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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

契約

作者: narrow

短編をひとつ。


こんな感じの書き手です。

書くところがなくなったので引っ越してきました。

2006年の作品なので、今はもう少し成長・・・してるといいな。

努力はしています。


この話はこれのみで成立していますが、ここに出てくる悪魔は長編「使い魔日記」の悪魔と同一です。

こちらを気に入っていただけたようなら、お試しください。

完結まではかなり長いですが、過去作品のため一気に更新しています。

(通常は1話に1ヶ月かそれ以上かかってしまう遅筆ぶりです)

では、楽しんで頂けますように・・・。

 深夜の公園にはいくつかの灯りがあるたけで、人の姿はない。

 時折、鳥の鳴き声がする他に聞こえるのは、公衆便所から聞こえる、湿った音だけだ。

 ぐちゃ・・・ ぐちゃっ めきっ ぐちゃっ

 女子便所の個室、一番奥。

 座ると言うより、便器にはまりこんでしまっている少女の体は、音にあわせてガクガクゆれた。

 音をたてているのは、肉が裂け、血が噴き出し、骨も砕け、元の形を失い、顔のパーツなどは判別不可能の、赤いぐちゃぐちゃした塊。

 最早それは顔とは言えず、頭の形も変形してしまっていて、死んでいることは一目でわかる。

 狂ったようにそこへ振り下ろされるハンマー。

 個室の壁におびただしい血が飛散し、ハンマーを握る男の顔にも点々と赤くはねていた。

 男の目は見開き、この世ならぬものをとらえているかのようなただならぬ色を宿しており、その唇はしきりになにかを小さく唱えていた。

 「悪魔様、悪魔様・・・・この女を捧げます・・・・悪魔様、悪魔様・・・」


 夜が明ける。


 男はとうにそこから姿を消しており、小さな子供の手をひいた母親が、何も知らずそのトイレに駆け込む。

 悲鳴が上がった。


 彼の部屋はもうずっと太陽の光をあびていない。

 目立たない会社員の彼が、寝るためだけに戻る部屋。

 暗い部屋のなか、テレビだけがぼうっと光っていた。

 ニュースを流している。

 ”今朝早く××区の公園のトイレから、何者かによって殺されたとみられる少女の遺体が発見され・・・”

 彼は、笑った。

 「あと一人殺せば・・・・ふふ、ふふふふ」

 一人目を殺した夜、悪魔様が約束してくださったのだ。


 目隠しは、わざとしなかった。

 抵抗できないよう、手足だけは縛って、クチもガムテープでふさいだ。

 それから腹を割いてやった。

 見ず知らずの女。

 ちょっとキレイな顔と、人気の無い道を一人で歩いていたことがその死の理由になった。

 クチをふさいでいたのに悲鳴はうるさく、自分の内臓を見てしまったせいか、もう殴ってもさわぐのをやめなかった。

 殴りすぎて、綺麗だった顔はまだらに変色し、おかしな形にもりあがったりへこんだりして、別人のように変わっていた。

 丁寧に腹の中身をよりわけているうちに、ショックのせいか出血のためか勝手に死んだ。

 血で濡れた服を着替え、人目につかない道を選んで歩いていた時、あの方は現れた。

 「おい」

 誰もいないはずの暗い道で、後ろから声をかけられ、驚いて振り返った。

 声をあげそうになった。

 2mはありそうな大男が真後ろに立っていた。

 夜の景色に溶け込む黒い服で身を包み、長い黒髪、青白い肌、死神のイメージが頭をよぎる。

 「おまえ、あと何人殺すんだ?」

 そんなの考えていなかった。つかまるまで何人でも殺す気だった。

 異様な気配・・・こいつは、人間じゃない?

 そうだ、見られたはずがないのだ。

 気温とは関係のない汗がじわじわと全身ににじむ。

 「そう、人なんかじゃない。俺は、悪魔だ。」

 俺の思考に答えるように男が言った。

 考えを読まれた。

 悪魔!

