表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
中央にて働く
36/95

36.途中休憩

念のため、栄養補給のドリンクを飲んでおく。

こんなに歩くのって滅多にないのと、この後の予定がよく分かっていないから。


「まだ歩くんだが、いけるか」

「おー」

「実際のとこはどうだ」

「あの、大丈夫です。ただ、あの、僕の特異体質はご存知ですか?」

「あん?」

「大人になれます」

「・・・。おい」

ドーギーは顔をしかめた。

それからサッと周囲を見回した。


「お前ら、絶対外に漏らすなよ! 分かってるだろな!」

「おー」

と控えめに真面目そうな返事に驚いた。


「おい、サク坊」

ドーギーが僕を見ている。


「どういう事だ。そんな話は聞いてねぇ」

「いえ、でも、バスの運転手をしてました。向こうでも。身体を大人にできるんです。子どもで働いていたらおかしいからって、大人の姿で・・・」

「・・・今変われるのか? 困る事とか無いか? 消耗が早くなるとか」


そこかしこで話し声がしていたのに、ピタリと止んでいる。僕たちの話に耳を傾けているんだろう。


「あまりに長時間だと、疲れるかもしれませんが・・・でも栄養補給ドリンクは持って来ているし、5・6時間ぐらい全然平気です」

「・・・見せてくれ。単純に確認のためだがよ」

「はい」

うっかり普通に返事したと言った直後に気付いたけど、誰も冷やかしたりしない。


僕は速やかに姿を大人に変えた。

「ぅっ」

直後に身体を16に戻した。

「どうした」

「服が変わらなかった」

首とか締まりそうになった。服が破れそうな危険を感じた。


「あぁー・・・」

少し安心したように、ドーギーが唸った。他の人たちも、あー、と同じ様な残念な声を漏らしている。


「まぁ、一瞬だけど見た」

とドーギーは言った。複雑そうな顔をしている。

「服は仕方ねぇよ。パイプはすぐそこにあるんだけど物質が届くようになってねぇ。ここで昼飯注文しても届かないのと同じ理由だ」

「なるほど・・・」

「明日から、大人サイズの服を別に用意して持ってこい。良いか?」

「はい」

「でもなんでそんなことができる。お前、幸福感強めシリーズとかだろう。身体変化とかじゃねぇはずだ」

「そうですね」

と僕も首を傾げた。


「・・・廃棄対象だからだろ」

と周囲の誰かがボソッと言った。

「おい」

とドーギーが即座に咎めるような声をかける。


「・・・変異してんだよ、そいつも」

と別の誰かが呟く。

静かだからよく聞こえる。


「お前ら! 幸福感強めシリーズに何言ってやがる!」

よく分からない理由を上げて、ドーギーが周囲に怒鳴った。

「16のガキに!」


僕はドーギーをじっと見上げた。

きっと、僕を守ろうとしてくれている。

だけど、僕は廃棄ナンバーとか、そういう風に言われる理由を知りたい。

廃棄ナンバーなんて言ったのは、そもそもドーギーなわけだけど。今初めて、他の人からそんな言葉が出たわけだけど。


だけど。ここで聞かない方が良い。ドーギーは、僕に理由を教えたくないと思っている。

今ここで聞いたら、たぶんドーギーのチームの雰囲気を壊す。リーダーがドーギーなのに、彼をないがしろにしてしまうからだ。ドーギーは話題を切り上げようとしているのに。


「すみません」

と僕は言った。

「地下の仕組みも分かって無くて。明日、服を持ってくるので、それで見て判断してください。大人になった方が良かったらそれで働こうと思います。皆さん大人で大きいから、大人の身体の方が良いかなと思ったんです」

「・・・おぅ。明日見てやる」

「ありがとうございます」


周囲は、また静かに黙ったままだった。


「オラ、お前ら好きに休んどけ。今からサク坊への説明の時間だ」

「おー」


なんとなくまとまった空気の中、ドーギーが話題を切り替える。

僕も「おー」と答えて、頷いた。


***


「良いか。嫁さんにも言うなよ。これが地図だ」

「え。地下で仕事って言ってしまってます!」


「おぃマジかよ。記憶消去案件だぞ、サク坊・・・」

「絶対秘密だって言ってくれてます!」


「そうかよ・・・聞かなかったことにしてやるよ。だけど今からのは言うんじゃねぇぞ」

「はい・・・」

「今まで詳細黙ってたのはこのためなんだよ」

「はい。すみません」

「いや良いよ。こっから先を黙ってればな」


そういって広げてもらった地図は、本当に複雑だった。

なにせ、立体ではなく、平面図なのだ。

「古いだろ。仕方ねぇんだよ。紙は持ち込めるんだが、奥に潜るほど最新技術は届かなくなる。結局こういうのが一番安定してる。ついでにこれは、一度も物質分解されていない紙だ」

「え?」

「物質分解で再構築されたもんは、ある時期にいきなりボロボロ崩れる。手の打ちようがねぇ。だけど生粋のもんはよ、ちょっとずつ駄目になっていく。分かるんだよ、変え時がよ」

「・・・」

そうなのか、と僕は無言で地図を見つめた。


地図は十数枚あるようだ。これも一部かも、とふと思ったりする。

「今いるのがここだ」

他の1枚を出してくれて、

「集合場所はここだった。このルート、見えるか? このラインを通って」

元の地図に移ってくる。

「今ここだ。で、この後こう進んで・・・」

また別の地図が出て来る。

「ここの階段が長い。滑り落ちるんじゃねぇぞ。身体強化型の俺たちでも下手したら怪我する高さがある。で、今日の目的地はここだ」

「はい」

どうやら、ここは、全体の中間地点のようだと分かった。


「で、目的地にたどり着いてから活動する。簡単に言えば、お宝さがしだ」

「え」

意外な単語に僕は目を丸くしてドーギーを見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