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二話

魔術武術学院には、あちこちから志願者が集まる……。勿論、名家とされる優秀な家系の子息から、一般家系の子息迄様々である。夜鷹家は、確かに魔術や武術において優秀な家系ではあるが、裏家業で成り立ち、表においては特に華やかな家業ではなかった為に、名家というものでもなく、知名度も高くない。


さて……、入学試験に当たっては、筆記試験による学力調査と、実技による魔術及び武術の能力調査が行われる。魔術は闇魔術を使う(暗黒魔術は使い手が殆どないので目立ち過ぎる)、武術はまあ大丈夫でしょう、っていう感じだ。

事前隠密調査で、今期の入学試験では、火の名家、土の名家、風の名家、‘大和の聖女’っていう教会極東支部の聖女が参加するという情報が入っている。隠密は、夜鷹家にとって、ご飯を食べるという位当たり前にこなす事であるけれど、情報管理としては如何かな、という処である。名家や聖女がいるから、何か問題があるか?というと、特に無いが、彼らに目をつけられても面倒なので、気をつけるに越した事は無い。


聖女と言えば、先代の聖女、聖羅氏に逢った事がある。

あれは、10年前の北陸大震災の折の事だった。震度7、マグニチュード8.0という大きな地震で、家屋やビルの倒壊、火災等が相次いで起こり、死者、負傷者が多く出て、聖女が負傷者に対する治療の為、教会から派遣された。まあ、そこで一悶着あった訳だけど……。いわゆる、教会と金の関係が露呈してしまったという訳で……、それは教会関係のスタッフの失策だったと思うよ……、スタッフ個人なのか教会からの指示によるものなのかわからないけど、まあ、どちらにしても、教会と金の関係について把握している者である事は否定できないだろう。世の中、金は否定できないし、教会が言っている事はあくまで奇麗事で……、実際にやっている事は全く変わらない、むしろ、悪い事の典型的な例を示してくれているかの様である。信者は全く知らないし、信じてない、認めようとしないけどね……。

理念は良いけど、運営しているのが天使を騙る悪魔であるから仕方ない……。


話は逸れたけど、先程も言った通り、負傷者の中に富豪で寄付金を多く納めている者が居て、教会のスタッフもそれを知っていた。そして、負傷者が救護院に運ばれて来て、その中に、重傷の貧乏人と、比較的軽傷の富豪が居た。聖女は、重傷の負傷者の元に急いだ、当然の事ながら。しかし、教会のスタッフがそれを止めて、軽傷の負傷者を指差した。

「ねぇ、教会のオジさん? あの人は、消毒してガーゼして化膿しないようにすれば自然に治癒するような人、聖女サマが向かおうとした人は、肋骨が骨折して肺に刺さっているかもしれない、できる限り早期の治療、少なくともあの人より優先する負傷者だと思うんだけど、何故止めたんですか? あっ! オジさん、知っているんだもんね、あの人が寄付金いっぱい納めている事。教会って、金が物言うんですよね……? ヤクザだって、人情を見せる事があるって言うのに、貴方の方がよっぽど悪魔に相応しいと思いますよ?(だよね……、強欲?)」

止めたのは小さな少年……。

「おい、このガキをつまみ……」

「出してはなりません! この少年の言う通りですね。」

つまみ出そうとしたスタッフを止めたのは聖女サマだった。

「さあ、少年! あの人の所に向かいますよ?」

少年の手を取り、重傷者の元に向かう聖女サマ。

「レイですよ、聖女サマ? オジさん、あっかんべー……!」

あからさまに舌を出して、スタッフを挑発する少年…。。

「このガキ!」

「レイ君、あまり挑発しないでね……。貴方も、あの人の処置に向かってください。」

聖女は、少年を窘め、青筋を立て呻くスタッフを処置に向かわせた。

「あの人は、レイ君の知合いの方?」

「違うよ、聖女サマ? 」

「そうなの?」

「聖女サマは聖女サマで良かったよ……。聖女サマも、天使騙る悪魔でなくて良かったよ……。あの人は知らない人だけど、あの人の、僕より2つ3つ上位の女の子が心配していたからね。向こうの人はね……、家族よりお金を護ろうとして怪我した人なんだよ? あの人の家族は僕の叔父さんが助けたけどね……」

「そうなんだ……。私、君に試されていたみたいで、素直に喜べないんだけど……」

聖女サマは苦笑した。

「お詫びに、聖女サマが、将来困った事態になった時には、僕が手助けするよ!」

「ありがとう、気持ちだけ受け取るよ」

聖女サマは微笑みを浮かべた。

「聖女サマは忘れても、僕は覚えているからね!」


「ねぇ……、レイくん? ありがとう」

少女が、僕の服の裾を軽くクイックイッと引っ張り、声を掛けて来た。

「ん……? ああ、聖女サマが向かった人の……」

「あの人は私のパパなの……。ありがとう、君が助けてくれなかったら……」

涙目で見つめて来る少女……、弱いんだよね……。

「いやいや、とんでもないよ、それに偶々だよ? もし、君が……」

「レナ(怜奈)だよ?」

「レナ……さん?が困った事が有って、僕の近くにいる事があったら、声を掛けてよ? 僕に出来る事があったら、力を貸すよ? というか、協力するよ?」

夜鷹家に染まりきってない、幼き頃の僕は何て事言っちゃってるんだろ?

「約束だよ?」

「うん!」


あの子は元気にしてるんだろうか?









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