 「取引をしないか?」

 全身にトリハダがたつ。

 冗談じゃない、悪魔と取引をすると、確か魂をとられるんだ。

 殺すのは楽しいが、俺が死ぬのはゴメンだ。

 「いいです」

 言おうとしたが、声にならない。

俺はただ殺しが楽しいだけで、悪魔なんか呼ぶ気は無かったし、殺し続ける以外の願いも思いつかなかった。

 「そうか、殺し続けるのがおまえの願いか。」

 赤黒い唇の両端をつりあげ、悪魔が笑った。

 しまった、こいつは俺の考えを読めるのか!

 もうだめだ、魂をとられる!

 「・・・おまえの魂なんかいらん。

 女だ。キレイな顔の女。そういうのを殺すのが好きなんだろ?

 いい趣味じゃないか。あと4人、殺して俺にささげろ。

 今までと同じことだ。殺す瞬間、俺のことを考えるだけでいい。

 それでその女は俺のものだ。」

 そうしなければ、多分殺されるのだという気がした。

 開いているか閉じているかわかりづらい、悪魔の細い目。

 そこから、ほとんど色のない瞳が俺をとらえていた。

 俺はなんとか、うんうんとうなずいた。逆らえなかった。

 逆らうつもりもなかった。女を殺し続けるだけでいいのだ。

 しかも、あと4人殺せばもうそれ以降はつかまらない。

 悪魔の保障つきだ!

 「契約成立だ。4人殺す前につかまるなよ・・・」

 突然強い風が吹いた。

 悪魔の背後に、端から端までで5mくらいにはなりそうな巨大な黒い翼が見えた。

 「うぁ」

 俺は思わず声を出した。

 瞬きの一瞬で、悪魔は、いや、俺の願いをかなえてくださる悪魔様は消えていた。

 それから、池に沈めて一人

 首を絞めてバラバラにして一人、

 そして昨日、ハンマーで頭をつぶして一人。

 あと、一人。


 その中古ゲームショップには、働かない店員がいた。

 実際には少しは仕事もするのだが、だいたいカウンターの中にあるテスト用のゲーム機で本人が遊んでしまっている。

 そのため、組んで仕事をするもう一人の店員が必ず忙しい思いをする。

 不思議とそれでも怒られもせず、むしろ人からは好かれるその店員は、見た目が良かった。

 美形!というほどでもないが、白人男性にみえるその外見はまあ整っているほうだった。

 さらに嫌われない原因として、彼は人懐こく、なかなか親切なのである。

 男からも女からも客からも店員からも、だいたい好かれているので、ちょっとくらいのサボりは多めに見てもらえるのだ。

 彼はそれに甘え放題甘えている。

 その店へ、黒い長い髪をして、青白い顔に黒い服の、ゲームなんかしそうにない大男がやってきた。

 自らを、悪魔と名乗った男。

 自動ドアがあいた瞬間、ゲームに没頭していたサボり魔が顔をあげて迷惑そうな声をだした。

 「おい!そんなスゴいのつれて入らないでくれ!」

 男は気にせず入っていく。

 店員と彼には、その「スゴいの」が見える。

 それは、多くの人には見えない、霊などと呼ばれるもの。

 彼が近づくにつれ、店員の表情が険しくなる。

 彼がカウンターのところまで来たときには、店員は蒼い顔で口元を覆っていた。

 彼の周りにただようその霊たちは、すさまじい姿をしていた。

 腹を裂かれ、内臓をはみ出させた女、ふくれあがった水死体、体の各部が切り離された女、頭がぐしゃぐしゃにツブれた少女。

 正視に堪えないものばかりをまとわりつかせ、彼は笑っていた。

 「よぅ、”スズキ”。どうだ、美しいだろう?

 これらはな、人間の願望が生み出した造形だ。

 これが人間の本質だ。

 お前に教えてやろうと思ってな、人を信じることの愚かさを。」

 人ではない、悪魔と名乗った彼が話しかける店員もまた、人ではない。

 人外であるがゆえの不思議な魅力の持ち主なのだ。

 彼らはお互いを知っていた。

 対立するものとして。

 スズキと呼ばれる男は、人を信じ愛する者のようで、人を暗い道へ導く悪魔とは正反対の存在だった。

 悪魔はスキあらば彼をも、自分と同じ、光の届かない場所へひきずりこもうとしていた。

 顔をそむけたまま、店員は答えた。

 「じゃあ、契約の意味はなんだ?

