暗黒アルテミス(前編)
あやうく更新が半年空くところでした。
「待て、密為碧葉!」
私が呼び止めると、密為碧葉は足を止め、ゆっくりとこちらへ振り向いた。私は、廃デパートのデッキに立つ奴を見上げる形になる。
「何ー?」
「貴様、今度は一体何を企んでいる!」
私は毅然とした態度で臨む。余裕そうな笑顔がいかにも嫌みったらしい。
「それを素直に教えると思うの?」
「それもそうだなぁ。なら……力ずくで聞き出してやるよ!」
“Look_up_the_moon!(ルッカップ・ザ・ムーン!)”
「月哮変身!」
“Got_it!(ガティット!)”
私は、右手首に装着していた籠手型アイテム「ウルムーンクロー」の爪パーツを起こし、側面のレバーを左にスライドさせた。手首よりやや肘側の部分にあるウインドウには雲に隠れた月を表しているらしいマークが表示されていたが、レバー操作を行うことで今度は満月を抽象化させたアイコンが表示された。それと同時に私の変身が開始した。頭上に月を象ったエネルギーが現れ、そこから光が降り注ぐ。その光を浴びた途端体の芯から力が沸き起こり、私は獣の毛皮のような強化皮膚に覆われた。最後に尻尾が生えて顔の形が変形し、変身が完了した。変身した私の姿は、さながら狼男…いや、狼女だ。
「グルルルルルル……」
私は呻き声を出しながら前屈みになり、臨戦態勢をとる。この半二足歩行のような体勢が、なんとなくしっくりくるのだ。私、動物そのものは苦手なのだが。
「おぉ……怖ーい」
「グオワァァァ!」
私は曲げていた脚を一気に伸ばし、爪を立てて接近する……が、私の先制攻撃は何者かによって阻まれた。
「那緒ちゃんナイスタイミング!」
「ブル、ブルルレア。マスターアオバ、マモル…ブルル」
なんだ、この気持ち悪いモンスターは…? まるで翼と水掻きを持った巨大なカマキリだ…。体長二メーターはある…。
「ちっ!」
カマキリモンスターを足蹴にして、バク転しながら着地する。そして見上げ、叫ぶ。
「また明縞那緒を改造したのか。飽きない奴だな!」
「やだなぁ、おしゃれだよ? お・しゃ・れ。那緒ちゃんも女の子なんだから、可愛くメイクしてあげただけだよ♪」
「……イカれた頭しやがって。……あ?」
「?」
私の視線の先……密為碧葉とカマキリモンスターの背後から、猛烈な勢いで接近してくる影。カマキリモンスターはその気配をいち早く察知し、その影を鎌で振り落とした。デッキから落とされたソレは私のいる階層に落ち、月明かりで徐々にその正体が明らかになる。
「なんだと!?」
ソレは……今の、変身状態の私と瓜二つの姿形をしていた。
「おぉー、急なゲストだねぇー。……それじゃあ今のうちに行こっか、那緒ちゃん♪」
「ブルルレア。リョーカイ」
密為碧葉はそう言うと、カマキリモンスターの背中に乗って大空へ飛んでいってしまった。
どうも、壊れ始めたラジオです。
次回は中編か、後編か。
……未定です。
それでは。