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29.手続きいろいろ

夫婦になると、新居を選ぶことができる。

ただ、僕は軽く話を聞いていただけで具体的にどうすれば良いのか知らない。一方、ユリは細かく教えられているようだ。


どこに住みたいか、どんな家に住みたいか、仕事は家で行うのか、など、いろんな希望を聞いてくれる。

良く分からないので全部ユリの操作に任せた。

授業で選択を考えさせられてきた様子で迷いがない。

そういえば、ユリと同級生の男の子、蒼が『彼女と結婚して中央が丘の高層タワーの』とか僕に明確に言うわけだ、と僕は横で見て思ったりした。蒼たちは今どうしているんだろうな。


ユリが最終決定の前に僕に、

「これで良い?」

と確認してきた。

「うん」

と僕は答える。


ユリの実家の地区に、一軒家。外観も、ユリの実家に近いものがある。とても豪華。僕には想像したこともない現実で、夢みたいだ。


決定。


ユリが自分の実家の地区を選択したことで、その地区の細かな説明はカット。

いつから住むのか、今の家からの荷物の移動の手配。もちろん時期も指定できる。


「嬉しい。この家、憧れていたの。近所の人から、あの家空いているから結婚したら住めば、なんて声かけてもらったこともあって」

「へぇ。立派な家だね」


「うん。ここにさせてくれて、ありがとう」

「こちらこそ。全部選んでくれて助かる」


「ふふ。嬉しい。・・・ちょっと入っているシステムが古くて、嫌がられたらって思ってたんだけど」

「あ、そうなんだ」

僕には仔細が分からないので嫌がりようもない。

「えっ、ごめんなさい、ダメだった?」

と僕の反応にユリが心配そうになった。


「え、システムなんて構わないよ。素敵な家で、夢みたいだよ」

「良かった・・・」

幸せそうに笑う横顔を見つめる。本当に夢みたいに幸せ。


***


友人への通知も行った。

「そういえば、蒼たちは結婚まだしていないの?」

と僕は確認した。


「研修期間が終わったら結婚するって聞いているわ」

「そうなんだ」


「研修期間直後に結婚予定の人が多いの」

なるほど、と僕は頷いた。


そういう話を聞きながら、ユリはずっと一人で、レオが振り向くのを待っていたんだな、と思う。

今更ながらレオに嫉妬を覚える。それが顔に出たらしくて、ユリが不思議そうに僕をのぞきこんだ。

思わず視線を逸らせてしまう。

「どうしたの」

と確認される。


不安定なユリだから嘘や逃げは良くない気がする。

「・・・その、学校の時の、ユリのことを思い出して、ちょっと今更嫉妬・・・」

正直にゴニョゴニョと白状した。


ユリは驚いたようになってから、僕にギュッと抱き付いた。だけど無言だ。

ギュウギュウ締め付けるのでちょっと苦しい。


「苦しい」

と根負けして助けを求める。

「サク。大好き。愛してます。サクは、私の英雄なの。バスの上に乗って、叫んでくれて。私に手を伸ばしてくれて。あの時から、私の人生が、変わったの。傍にいてくれた」

「・・・ありがとう」

あの時、ユリは断るつもり満々だったけど・・・。

「なに?」

とユリが確認して来る。


「断られるとこだったから。今が奇跡だなって」

「ごめんなさい。あの時、本当に私馬鹿なこと。サクのことよく知らなくて。茜ちゃんと蒼くん、私の恩人だわ」

「僕にとっても恩人」

僕は続けた。

「ユリは、僕の女神だよ」

「恥ずかしい・・・」

とユリは照れ、それでも嬉しそうになる。


***


宿泊先についての確認が最後にあったので、僕たちは相談し合い、ユリの宿泊先に僕が移動することにした。

研修期間も一緒に暮らすことにしたことと、ユリの部屋の方が広いし部屋も多いらしいのだ。それに、移動させる場合、僕の荷物の方が少ないし。


どうせすぐそこなので、今日のうちに移動することにする。

だけど手続きに引っかかった。数日待つ必要があるのかもしれない。


とはいえ、すぐそこだから、下見がてらユリの建物を見に行くことにした。


***


シュ、と扉が開く。

パァと照明が灯る。


その時点で、おや、と僕は思った。

ユリの建物は大きい上に、作り込みがきちんとしている。

受付には優美なつくりのカウンターがあって、AIが受付対応してくれることがすぐに分かる。

「夫婦になったの。今日からサクも、同じ部屋に泊まりたいの」

ユリはこちらで移動の確認もするみたいだ。

少し待ってから、ユリが困ったように首を傾げて僕を見た。


「応接室に案内されるみたい」

「うん」

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