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神の涙  作者: 森乃 雅
2/11

 〜第一章〜 




その日は突然やって来た・・・・・


仕事を終え、とある道を暗闇の中、足早に帰宅している私の目の前に仮装大会?

と思わせるような中世風な服を着た

細身で背の高い一人の男が立ちはだかっていた。

夜風は異様なまでに生暖かく、不気味さが漂っていた。

あたりには人の気配がまったくなかった。


「まずいな・・・・」


と、心で呟きながら足早に去ろうとした。


この道は、昔からいわくつきの道だった・・・


その昔、一人の若い女性が心臓をえぐられて死んでいたという事件があったそうだ。

その傷口は刃物でやられた傷口ではなく、

まるで獣の爪によってえぐり取られているようだったらしい。

最初は動物の仕業かと捜査されていたが、街中での殺人事件だったので

動物の仕業ではないことは明確だった。

動物の仕業なら、必ず足跡や体毛が残されている。

そのような証拠など一切検出されなかった。

この事件は、猟奇殺人事件として捜査された。


だが、犯人は全然見つからず・・・・・


証拠も目撃情報もまったくなかった。

警察が全力で捜査する中、犯人は警察をあざ笑うかのように犯行を繰り返した。

それから一ヶ月の間、同じ様な手口で数十人の女性が命を落としたらしい・・・・・


一ヶ月後、頻繁に起こっていた殺人事件は急に、ぱったりと起こらなくなったらしい。

現場には若い女性の死体のみで、物的証拠が見つからなかった。

結局犯人は、時効の瞬間まで見つからなかった・・・・・


本来なら、この道は普段あまり通ることがないのだが、

残業で遅くなった私は、昨日借りてきたDVDを早く見たいが為に

近道になる、このいわくつきの道を通って家路を急いでいた。


「うわ・・・危ないのがいるよ・・・」


と、見てみぬ振りをしながら

男を横目に、生い茂った木々が街灯を隠し

薄明かりの細めの道を通り過ぎようとした時・・・・・


一瞬の出来事だった・・・・


何か胸に、重たさにも似た様な衝撃を感じた私は一瞬にして地面に倒れていた・・・・・


「あれ?何が起こったの?」


冷たい地面の感触を感じながら、木々の隙間から見える星空を眺めていた。


「私・・・何やってるんだろう?」


たくさんの疑問を抱きながら起き上がろうとした時・・・・・


「え?・・・・・」


まったく体が動かなくなっていた。


「なんで起き上がれないの?」


疑問を抱きながらも冷静になって考えた。


「そういえば・・・さっき・・変な男がいたよね・・・」


「その男の横を通った時だ・・・・・」


徐々にさっきの瞬間を思い出してきた私は


自分が死んでいることを他人事のように気がついた・・・・・


「え?・・・・私・・・もしかして・・・」


あまりの現実感のない出来事に漠然とした気持ちだった。


胸の辺りにポッカリと開いた感触が生々しく感じられた。


「う・・・そ・・・・」


状況を理解するまで時間が止まったように感じたが、

実際は死にに至るまで一瞬の出来事だった。

私が死を認識した時、薄れ行く意識の中で人影が自分を覆うのを見た。


その光景を最後に・・・・


私は眠る様に目を閉じ、息を引き取った・・・・



「ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!」


いつもの目覚まし時計の音で、私は胸に重さを感じながら目覚めた。


「カチャ」


目覚まし時計を止めベットから起き上がった。

そこは、いつもの私の部屋だった。


「あれ?・・・・・夢?・・・・」


寝起きで頭が呆然としながらカーテン越しに光が漏れるのを見て、朝だと認識した。

ベットのすぐ横にあるガラステーブルに手を伸ばし、タバコとライターを手に取った。

タバコを一本口に銜え、愛用のライターで火を着けた。

いつもの様にタバコを吸った瞬間、


「まずっ!」


思わず吸うのを止めタバコの火を消した。


「え?・・・いつものタバコだよね・・・?」


タバコの銘柄を確認したが、いつも吸っているタバコだった。


「何でこんなにまずく感じるんだろう?・・・・」


少し頭が冴えてきたのでコーヒーを入れにキッチンに向った。


「ん?やっぱ胸が重いな・・・」


「胸に手でも置いて寝てたかな?」


そんな事を考えながらおとしたコーヒーをティーカップに注ぎ込んだ。

私は、コーヒーを飲みながら胸に手を当てた。

当てた感じでは何一つ変わった様子はなかった。


「あれ?コーヒーもまずく・・・感じる・・・」


「変だな・・・・舌の病気かな?・・・」


そんなことを冗談紛れに思いながら目覚まし時計をふと見た。


「あっ!やばい!」


出勤時間が近づいてきてるのに気が付き、慌ててシャワーを浴びに行った。

いつも通りパジャマを脱ぎ浴室に入った。

シャワーを出しながら鏡を見た私は、鏡に映った自分を二度見した。


「な・・・何これ・・・」


鏡に映った私の胸に異変が起きていた。


「ま・・・さ・・・か・・・」


鏡に映った自分の胸に手を当た。

湯気で曇りはじめた鏡に手を当てたままゆっくりと座り込んで行った。


鏡に映った私の胸には・・・・・


薄っすらと傷痕の上に・・・胸部全体に天使の翼が羽を広げ・・・


まるで傷を塞ぐ様に・・・・胸を中心に羽を広げている様な模様が描かれていた・・・


その翼は血に似た、鮮明な赤色で描かれていた・・・・


「な・・何なのこれ・・・!?」


曇ってきた鏡を、手でこすりながら自分の姿をもう一度鏡に映した。

鏡が曇る前に、その痕をそっと触ってみた。

触れた瞬間、私は悲鳴を上げた!


「きゃあぁぁぁぁぁ!」


浴室に悲鳴が響き渡った。

それと同時に自分の胸に描かれた翼が、

胸の中央に集まるようにゆっくりと動き、羽を閉じた。


次の瞬間、真っ赤な光を放ちその翼は・・・・


真っ赤な宝玉へと形を変えた。


その宝玉は5センチくらいの大きさで楕円形の形をしていた。

それと同時に薄っすらと残っていた傷痕が跡形も無く消えた。


私は訳が解らなくなり・・・・そのまま気を失った・・・・ 


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