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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
再会と顔合わせ
21/95

21.ドーギーの求め

「ところで、サク坊。何かおもてなししろよ」

「え?」

「飲み物とか食いもんとか」

ドーギーが促してくる。どうやら僕はきちんとできていないらしい。

「はい・・・すみません、仕組みがよく分かってなくて」

そういえば先ほどユリもお茶をいれてくれた。応接室のルールかな。


「俺は訪問者で、ここはサク坊の建物だ。注文はサク坊から出すもんだ」

「注文、すみません、どうやって」

「客人のおもてなしセットをくれとか言え。この建物なら、壁じゃねぇか?」


僕はソファから立ち上がり、あたりを眺めまわしてから、部屋全体、つまり壁に向かって言ってみた。

「ドーギーさんをおもてなししたいので、お茶と食べるものをください」

ブル、と僕の端末が震えたので少し驚いて取り出してみると、案内文が表示されている。

『プランA:コーヒー2セット、300E。プランB:コーヒー2セット、チョコレート一盛り、500E。プランC・・・』

「お金がいるんだ」

初めての事なので驚いて呟いてしまった。案内板には、プランFまで現れている。

お店ではないから、施設付属の無料サービスだと勝手に思っていた。


「サク坊、小遣いちゃんとあるよな?」

「あります。大丈夫です。これ・・・ここで注文で良いんですね。プランがいろいろあるのですが・・・そうだ、夕食というのもここで?」


僕の確認に、ドーギーは困ったように首を傾げた。

「こんなガキにたかるのは気が引けるなぁ」

と、なぜか今更呟いた。


「あー、今日は俺が奢ってやる。俺のやり方見とけ。仕方ねぇなぁオイ、サク坊」

ドーギーが嘆くようにしながら、ソファーから立ち上がって端末を取り出し、僕の端末に近づける。

僕の端末に出ていた案内をドーギーの端末にも表示させたようだ。


「夕食は他のとこいくぞ。チームの顔合わせも兼ねてるからな」

どこか面倒くさそうにしながらも、思いのほか丁寧に、ドーギーは端末を見せながら、応接室での注文の仕方を僕に説明してくれた。


この人は良い人だった、と僕は自分を恥ずかしく思った。


***


プランBのコーヒーとチョコレート一盛り。


「安いとこに泊まってるって味だな」

ドーギーはとても残念そうに項垂れた。


「すみません・・・」

「サク坊の問題じゃねぇよ。だけど、なんていうか、研究所生まれって味わいだな」

ドーギーの感想に僕は首を傾げる。


「ま、仕方ねぇ」

ドーギーは何かを諦めたようだが、僕は確認したくなった。なぜなら、ここでユリをおもてなしする事だってあるはずだ。

「普通より、質が悪いんですか?」

「質。分からん」

ドーギーは暗い眼差しで僕を見る。


「お前、サク坊は、これを旨いと思うのか」

「こういうものなのかなぁ、って」

ドーギーは呆れたようにソファーにギシ、と持たれかかった。

「そうか」

と言っただけだ。


僕は説明を聞きたかったけれど、ドーギーはその話題に執着しなかった。


「まぁダラダラしてても仕方ねぇ。仕事の話をするぞ。サク坊は、俺のチームで働くことになった。地下だ。明日の集合場所と時間は、オイ、端末出せ」

言われたのでドーギーに端末を見せると、ドーギーは僕に集合時間と場所を送ってきた。

「それだ。良いかお前、今日みたいにギリギリに来たら次は蹴るぞ。余裕考えろ。タイマーセットしとけ。この建物にも送っとけ。建物中で知らせてくれる。初日から他のヤツ待たせたらお前、使えなくてどうしようもない、無視されるぞ」

「はい。今日はすみませんでした」

「ほんとにな」

ドーギーが僕に呆れてしまっている。本当にすみません。明日からはきちんと余裕ある行動をしなくては。


「持ち物だが、昼飯を持ってこい」

「現場で注文しては駄目なのでしょうか?」

僕は不思議になって尋ねた。

ドーギーは首を仕方なさそうに振った。

「無理だ。地下には届かねぇよ。だから地上で注文して入手したものを持ってこい」

「はい」

「まぁ、忘れたら俺に言え。なんとかしてやるから」

「ありがとうございます」

思いがけない厚意ある言葉に僕は少し驚いた。僕はどうもドーギーを悪く判断してしまっている。


「なんでお前が俺のチームか分からんが、まぁ現場で都度指示をしてやるから。現場では黙々と働けよ。あと、お前は精神型って事だが、結構肉体労働だからな」

「分かりました」

「一応わきまえてやるけどな。まだ16だし。・・・ただ、お前・・・サク坊」

ドーギーは少し注意深く話し出そうとしている。


「はい」

僕はじっと言葉を待つ。


「・・・お前、12年前ぐらいか、大きな事故の中、生きてたヤツだろう」

「え? はい」

つまり4歳の時、僕が恐ろしいものを見た日の事だろう。


ドーギーはじっと僕の目を見た。

「・・・サク坊が精神型ってのは分かった。ただ、俺のチームは基本的に身体能力型だ。つまり頭脳的にはバカもいる。深くモノ考えるのが苦手なヤツもな」

「・・・はい」

何を言われるのか、僕は不思議そうな表情を見せながら、言葉を促した。

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