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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
再会と顔合わせ
25/95

25.戦い

しばらくじっとしていたら、ユリの涙が収まってきた。

僕は壁に向かって、飲み物を注文し、僕の腕から離れないユリをそのままに、端末に現れた案内画面を見て暖かいお茶を注文した。今日、ドーギーに教えてもらったことがこんなにすぐに役に立つなんて。


「お茶飲もうよ」

と提案する。

テーブルに現れたお茶を飲むために、ユリを立たせて、ソファーに座らせることに成功した。


一口暖かいものを飲んで、やっと落ち着けたようだ。

「ごめんなさい」

ユリはうつむいて、小さな声でそう言った。

「・・・帰るね。本当に、ごめんなさい・・・」

僕はじっと見た。どうするのが、ユリのために良いんだろう。


「帰るの? 明日休んだりは?」

「無理・・・。サクも、ごめんなさい・・・」


「泊まっていってよ」

と僕は言った。ユリは顔を上げて僕を見た。

「荷物は買えば良いんだし、近いけどもう遅いから。・・・海に行った日を思い出すね」

思い出して、僕は少し笑ってしまった。

ユリはしばらく僕を見つめてから、思い出したようでふと笑みを浮かべた。


「泊まっても、良い?」

「うん」

「明日、早いの?」

「あ、うん。タイマーセットしなくちゃいけないんだけど、ユリを起こしてしまうよね」

「何時? 一緒に起きる」

「7時だよ。そこまで早くないけど」

「あ、本当ね」

ユリが嬉しそうに笑う。


「ユリはいつも何時なの?」

「同じぐらい」

「じゃあ丁度いいね」

「うん」


「あと、荷物、僕ので貸せるのがあれば良いけど。好きに使ってね」

「ありがとう。でも、多分サクの荷物にはないから、大丈夫、買うね」

「そっか」

会話しながら時計を見る。もう日付はとっくに変わっている。


「そうだ、この建物、無人みたいだから、他の部屋借りても良いかも」

と僕は思いついて言った。

「え」

ユリが驚いて僕を見るので、僕も驚いて見つめる。

それから、そうか、ユリは僕と一緒にいたいんだ、という事実に改めて気づいた。少し顔が赤くなった。


「ごめん。お風呂の事とか考えたらその方が良いかなって思っただけで」

「うん・・・でも、一緒がいい」

とユリも赤面して少し俯いた。


***


僕が先に風呂に入ったり着替えたり就寝準備を進めて、その間にユリは荷物を注文した。すぐに部屋に届く。ちなみに、寝間着とか化粧品とかだった様子。確かにそれは僕の荷物には無い。


「サク、疲れてるよね。先に寝ていても良いよ」

すっかり泣き止んで普段を取り戻したユリが風呂場に姿を消した。


「うん、ごめん、寝ちゃうかも・・・」

と答えた僕の声は届いただろうか。


少しほっとしたからだと思うけど、僕は今日、いや昨日、この中央に着いたばかりで。普段にない行動ばかりで、どっと疲れを感じていた。


だけど、先に寝たら可哀想・・・。

ベッドに横になればあっという間に眠る自信がある。ということは座っているべき。でも座っていてももう寝そう。まずい、瞼が閉じて来る。


えーっと。

そうだ、ちゃんとタイマーをセットしないと。

ピッ、と建物に向けて情報を送る。これで良いのかな・・・。あ、良いみたいだ。『セット完了』と表示が出た。


「サク」

横から抱き付かれて僕はハッと顔を上げた。座っているのに寝てしまっていたらしい。

「ありがとう。大好き」

とユリがギュッと抱き付きながら、少し震える声でそう言った。また泣けてきたらしい。


僕も手を伸ばして横からきているユリを抱きしめようとした。正面に回ってきてくれたので、正面から。

「僕も大好き。かわいい」

嬉しそうにユリが笑った。


すごくいい匂いがする。やわらかい。好きだ。

ずっとこのままでいたい。むしろぎゅうぎゅう抱きしめたい。そうしよう。かわいい。好き。


「ごめんね、疲れているのに、私がわがままばかり・・・。私の方が年上なのに」

「僕の方が頼りがいがあるなら嬉しい・・・」

頼ってもらって嬉しい。

あぁ、とても、やわらかい優しい匂いがする。


「うん。いつも素敵で・・・呆れられないか心配してしまうの」

「可愛いから呆れるなんて絶対ない」

声もかわいい。言うことも全てかわいい。


「本当に?」

「本当」

ユリが顔を上げて、僕をじっと見つめた。

やっぱり可愛い。とてつもなく。美人。ぼうっと見つめてしまう。ねむい。ドキドキする。


顔が近づいてきた。と思ったら、少しずれて。

頬にユリの唇があたった。

そのまま、ユリはギュッと僕を抱きしめたので、顔が見れない。


ギュウウッと来る。

僕は寝ぼけていたのが目が覚めた。カッと体温が上昇した。


こ、これは、恋人同士でいつかするキスでは。それだ。キスだ!


ドッ、ドッ、ドッと自分の心拍数が上がってくる。


うわー。

うわー!!


「サク、ねぇ」

とまだ僕に抱き付いたままでユリが言った。

「海の日みたいに、一緒のベッドで、寝たら、困る・・・?」


「こ、、」

困る、良いよ、と同時に言いかけて、僕は呻きそうになった。

「・・・ちょっと、今日は無理かも・・・」

断った。

ユリを少し離そう。


あぁでも、離れたくない。

僕からもキスしたい。


だけどどんどん欲が出て来る感じ。まずい。

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