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神の涙  作者: 森乃 雅
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 〜第三章〜

                 


眩しい朝日に照らされジュリアはゆっくりと瞳を開いた。


「ん・・・・もう・・・朝・・・?」


目覚めたばかりのジュリアは呆然としながら起き上がった。

起き上がって部屋を見た瞬間、昨日の出来事が頭の中一杯に思いだした。


「はっ!」


寝起きで呆然としていた頭が一気に目覚めた。

一体何が起こっているのか、ここはどこなのか一気に考えようとした。

思考回路はショート寸前になり、まずは落ち着こうと大きく深呼吸した。

深呼吸した瞬間、胸にツキンとした痛みが走った。


慌てて胸元を見ると・・・ジュリアはゾッとした。


あんなにも鮮明で綺麗な赤だった宝玉が、

濃い赤に変わり、それはもう・・・赤というより黒に近い赤だった。


「な・・・なんなの・・・」


混乱しながらジュリアは肌蹴た胸を両手で隠した。

辺りをキョロキョロしてジュリアは衣類を探した。

20畳以上ありそうな広い部屋の壁にクローゼットを見つけた。

ジュリアは急いでベットから降りた。


「ドサッ!」


ベットから降り、立ち上がろうとしたジュリアは唖然とした。

足は自分の意思とは逆に、まったく力が入らずその場に座らされた。


「え?・・・・・立てない・・・・」


まったくと言っていいほど力の入らない足に驚いた。

驚いてるジュリアは更に驚いた。

それは、上半身には破かれながらも服が残っていたが・・・・

下半身は何も身に着けていなかった。

昨日の事を思い返し青ざめた。


「また・・・あいつがくるかもしれない・・・」


そう思い浮かんだジュリアは足を引きずりながら、這う様にクローゼットに向かった。

何とかクローゼットの前に着き、恐る恐る扉を開けた。


扉を開けると、目に飛び込んできたのは・・・


端から端までズラリと並んだ男物のスーツだった。

無言でクローゼット内を見渡し、下にある棚に入ったワイシャツを見つけ一枚取り出した。


ワイシャツを着たジュリアはワイシャツの大きさに驚いた・・・


手の長さはもちろん、ワイシャツの裾はジュリアの膝近くまであった。

その大きさで昨日の男の長身さがよく分かった。

驚きながら下に身に着ける物も探したが、

長身の男のズボンは合うはずも無く・・・・

仕方なく思ったジュリアは、また這う様にベットに戻り、

シーツに手を掛け力なく引き抜いた。

引き抜き終わったシーツを丁度いい大きさに引き裂き腰に巻きつけた。

何とか衣類を身に着け、手を掛けて立ち上がろうとした。


しかし足にはまったく力が入らず・・・


どんなに頑張っても立つ事はできなかった・・・


「どうして・・・立てないの・・・」


不思議に思いながら諦め、また這う様にドアの方に向かった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


足をずっと引きずっている為、次第に息切れをしながら這っていた。

額に汗を掻きながらドアの前に着いた。

息切れをしながらドアノブに手を掛け、扉を開けようとした。


「ガチャ、ガチャ」


ドアノブを何度も動かしてみたが、

扉は完全に反対側から鍵を掛けられ開くことはなかった。

何とか今の状況を把握したくて、今度は窓辺に向かった。


広い部屋はジュリアを苦しめた。


段々と腕の力も無くなりかけてきた頃、大きな窓へ辿り着いた。

息を荒げながら窓の外を見た時、一瞬呼吸を止めた。


視界に入った風景は・・・・


地上が遥か下に見え、行き交う人々が蟻の様に見えた。


「・・・・・・・」


ジュリアは言葉を失った。

超高層ビルの最上階の部屋にいるのを認識した時、愕然とし窓辺にもたれ掛かった。

暫くの間、呆然と青い空を眺めていた。


どれくらい呆然としていたのか・・・・・


ジュリアはドアの開く音で我に返った。


「ガチャリ」


怯えながら開くドアを見つめた。

ゆっくりと開かれたドアの向こうに昨日の男が居た。


その姿を捕らえた瞬間!