 信じないならば契約なんて意味がないじゃないか。

 それは契約のもたらしたモノだろう?」

 それ、とは彼にまとわりつく凄惨な霊たちだ。

 彼の契約を見てきたかのような店員の言葉に、彼もまた答えた。

 「裏切るためさ」


 普段から利用者の少ない駐車場は、深夜ともなると誰も近寄らない。

 最後の儀式には絶好だ。

 これさえ済めば、もう俺を止められるものはいない。

 俺がそのへんの一般人とは違うってことが証明できるんだ。

 彼は、自分が他の人間とは違うと感じていた。

 人に誇れるものもなく、目立たなく生きてきた彼のどこがどう他者と違うのか、彼自身にもわからない。

 いや、違いなどない。

 彼の人との違いを強いて言うならば、人が苦しむさまを見て、快感を感じることくらいだ。

 それとて、「人の不幸は蜜の味」などというコトバがあるくらいだから、度合いが違うにせよ、特異とまでは言えない。

 つまり、勘違いした、ただの一般人なのだ。

 だが、彼は自分は人とは違うと信じ、その自分に気づかない人々を憎み、人殺しに身を落とした。

 悪魔との取引さえ完成すれば、次々と殺人を犯して、自分を評価してくれなかった世の中への復讐を存分にはたせるのだ。

 ナンパのふりをして誘い、泥酔状態にして眠らせた女を駐車場のフェンスに手錠でつないだ。

 車につんであった灯油をふりかける。

 最後の儀式は炎で盛大に彩るのだ。

 体にかかる灯油の感触とニオイで女が目を覚ました。

 「うん・・・?何、これ」

 「悪魔様、この女をささげます・・・」

 炎が上がった。

 獣のようなすさまじい悲鳴が上がった。

 「ぎゃぁぁぁあああああああ!」

 口をふさいでおくのを忘れていた。

 彼は悲鳴のあまりの大きさに、驚き、思わず逃げ出した。

 悲鳴は遠ざかるにつれ少しずつ小さくなり、やがて聞こえなくなった。

 距離のためか、女が死んだか。

 やがて彼は走るのに疲れ、歩き始めた。

 車を取りに戻らなければならない。

 が、すぐに引き返す決心がつかず、歩き続けた。

 下を向いて歩く彼の視界に、なにかの影が見えた。

 視線を上げると、あの悪魔がゆらりと宙に浮いていた。

 彼は、驚いて見上げたまま固まった。

 「よぅ。全部で5人、殺したな。

 これだけのエネルギーがあれば、契約の履行くらいには足りる。」

 彼は、悪魔との契約を思い出して、不安が消えるのを感じた。

 同時に心が期待で満たされる。恐れは、なかった。

 「じゃ、そのカラダ、捨ててもらおうか」

 にやりと笑った悪魔がそう言った途端、気が遠くなる感じがした。

 が、気を失うことはなく、代わりになにか重いものを落としたような音がした。

 どさり。

 カラダが、軽い。

 いや、軽いというより、カラダは無かった。

 足元に転がっている。

 悪魔は、驚く彼に事も無げに説明した。

 「大丈夫、死因は心臓麻痺だ。

 疑われることは無い。これで、もう捕まらないぞ。」

 そんなことが聞きたいんじゃない!

 言おうとして悪魔のほうを見た彼は、さらに愕然とした。

 魂だけになった彼には、もう悪魔の周りに何がいるか見えるのだ。

 「それは・・・・そいつらは・・・!」

 殺されたときのままのおぞましい姿の彼女たちは、悪魔の周りを何かさがすようにゆらゆらと漂っている。

 腹から内臓をまきちらしながら、ぶよぶよに膨らんだカラダをゆらしながら、バラバラに切断された体をパーツごとにそれぞれ動かしながら、ぐちゃぐちゃになった頭をさらしながら。

 その彼女たちが、いっせいにこちらをむいた。

 ゆっくりと近づいてくる彼女達から逃げようとして、彼は気づいた。

 背中が熱い、まさか。

 振り返ろうとすると、肩越しにさっき火をつけたあの女が、炎に包まれながらこちらを覗き込んでいる。

 絶叫の形に大きく開いた口。

 まぶたは焼け落ちてしまったのか、異様に大きく目を見開いている。

 焼け焦げた肌が炎の間に黒く見えた。

 「あ゛あ゛あ゛あぁあアアァァァァアアあああーっ!」

 叫んだのは、彼だったのか、彼女たちだったのか。

 もう逃げられなくなった彼に、彼女たちが群がる・・・。

 「そんな!こんなっこんなハズじゃ!うわっうわああああ!」

 彼の体に女たちの手が掛かる。

 「こんなハズじゃない、か?

