六話
「あいつ……、風祭家の坊っちゃんとの決闘に勝った奴だぜ……?」
「そうそう……! でも、SクラスがCクラスに負けるなんてね……」
翌日、学校に着くと、昨日の決闘の話題でもちきりだった。
「Cクラスのあいつで勝てたんなら、俺達でも勝てるんじゃね?」
そんな事言っているBやAクラスの連中も居た、同学年だけじゃなく、上級生迄。
「(いやいや……、無理でしょう? 少なくとも、クラスの上下だけで、媚びたり見下したりしている内は……)」
「零君、おはよう! 昨日は凄かったよね! 私はせいぜい、魔術の球を上手くコントロール出来るのは10個位迄だよ?」
クラスに入って、テンション高く声を掛けて来たのは、後ろの席の渡邉さんだ。
「おはよう、渡邉さん。渡邉さんでも、20個位迄、練習すれば行けると思うよ? こんな感じかな?」
僕は、渡邉さんに挨拶を返して、魔力の球を20個作り、ピエロよろしく、お手玉のようにジャグリングをして見せた。
「オーッ!」
歓声を上げたり、見入っているクラスメイトの面々……。
「さらに、こんな事も出来るよ……?」
僕は、球を一斉にコントロールして、机に突っ伏して寝ている火祭君の近くに持って行き、指を弾いた。パンっ!
パンっ!と球は音を立てて弾け、火祭君はびっくりして起き上がり、椅子から盛大に落ちた。
「こんな感じかな……?」
そう言いながら、渡邉さんに向き直った……。
「凄~い! 零君、私の師匠になってください!」
手を握って、懇願された。
「学校にいる間なら良いよ?」
僕は、渋々、了承した。
目立つつもりは無かったんだけど、こちら側に引き込むには良いかもしれない……。というか、決闘の時点で手遅れだよな……、逆に向こうから寄ってくれるだろうから好都合かも?
まあ、最終的には、渡邉さんだけでは無くなったんだけどね……。
火祭君は、どうなったかって?
「いてえな!」
火祭君は、そう言いながら起きた。
「おい、皆、何を盛り上がっているんだ?」
寝ぼけながら、そんな事を呟いた火祭君だったが、クラスメイトの連中の耳には入っていないようだった……。