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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
再会と顔合わせ
28/95

28.幸せ

「私の方は・・・サクのことを親は知っているし・・・。大丈夫よ」

「そっか。じゃあ、今日で良いよね」

「うん」


他の日でも良いけど、今日で良い。

お互い見つめ合っていたら、ユリが少し意を決したように見えた。

「あの、サク」

ユリが少し躊躇ためらって僕を呼ぶ。

「うん」


「あの、私と、結婚して、ください」

「えっ」

思わず僕は目を見開いた。ユリが真剣な顔をしている。

僕は慌てた。

「え、うん。ぜひ! 僕からもお願いします! まって、僕が! 言うって約束してたから僕が言いたい!」

「え、返事はそれなの?」

ユリが少し困ったように苦笑して首を傾げて見せる。


待って待って。

僕は息を吸い込んで、吐いて、真剣な顔になった。

「僕と結婚してください」

ユリが目を丸くした。口を少し開けて、じっと僕を見てくる。『言葉をとられちゃった』と表情で伝えてくるようだ。

だけど、吹き出すようにユリが笑った。

「はい」

とユリは答えた。

僕も安心して笑ってしまう。


クスクスとユリが笑う。

「酷い。サク、自分のプロポーズを優先したわ」

「だって。じゃあ、ごめんもう一度言ってよ」

素直に詫びて、言葉をねだる。


ユリは笑い顔のまま、僕に告げた。

「サク、一生私の傍にいて。結婚してください」

「はい。僕からも、お願いします。ずっと一緒に暮らしたい」


知らず両手を握り合っていて、僕たちは幸せな気持ちに包まれて、しばらく二人でクスクスと笑い合った。


***


夫婦になったと届け出を出すと、世の中に夫婦だと認められて、いろんな支援も受けられる。


僕たちは、届けの出し方や、どんな支援があるのかをそれぞれ学んでいたけれど、ユリの方がきっちりと教えられているようだ。


それに僕は研究所生まれだ。だから一番初めに、担当者に報告して、注意事項を確認することにした。


***


『うわー・・・おめでとう』

担当者が、驚きを取り繕う事もなく、あっけにとられた表情で僕たちに祝いの言葉を告げる。

「ありがとうございます」


『はやー』

「はい」


『サクー』

「はい」


『はっやー』

「・・・はい」


ただの事実の指摘だけど、赤面してなぜか顔がにやけてくる。僕はそれを隠すために俯いた。


『いや、早いのに驚いただけで、いやびっくりなんだけどさぁー。おめでとう。うんおめでとう頑張ってこれから』

「はい」


僕たちの妙なテンポの会話を、ユリが少しキョトンとしながら聞いている。

向こうの画面には、僕とユリが並んで映っているハズ。


『で、そうだねぇ、注意事項。うん。サクは、公にはこんな人間』

ピ、と図が表示される。

僕とユリとで不思議に眺める。

ちなみに担当者は、僕がユリに、僕が研究所で生まれた人間だと話していると知っている。


『僕の両親の三男がサク』

「はい」

『僕は次男。本当は上に兄がいたんだけど、亡くなっちゃっててね』

「・・・そう、だったんですか」


『うん。年齢はさぁ。ユリちゃんのご両親には二十五の姿で挨拶にいってるからね。調べたりは無いと思うけど、サクの個人情報には、研究所で働く両親がいる、って理由で、この家族関係以外は全部シークレット。高レベルの鍵かける』

「はい」


『大丈夫、今までにもこういうケース起こってるからさ、上も慣れてるでしょ。これからの手続きは、全部、名前かIDだけで済む。普通に暮らせば良い』

「はい」


『あ、でもさ、ちょっと引くぐらいの超展開だから、何件か、手続きに引っかかるかも。変な情報確認とかしてきたら、こっちの手続きが完了してないってことで、数日待ってから改めてやってみてよ』

「はい」

引くぐらいの超展開って言われてしまった。事実だけど。照れる。


『じゃあ頑張ってね。支え合って長生きしてよ』

ふと優し気な笑みになって、僕はじぃんと感動を覚える。

隣で、ユリが、

「はい」

と返事をしている。


本当は、廃棄ナンバーと言われたことも確認したいけど、今は止めておこう。


***


夫婦を、時代は大いに支援している。


夫婦の届け出の手続きを開始したのを察知して、部屋の各所に案内が出てきて、僕たちの応答を待っている。

とはいえ、順番に目の前に来てくれるのでこちらが混乱することはない。


僕のIDと、ユリのIDを送信する。すぐに夫婦として承認されたと回答が来る。


次に、両親への通知をするかと確認が来る。二人とも通知を選択した。

両親あてに記録映像が送れるようだ。


僕たちは先に、僕の担当者宛てに、御礼の言葉を告げる映像を記録して送信。

次にユリの両親あて。

僕は姿を二十六に変える。ユリの両親には、結婚の報告と、僕からの決意表明と、ユリの明るい笑顔と。研修期間が終わってから、きちんと挨拶にいきます、とも記録する。


その後は、新居申請だ。

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