閑話
~第三魔術武術学院某所~
「先日の一年生同士の決闘は、風の名家の子息の方が期待外れでしたね……、会長?」
少年が、会長と呼ばれた、黒髪を背中まで伸ばした少女に尋ねた。
「いえ……、彼が期待外れというより、相手の少年の方との実力差が有り過ぎでしたね……」
少女は笑顔で答えた。
「そうですか? 確かに、彼は、嘘か真かわかりませんが、入学試験での魔術試験で、魔防壁を破るか破らないかのギリギリの威力に調節していたらしい……と聞きました」
「あながち、嘘じゃないと思いますよ? 彼は、恐らく、‘夜鷹の星’と呼ばれる、実力者の家系である夜鷹家の中でも神童と呼ばれた、彼の少年で間違い無いでしょう」
「彼が……ですか? 入学試験では、一般的な……」
「わざと、手を抜いていたのでしょう、武術も魔術も……。彼がほんの少し本気になっただけでも、私では及ばなくなるでしょう……」
「会長がですか? とても信じられないです……」
「そうです。戦わずしても、わかります」
「次から次へと、実力者が出て来ますね……(会長方の次は俺達の天下だと思っていたのに……!)」
「ふふふ……、楽しみですね……(彼は覚えてないかもしれないですが、私の父は彼が救ってくれたに等しいです。あのままだったら、聖女様の治癒魔術でも間に合わなかったかもしれませんから……)」
少年は唇を噛み、少女は笑顔を浮かべる、という対照的な様相を呈していた。