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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
中央にて働く
37/95

37.地下にて

お宝とは何だろう。


「大昔には廃棄されてた物質だ。今なら大抵が分解できちまうから資源として回収できる」

「たくさんあるんですか?」


「さぁな。まぁ、潜れば潜るほど何かあるわけだが。AIで回収できる場所ならあとは別チームに託す。無理な場所なら、回収も俺たちがやる場合もある・・・。まぁどっちかっていうと探す方がメインだ」


初めて聞く仕事内容なので、なるほど、と素直に頷いた。

つまりはドーギーたちに付いていって指示に従えば良い。今は具体的によく分かっていなくても。


***


少しの休憩ののちに移動開始。

長距離で疲れを覚えてきたけど、弱音は吐けない。頑張ろう。


「着いた」

と言われた時は、僕はものすごく汗をかいていた。


「水分補給しろよ、サク坊ー」

と傍の人が声をかけてくれる。

僕は小さく「おー」と言って栄養ドリンクを取り出し・・・取り出したところで、取り上げられて驚いた。


「お前、これ濃度が高すぎだろ。フツーのないのか? こんなん飲んだら余計に喉が渇くだろバカ」

「あ、お茶も持ってきました」

「おいドーギー! もうガキがくたばってる!」


呼ばれたドーギーが、分かっていたように答えてきた。

「そりゃそうだろが。サク坊は身体強化タイプじゃねぇ。しかもまだガキだ。だからなんでこのチームなんだっていう話じゃねぇか」

「連れてくのかよ?」

「当たり前だろが。置いとく方が危険だ、分かるだろ?」

「こっちの仕事が進まねぇ」


すみません、と僕は内心で思いつつ様子を見守った。じっと聞く。


「初日だ。そこまでカリカリすんな、シルヴェ。お前だって6歳ン時は塀も超えられなかっただろが」

「このガキは俺の6歳ってことかよ」


嫌な雰囲気になっていく。


「仕方ねぇだろ。言っとくが、サク坊は精神強化型だ。ってコトはお前、サク坊の5歳の頃が今のお前かもしれねぇぞ、精神年齢がな」

「アァ!? 精神年齢が役に立つかよ!」

「良いから黙れ、おめーの方がウルセェよ。だったらお前がサク坊担いでやれば良いだろが。互いにラクだろ」

他の誰かが加わりだした。

「そりゃ良い案だな」

と誰かが面白がって笑いだす。


「お前らな、てめぇらも昔はガキだったと思い出しやがれ」

ドーギーがため息をついた。

「おぃサク坊、何黙ってる。言う事はねぇのか!」


僕は慌てて声を上げた。

「す、すみません! えっと」

とはいえ、どういえば良いのか。

実際、ついていけるか不安になってきている。どう意見を持てばいいんだろう。素直に言うしかない?

「体力が無くてすみません! 頑張ります!」


「おぅよ。倒れたら担いで持って帰ってやるよ」

ぶっきらぼうにドーギーが言った。

ブーブー、と不満そうな声がチームから溢れる。


「すみません。感謝します」

「良いか、ギリギリまで倒れんな」

「は・・・、おー!」

「よし。良いか、行くぞお前ら」


おー・・・。

不満そうにしながら、皆が声を上げる。

舌打ちの声も聞こえたけど、それでもまた移動が始まる。


***


宝さがしとは。ひたすら、歩いて、探すこと。本当に。

目印とか特に無いそうだ。

僕の隣の、初日の飲み会の帰り道に宿泊先まで僕を送ってくれた人、ガドル、が、そう教えてくれた。


一方、他の人たちも結局話しかけてくる。色んな人がいるけど、やっぱり親切なんだろう。

「見つかればこういうんだって見せてやれるけどな」

「ありがとうございます」

お礼を言うと、面白い事を聞いたような顔で僕を見て、その人は、周囲を指差した。ライトに照らされた範囲だけが見える。


「見ろよサク坊。ここは、今の町の下に埋まった、昔の町だ」

「昔の・・・。埋まったって、どうしてですか?」

「どこかが壊れたんだろ。廃棄だ。ドーギーも言ってたろ、物質分解使って作られたモンは、いきなり壊れちまう。チマチマ直すより、上に新しいもん作った方が楽だったんだろ。頭良いのか悪いのか分かんねぇけどな」

「・・・」

僕は見回した。


壁に、床に、パイプ・・・。真っ暗。


「サク坊は耳は良いか?」

と他の人が口を出してきた。

「え、いえ、普通だと思います」

「視力は? 身体的感覚は? 全部フツウか?」

「多分、そうです」


「仕方ねぇなぁ・・・」

その人は息を吐いた。


待ったがため息の理由は口に出さない。

じっとその人を見ていると、傍のガドルが口を開いた。

「耳が良ければ、壊れ始める音が聞こえる。気づいたらすぐに知らせる決まりだ」

僕は驚いた。

壊れ始める音って。

「どんな音でしょうか?」


ため息をついた人が答えてくれる。

「小さい、弾ける感じだな。サク坊には、まぁ、聞こえねぇだろなぁ・・・」

「そうですか・・・」

僕は周囲を見回した。


壊れ始める音・・・。とても小さな。


ここは地下深い場所だ。

そんな音が聞こえたら、怖くなりそう。


あまり、聞きたくないなぁ・・・。


***


ごく少量の鉱石が見つかった。黒い粉も一杯落ちている。

社会見学に見せてやれ、と誰かが僕を押したので、僕はかなり目の前でその黒い塊を見ている。


「これ、火が出たな・・・」

と大人たちが言いながら、テキパキ回収を始めた。大きいものは手袋をはめた手でリュックの中に。粉は吸引。


「聞こえるか?」

と立ち上がって誰かが言った。


「聞こえねぇな」

と誰かが答えた。


「あれはなんだ。緑の。光ってる。揺れてるぞ」

「・・・火だ! 燃えてやがる」

「消火だ消火! 行くぞ!!」

「まずいな」

少し向こうに向けて、皆がすぐ動き出す。


ギョッとして、僕もついていこうとしたら、ガドルが僕の肩を押さえて動きを止めた。

「子どもには危険だ。ここにいろ」

「・・・分かりました」


ボォッ!

と、急に一際大きな燃え上がる音がして、僕はビクリと驚いた。こちらにまで暖気が来た。

視線を緑色の煌めく方に移す、と。


僕と緑色の間を、女の子が走って消えた。右から、左に向かって。


え、何。


目の前、皆がワァワァ騒いでいている。


「おい」

ガドルが、僕の肩に置いている手に力を込めた。

「え、はい!」


「今、何をした!」

ガドルが僕を睨むように覗き込んだ。

「一瞬消えてたぞ! なにしてた!」

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