表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
再会と顔合わせ
27/95

27.ずっと

「おはようございます」

『どうした!』


電話先のドーギーの声が大きいので、僕は音量をさらに小さく絞った。

「少し長く説明させてほしいです。要点を言うと、今日はお休みさせてほしいんです」


『何かあったか!?』


「理由ですが、僕、中央に呼ばれたのは、彼女のメンタルサポートが一番の理由で。彼女には秘密なんですが」

『メンタルサポート?』

「はい。研修期間中で、一人ですごく不安になったみたいで、彼女が。それで僕に、彼女の傍にいくようにって。それでこっちに来たんです。あの、この事情はご存知でしたか』

『初耳だ。それで』


「それで、昨日、彼女が僕の部屋に泊まることになったんです。それで、その、えっと、流れというか・・・一晩一緒に・・・」

言葉を探して目を泳がせた僕に、ピンと何か来たらしい。

『おっ!』

声が一際大きくなって、僕は慌てて、静かに、と頼むジェスチャーをした。


『おーっ、すまん! 傍に彼女が寝てるわけか!』

「はい」


『彼女ってのは、まだ恋人か? 夫婦か?』

「恋人です。夫婦の届け出はまだしてなくて、この後彼女と相談します・・・」


『っかー! そういう話か! 困ったら俺に相談してこい! 周りも色々いるしな!』


「ありがとうございます。あの、それで・・・知らなかったんですが、部屋に表示が出てきて、その、夫婦の行為をした翌日は、休みが取れるって・・・。申請希望に『はい』と回答したのですが・・・」

『あ、本当だ、俺のとこに通知、今来たな』


「すみません。あの・・・彼女の研修先にも通知行くんでしょうか? 別に連絡が必要なんでしょうか?」

『んー。いや、大丈夫だろ。安心して休んどけばいい』


「そうでしたか」

僕がほっとしたのが分かったらしい。

ドーギーが優し気に笑った。こんな笑みは初めて。


『俺にはわざわざ連絡いれてきたってか。良い心だけだ。おいサク坊、この話、チームに共有するぞ? でないと、お前初日から休んだ腑抜けになる。そりゃマズイだろ』

「・・・はい」


『恥ずかしがってるのか、ヒーハハ』

愉快そうに笑いだしたドーギーが、誰かに頭を叩かれたようだ。

『いって』


「・・・大丈夫ですか?」

『あぁ、悪い、気にすんな。しかし、昨日来て今日とは、手が早いねぇー・・・』

「すみません」

『すみません、じゃねぇだろ』

ドーギーが愉快そうに笑った。

僕もつられて笑みを浮かべた。


『ま、サク坊が16でこっち来た理由も分かった。休みな。嫁さんの傍にいてやれ』

「ありがとうございます」

『落ち着いたらまた連絡しろ』

「はい」

『じゃ、俺は準備があるから』

「はい」


会話終了。

僕はまた隣のユリを伺った。眠っている。

起こさなくて良かった。

そっと頬を指で撫でてみた。


***


「え、そう、なの」

目を覚ましたユリに、申請によって今日は休みになった、と伝えたら、ユリはカァと顔を赤らめた。


ユリには紅茶を手渡しながら、確認する。

「ユリも、そんな法律あるの、知らなかったんだ」

「え」

とユリはドキリと驚いたようだ。

「知ってた・・・学校で教わるもの・・・」


「そっか」

「うん・・・」

片手で紅茶を持ちつつ、ユリは片手で頬を抑えつつ、嬉しそうに笑んだ。


その表情を見つつ、そうか、研究所の教育と、普通の教育はやっぱり内容が違うんだな、と僕は思った。

色々知っている事が違いそう。

とはいえ、人口が減っている世の中だから、こういう法律があった事には納得。


「あ、でも、休みを狙って、昨日、その、サクの傍をねだったわけじゃないのよ」

ユリが慌てたように訴えてくるので、僕は笑ってしまった。

「うん。でも、休みで良かった。一緒に過ごせるし、安心するよね」

ユリは、はた、と動きを止めて、僕をぼぅと見た。

ん?


あ。僕に見とれてくれている・・・。


「あ、呆れて、いない? わたし、サクに、いつもわがままばかりで」

ユリが焦ったように顔を伏せる。

見とれていたのを誤魔化している。そういうのも可愛い。


僕は少し離れていたのを、傍に行った。

「呆れない。大好き。可愛くて、ユリは僕の女神」

「め、めがみ・・・」

ユリがカァと照れて俯く。チラと僕を見て、何かを言おうとしたが、何も言わずに黙ってしまった。なんだかさらに照れた様子。


***


さて。今日は一日休みだ。時間を気にせずのんびりしよう。

着替えて、朝食を二人で選んで注文して食べる。


そういえば、やはり僕には味の違いが分からない。いつも通りだし、ユリも文句を言う事もなく普通に食べている。

ひょっとして、ドーギーたちの味覚が鋭いのかな。すでに働きに出ているはずのドーギー達をふと思う。


「そうだ、ユリ、夫婦の届け出を、出したいんだ。良いかな」

「え、えぇ」

ユリが嬉しそうに笑った。

「サクが良かったら、今日出してしまうのも良いなって思うの」

とユリが言った。


「うん。僕も今日出すので良いよ。ただ、きみのご両親が驚かないかな・・・。先に相談とかしなくて大丈夫?」

「サクのところは?」

「僕のところは、いつでも『おめでとう』って言ってくれるよ。僕のところはいつでも大丈夫」

パチパチと手を叩いて祝ってくれる担当者の姿が簡単に思い描ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