 くくく・・・俺の本当の契約相手は、お前が最初に殺した女だよ。

 死霊だ。自分を殺した相手に復讐がしたいんだとさ。」

 彼がむさぼられるのをもっとよく見ようとするように、悪魔はふわりと少し上昇する。見下ろす。

 殺された女たちが、それぞれに彼を痛めつけ始めていた。

 魂だけのはずの彼が、生きている体のように痛みを感じ、血をふきだす。

 抜けたばかりの魂が、体の感覚を忘れていないためだろうか。

 「ぎゃっ・・・ああぁ!あ゛がぁああああああああ!ごあぁあああ!」

 肉をひきむしる音。

 とぎれることのない悲鳴。

 意味のわからない叫び。

 悪魔は愉快そうに笑いながら見ている。

 曲がっちゃいけない方へ・・・あぁ、曲げちゃった。

 ぼぎり。

 背骨が折れ、肉が裂けたところから彼の一部がとびちる。

 人ならとうに死んでいるほどの損傷を負っても、彼はラクにはなれない。

 肉体を捨ててしまった彼は、その存在が成立しなくなるほど細切れにされるまで意識を持ち続け、苦しみ、さいなまれる。

 気絶すら許されずに。

 その様は悪魔にとってこの上なく愉快で、また、発散される恐怖や絶望の感情は悪魔の力として吸収される。

 人の心が、悪魔を作り、生かし、大きくするのだ。

 「ふふ・・・ははは、あっはははははははは!」

 思ったとおりに事が運び、力を得たことに満足し、感情の高ぶるまま悪魔は高らかに笑った。

 ”はじめから、こうするつもりだったなら・・・なぜ契約を・・・・”

 微かに残る男の思考が悪魔に届く。

 もう彼はほとんどバラバラになり、あと少しで何もなくなる。

抜け殻のカラダを残して。

 「なぜ契約を、だと?」

 笑っている悪魔の色のないような瞳が紫色にぼんやり光った。

 「裏切るためさ!」

 悪魔がまた、キモチよさそうに高笑いをするなかで、彼は完全に消滅した。

 女たちがおとなしくなり、やがてゆっくり悪魔の方へ向き直る。

 その姿は、生前のキズ一つない体に戻っており、表情こそないが、みな穏やかな雰囲気に変わっていた。

 それぞれ、悪魔のもとへ歩み寄っていく。

 悪魔は、自分のもとへ戻ってきた彼女たちを、一人ずつ抱き寄せ、彼女たちは悪魔の腕の中、安らかな表情で消えていく。

 まるでそこが、自分の帰る場所であるかのように、このうえなく居心地のいい場所であるかのように。

 彼女たちもまた、悪魔の一部となるのだ。

やがて全員をとりこむと悪魔は

 「ごちそうさま。」

 やったこととは不釣合いな優しい声音を響かせた。

 もし誰かが聞いていたなら、食事の終わりに使うはずのそのセリフが、死者の安息を願う祈りのように聞こえただろう。

 そして悪魔は、次に行く場所がきまっているかのように、さらに闇の濃いどこかへ去っていった。

 あとには、殺人者のみじめな亡骸。

 冷たく、冷たく・・・・。

裏切ったペナルティが発生しないのは、この男との契約が二重契約扱いで無効な(最初の契約履行が優先される)ため。

使い魔を先に読んでると疑問に思われるケースもあるかもしれないので。


ちなみに、この作品については短いので少々手直ししてみました。

が、先日とあるサイトを覗いたところ、私の文章はまだまだ未完成すぎる日本語崩壊状態らしいです・・・。



ただ、書き出したときにも思ってたことですが、


書きながら巧くなっていこう


と思ってます。


なので、疲れない程度に向上心持って頑張りますです;



さて、楽しんで頂けましたでしょうか?

よかったら他作品、これから書く作品もよろしくしてやってください^^

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