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女神を手に入れる僕の話  作者: 天川ひつじ
告白とお付き合い期間
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02.気になっていた (僕 視点)

きれいな子、と思った。初めはそれだけ。


スクールバスの運転手として働いていた僕は、学校に通う年齢の子どもが、ワイワイ楽しそうにそれぞれの関係を作っていく様子を、あくまで第三者として、幸せな光景だなと見守っていた。


子どもたちはバスの中で長時間を過ごす。

子どもたちは疑問に思うことはない様子だけれど、僕は理由を教えられている。

今の世の中は、人間があまりにも少なくなってしまった。

だから、広い範囲をバスで回って、学校を行うために子どもたちを集めて来なければならないというわけだ。


もっと効率のいい方法があるのでは、なんて疑問に思う人もいるはずだ。そもそも学校なんていらないんじゃないか、とか。

勉強ならネットワークで情報を流して、それぞれの住む場所で学ぶ事だってできるはず。


そうして学校をやめた時代もあったけど、大きな問題があると分かってしまった。

結婚する人たちがさらに減ってしまったのだ。

同年代の子どもたちが大勢、実際に顔を合わせる場所が無くなったことが大きな原因のようだった。

人間が減っている中に、結婚して夫婦になる人がこれ以上減ったら、ますます子どもが生まれてこない。人類が滅亡してしまう。


つまり出会いの場として、またはその後の人間関係のために、学校は必要だったということだ。

長い距離をバスで子どもを集めて回る必要があったとしても。


さて。僕はスクールバスの運転手だ。厳密にいえば、お迎え担当。

バスの中、皆は楽しそう。

そして、学校の前に来ると皆を降ろすことになる。


皆はワイワイと元気にバスを降りていき、すぐ仲良しグループでまとまりながら道を行く。

ちなみに、最小単位は異性同士で2人1組になっていく。

卒業が迫っている時期になると、仲良しグループにいるけど恋人はいない、という人は目立つぐらい。


僕は第三者で、バスの運転手という少し高い座席から皆を眺めるためか、人間関係がよく見えた。

そして、気になってしまう。

余ってしまった1人と1人でくっつけばいいのに、とか。


あの子とあの子は余っている。

特に、あの女の子、ユリは、あの男の子、レオを気にしている。友達の茜が、レオにユリをオススメしている。

なのに、それは叶えられないんだ。

だからユリは少し下を向いてしまう。


切ない。


どうしてレオはユリでは駄目なんだろう。

美人だし性格も良いみたいだ。皆が声をかけるのをためらうぐらいに優秀らしい。お金持ちでもある。

とても良い子だ。


だけど、レオも、一途らしくて、もう相手のいる子を未だに諦めることができないでいる。

せめて学校の時代は、傍にいれるだけでもいい、なんて思っているようで。


そんな毎日を送る中で、僕は、余ってしまった女の子、ユリにかなりの好意を抱いていた。


もう今日が卒業の日。

結局、最後の日まで、彼らの関係は変わらなかった。


僕は思った。

レオも哀れだけれど、ユリも傷ついている。隣が空いている者同士なのに、それでも選ばれない。

隣に並んだら、きっと誰より似合いなのに。


きみは誰からも選ばれずに終わったと思うなんて、嫌だなと思った。

僕はきみが良いと思うと、伝えたいと思った。心から。


加えて、それ以上になればいいとも願った。


もし僕が駄目でも、それはきみへの贈り物にならないだろうか。


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