四話
さて……、決闘の会場となる闘技場に着いた訳だけど、結構な人数の学生が集まったよな……、同級生から上級生迄。楽しみにして見てなよ、僕が、風の刃で切り刻まれるのを!
「念のため、ルールを説明する。殺傷性のある魔術や武術は使用禁止。勝敗の判定は、降参又は気絶等戦闘不能が認められた時点で決する。使用武器は、開始前に選んだ刃を抜いた武器のみ。良いかね?」
「「はい!」」
審判の説明に、僕と疾風が返事をした。
「それでは、開始!」
審判の合図と共に、疾風が弓矢の束ね撃ちを仕掛けて来る。
「はっ!」
僕は、軽く剣で打ち落とす。
「それならば、はっ!」
疾風は小太刀二刀流で連撃を仕掛けて来るが、剣で弾いたり、軽く避ける。
「くそっ! “烈風刃”!」
風の刃、二十本位が、僕の身体めがけて飛んでくる。
「“破っ”!」
僕は、詠唱と共に、風の刃に魔力をぶつけ、掻き消した。
「なっ……!」
疾風は唇を噛んだ。観客は息を呑んで静まり返った。
「凄~い!」
渡邉さんの陽気な声が、静寂の中ではっきりと聞こえた。
「さて……、お返しと行きますか? 疾風君の技で! “裂風刃”!」
僕は、風の刃を50個作り出し、文字通り風を裂く、ビュンッ!という音を立て、舜速で疾風の横や前、上すれすれを掠め(わざと)、闘技場と観客席を隔てる壁を切り裂き、僕の元に戻り、再び疾風の傍すれすれを掠め……という事を繰り返す事数回……、疾風は動くに動けない状態だった。
「試合終了!」
ここで、審判による戦闘不能の判定がなされた。
「勝者、夜鷹零!」
審判の宣言があったが、圧倒的な展開に、拍手も忘れているようだ……。
「わ~っ、凄い!」
「零君、やっぱり、私の眼は間違いじゃなかった……!」
叫んでいるのは、渡邉さん始めとした1‐Cの連中と、愛華さん……と火の坊っちゃん、誰だったっけ?
呆然としている疾風を残し、僕は闘技場を後にした。