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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
再会と顔合わせ
22/95

22.紹介

「・・・先に、俺が言っといてやる。今から夕食で、チームの連中に会うが・・・。お前は、本当は廃棄される運命だった」


え、と驚く僕を、ドーギーがじっと見ている。

「無事に育って、不幸中の幸いってヤツだ。なんで俺のチームに来たのは俺たちが考えても仕方ねぇ。サク坊は、自分が廃棄ナンバーだって、知って、なかったな?」

僕の表情を見ながら、ドーギーが慎重に確認している。

僕は言葉なく、頷きを返した。


与えられた情報に、動揺している。

急にドーギーがブレて見えた。きっと緊張のせいだ。

僕はまた、時計を遅らせてしまいそう。


ドーギーの声は真剣だ。

「分かった。だけど、言ったように、俺たちのチームは馬鹿が多い。サク坊の知らない事を知ってるヤツもいる。良いか、そいつは、サク坊はそれを知らねぇってことが分からねぇで、お前に言っちまう。悪気はねぇ。深く考えてねぇだけだ。俺たちは身体能力型で、精神的な事が得意じゃねぇし、好きじゃねぇ。でも、だからって分かり合う事に手ぇ抜くな。怒ったって良い。ケンカなんてしょっちゅうある。言い分を伝えないと分からねぇ。俺の説明、お前にちゃんと分かってるか?」

コクリ、と僕は頷いた。


この人は、僕を思って話してくれている。

具体的に僕が良く分からなくても、事前に注意を促してくれている。


「言葉で返事しろ。無言でいるな」

「わかりました」

「そうだ。良いか、声が基本だ」

「はい」

「多少馬鹿な方が可愛げがある」

「・・・はい」

「まぁサク坊なら大丈夫だろう」

「はい」

つまり僕は馬鹿だと言っている。ちょっと微妙。でも悪気はないというのはこういう事なのかな・・・。


なんだか複雑な気分になったが、ドーギーの方は、言いにくい事を言ったのでスッキリしたらしい。

「よし!」

と両膝を自分の両手でバシッと叩き、立ち上がった。

その音に僕はハッとした。


「俺らのうまい店に案内するぞ! 奢りだ」

「あ、ありがとうございます」

「ん、んー? なんだ、時間経ってねぇな。いや、そんなはずねぇ」


『計器の乱れを感知しました。修正しました』

と壁にメッセージが現れた。

時刻が一瞬で修正されたので、ドーギーは口を開けてから無言でまた口を閉じた。

それから首を捻る。


「あ、あの」

僕の体質を説明する前に、ドーギーは呟いた。

「ここも駄目だな」

「いえ、あの」

「サク坊、行くぞ。俺んとこは時間厳守だ!!」

「え、はい!」


ズカズカ歩き始めるドーギーに、僕は慌てて後に続く。


移動中に説明した方が良い気がする。

だけどそうしたら僕を持て余す?


僕が、廃棄ナンバーって、どういう事なんだろう。

ついていけば、他の人が教えてくれる? 僕の意思に関わらず。


それを聞いたら、僕は大幅に時間を遅らせてしまいそうな気がする。

ドーギーに打ち明けておくべき?


***


移動中、とてつもなく親切な事に、ドーギーは僕に見える景色の色々から、中央について説明してくれっぱなしだった。

あれは、何の建物だ、とか。あそこにマークが入ってるから目印に覚えとけ、とか。

似た色の建物ばかりなので、僕が街を覚えやすいように話してくれている。


僕はうなずいたりそれに答えたりするのが精一杯だった。とても親切な僕を思っての情報で、自分から急に違う話題に持っていけない。


ただ、途切れないドーギーの話に僕はふと心配になった。


夕食って、結構遅くまであるのかな・・・。そんな気がする。話が盛り上がって長引きそうな・・・。


夕食後にユリと会う約束をしていることを、先に話しておいた方が良い気がしてきた。

だけどどうも僕の歓迎会らしくて、とても言い出す事ができない。


***


案内された店に驚いた。

他の建物に相応しくなく汚れていたのだ。

明らかに他の建物から浮いている。


「新人連れてきたぞー!」

ドーギーが声を上げて扉を乱暴に手で開けた。

僕は色んな意味で動揺した。


扉が自働じゃない!? ボタン制御でもなくて、手で開けるんだ!?


オー、という低い声が歓声なのだろうか。

「おいサク坊だ!」

「おー」


「は、はじめまして」

「おー!!」


「酒だすなまだ16だぞ! ジュース! お子様の飲み物だ!」

「おー・・・」

「サク坊そこ座れ!」

「は、はい」


長いテーブル。カウンターだ。カウンターしかない。

ドーギーみたいな男の人ばかりが並んで座っている。カウンターの中にも!

「ウィ」

変な掛け声と共に、僕の前にグラスが置かれる。

「なんだそれ」

「ミルクだ」


途端、馬鹿にした大きな笑い声が店内に弾けた。

「ミルクだと!」

「貴重品だぞ」

「違いねぇ! 取り寄せか!」

「当たり前だ、言っとくが乳児用じゃねぇぞ、カルシウムが骨に良い」

「違いねぇ!! 俺もミルクいっとくか!」

「取り寄せが面倒だっての」


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