動かない足を引きずりながら恐怖の表情を浮かべ、壁際へと後ずさりしていた。

男は無言で部屋に入り、ジュリアの方へ真っ直ぐと向かってきた。

真っ直ぐと向かってくる男の姿は何故かまた、黒髪に戻っていて長髪ではなかった。

近づいて来る男に全身を震わせながらジュリアは身を縮めた。


「フッ・・・・」


鼻で笑った男は縮まったジュリアを軽々と抱き上げた。

体を震わせ怯えながら男に言った。


「離して・・・・いやぁ・・下ろして・・・・・」


手をバタつかせ暴れた。

男は無言でジュリアを落とす様にベットに下ろした。


「ドサッ」


柔らかなベットはジュリアを包み込むように受け止めた。


「ギシ・・・・」


埋もれる様に横たわったジュリアの腰元に男が座った。


そして・・・顔の横に跨ぐ様に両手を置き、顔を近づけてきた。


恐怖のあまりに涙を浮かべるジュリア。


「クックッ・・・服など着なくてもいいのに。どうせまた破かれるぞ?」


男は冷酷な瞳でジュリアを見つめながら言った。


「一体・・・なんなの・・?貴方は・・・誰なの・・?」


瞳一杯に涙を浮かべながらジュリアが言った。


「お前に教える必要はない。お前は単なる器・・・・そして俺の為の道具でしかない」


そう言いながら男は細長い指でジュリアの頬に触れた。

触れられた男の手は氷の様に冷たかった。

ビクッと冷たさに反応した体はより一層硬直した。


「どう・・・いう・・ことなのよ・・・」


涙を流しながらジュリアは精一杯の勇気を振絞って言った。


「いずれ理解できるさ・・・クックック」


そう一言言った男はニヤリと笑みを浮かべ、冷たい手でジュリアの顔を押さえたまま

流れ落ちる涙を拭う様に舐めリ上げた。


ジュリアは完全なる恐怖の前に成す術もなく瞳を強く閉じた。


男はそれ以上何もせず部屋から無言で去って行った。


ジュリアはそのまま泣き崩れた・・・・


「こんなの現実じゃないわ!夢なら早く覚めて!!誰か助けて・・・誰か助けて・・・・・」


泣きながら繰り返し心の中で叫んだ。


何時間泣き続けただろう・・・・・


気がつくと窓の外は夕日に空を赤く染めていた。

何時間も泣き続け疲れ果て、いつしか眠っていた。


急に胸元に寒さを感じて目覚めたジュリアは絶望した。


ジュリアが目にした光景は既に肌蹴た胸・・・・・・


押し付けるように押さえられた両腕・・・・・・


そして・・・・・


銀髪に変貌した冷酷の瞳を浮かべた男の顔だった。

ジュリアはもう抵抗する力も気力も無くした。


「やけに大人しいな・・・」


男は少し面白くなさそうに言った。

ジュリアは呆然と高い天井を見つめていた。

銀髪のサラサラとした長い髪が胸に掛かるのを感じた。

それと同時にまた、聞いたこともない言葉を呟く声を耳にした。


男の声を耳にしたと同時に、天井一杯に光り照らす赤黒い光を目にした。


「ドクン!」


ジュリアの胸が大きく揺れ動き、前回よりも激しい激痛が全身を震撼した。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」


ジュリアはおぞましいくらいの叫び声をあげた。

意識など絶対に保てないくらいの痛みが容赦なく襲いかかった。


ズルリと胸に埋まる感覚だけを鮮明に覚え、ジュリアは意識を失った・・・


長い夜が明け、朝日が昇り始めた頃・・・

高層ビルに一人の人影が入って行った。

高速エレベーターの前に立ちスイッチを押す。


「カチッ」


エレベーターはすぐにロビーに到着した。

ゆっくりと開いた扉の向こうに乗り込む。

長い指が最上階へのボタンを押した。

高速エレベーターはあっという間に最上階へと着いた。

エレベーターの扉が開くと同時に、スラっとした長い足が飛び出した。


「コツ コツ コツ」


足音が扉の前に近づく。

ドアノブに手を掛けると、鍵が閉まっているはずの扉を


「カチャリ」


と、何の問題もなく開けた。

扉を開け部屋の中に静かに入った人物は、そのままジュリアが眠るベットへ向かった。

ベットには死んだように眠るジュリアが居た。

ジュリアを見た人物がポツリと呟いた。


「・・・・すまない・・・・」


そう呟くと薄手のベットカバーをジュリアに掛け、

壊れ物に触れる様に優しく、そっと抱き上げた。


そしてジュリアを連れ、そのまま部屋を去って行った・・・・



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