ユリは無音ながら、口の動きで『ダメ』と伝えて来る。

僕も無音で『お願い』と伝えながら、ドーギーとの通信を再開した。


『おぅ。大丈夫か。嫁さんが嫌がってるのか?』

ドーギーの指摘にドキっとして、返事が遅れる。

ドーギーが困ったような呆れたような顔をしている。


『サク坊。俺のチームは、馬鹿が揃っててな。言葉の裏とか事情とか考えるのが苦手なヤツが多い。知ってるだろ。サク坊が誘ってくれたって、もうウキウキ準備してやがる。土産は何が良いかとかよ』

「え。は、はい」

『今更俺にも止められねぇ』

「はい」

コクリ、と厳粛に頷く僕の傍で、ユリが僕の腕をとって僕を揺すっている。怒っている。


『おい、揺れてるぞ。嫁さんが怒ってんじゃねぇのか?』

「はい・・・」

揺すられながら僕は真面目に返事した。

『嫁さんの気持ちは俺も分かるよ。俺だって連れがサク坊みたいな事になったら警戒するし疑っちまう。すまねぇな。とはいえ、3人で行くみたいだから、逆に安心して大丈夫だと、俺は思う』

ピタリ、と僕の揺れが止まった。


ユリがズイ、と僕の腕の前に身を乗り出した。

「本当ですか?」

『あぁ。・・・事件の時、1人だったろう。他に誰かもう1人傍にいたら違ったはずだ。自制だって効くし、周りも動ける。反射神経がズバ抜けたのが揃ってるから対応できてた。・・・誤解しないでもらいたいが、俺たちは善良に真っ当に生きている。人を突き落とすなんて、考えねぇよ、普通はな』

「・・・」

「3人も大きな人たちが来るなんて、心配です。困ります」

とユリが訴えている。


『お嬢ちゃんの気持ちは分かるが、そっちのサク坊が声をかけたんだろ。純粋に喜んでてよ、もう水を差せねぇんだ。むしろ行かせてやりてぇと思う。選出のトーナメント戦まで企画しやがって、賞金は高速移動の往復チケットだ。サク坊に会いてぇって、盛り上がってな。サク坊の招待をこれっぽっちも疑ってねぇよ、こっちはな』

「・・・」

ユリが困ったようになった。

ごめんね。


『とはいえ、お嬢ちゃんが心配するのは分かる。これは俺の連れの意見なんだがよ、一軒家なんだろう。応接室はあるか? セキュリティレベルをMAXに上げればいい。費用は、上に俺からかけあってやれる。実質的には過剰防衛だが、精神的に安心だろ。連中にも、嫁さんが心配してるって理解ぐらいはさせられる。MAXレベルの警戒見せられたって大丈夫なようにしておいてやる。どうだ? 少しは安心できるか、お嬢ちゃん』

「はい・・・分かりました。有難うございます。どうぞよろしくお願いいたします」

「ありがとうございます」

と遅ればせながら僕もお礼を言う。


『なぁ、サク坊。会って良いんだな? 連中が会いに行って良いんだな?』

「はい。会えたら嬉しいです。懐かしいです」


『まだそんなに日数たってねぇだろ』

ドーギーが嬉しそうに、クシャリとおかしそうに笑った。

そうかな。でも、日々のとらえ方によってはそうなのかもしれない。

ドーギーの表情に、僕も嬉しくなって笑った。


『で、だ。連絡しとかなくちゃいけねぇと思って、急に連絡入れたんだがよ』

「はい」


『連中、アポなしでサク坊の家に押しかける可能性がある』

「え?」


ドーギーが困った顔をしている。

『いや俺もさすがに、サク坊にも予定あるだろうが、って何度か注意したんだが、理解しやがらねぇんだ。「急に行った方が驚いてその分すげぇ喜んでくれる」と、ガキみたいなこと思ってやがる』



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