その34 「天才」
「―――輪廻家現当主、輪廻華蓮。さあ勝負しよ」
切っ先をこちらに向け、高らかに宣言した輪廻華蓮を見て堪らず喉を震わせる。
「くっくっく、あっはっはっはっはっは」
たかが、こんな辺境の世界の猿より僅かばかりの知能を獲得しただけの生物が何処まで虚仮にすれば気が済むのだろう。
そんな事を考えながらも第三神、ミュールヒルの機嫌は一周回って良かった。
何時の世だって決して勝てぬ相手と解っていながらも闘いを挑む者はいる。
天に唾を吐き、届かぬと知りながら月に向かって矢を放つ。
そんな奴らを大まかに二種類に分ける事が出来る。
一つは愚鈍な愚か者。
もう一つは聡明な大馬鹿者。
前者は無駄だと知りつつもその選択を誇って散る者。
後者は勝てるはずが無いと知りながら負けるはずが無いと矛盾した妄執を確信している者。
その分類で行くのであれば、目の前の輪廻華蓮は明らかに後者だ。
常人がその場にいるだけで発狂する量の軽く数桁以上の神気を浴びされ続けているのに、眉一つ頓着する様子は無い。
まるでショッピングに行く様な気楽さでミュールヒルと対峙している。
「危機感、焦燥、痛覚、恐怖。どれもこれも欠けてるなぁ、お前。――――――だがまあ、そんな事如何でもええわ。よううちにそこまで啖呵を切りよった。上等や、受けてたったる」
心具を持ち上げ、肩の上に乗せるとミュールヒルは本格的に戦う態勢に入る。
「馬鹿な事を言うな、お前の相手は俺達だろ」
己の存在を改めて認識させる様に、架音は声を荒げ、ミュールヒルの間合いに足を踏み込む。
満身創痍とまではいかないが、それでもかなりのダメージを負っているのに時間と共に気配が奮い立っていく。
「んーん。前回は私達が狙われていたからカー君とパフェちゃんが命懸けで護ってくれた。だけど今回はカー君達が狙われているのだから私達が護る番。少しはお姉ちゃんを信用して頼ってよ」
そんな一触即発の雰囲気をかき乱すかのように間延びした声で華蓮は緩い笑みを架音達に向ける。
「そんな事できる訳が…」
そう言って架音は華蓮を止めようとしたところで、ドンッと言う炸裂音が辺りに響く。
「―――カノンとパフェ。お前らが闘いに参加するなら第一ないし第二契約を使う。参加しないのであれば契約すら使わない。好きにしたらええ、うちはどっちでも構わん」
辺りの瓦礫を残らず更地にし、ミュールヒルは高低の無い声で静かに言葉を吐き出す。
まるで噴火前の火山の様に、妙な静けさが辺りを包む。
「だから結論が出るまでそこでじっと考えてろやっ!! いくで、輪廻華蓮。第三神、ミュールヒル=ドレイクラン=フレイズヴァールの名にかけてその挑戦受けたる」
言いきるや否や、開始の合図など無くミュールヒルは一足飛びに華蓮に接近する。
その姿は辺りの地形を削岩するかのように地を巻き上げ進む暴風の様。
「一撃で死ぬようなつまらんオチを晒してくれるなよなぁ!!」
巨鎚を振り上げ、嬉々とした笑顔で何の躊躇いもなくミュールヒルは得物を振るう。
「くっそっ!!!」
その一寸手前で架音は飛び出す。
いや、正確には飛び出そうとした。
「なっ……にっ……?!」
霊能力者だろうと所詮は人間。
ミュールヒルの神鎚は直撃すれば粉微塵すら許さぬ最早消滅と言っても過言でないほどのダメージを生む。
かと言って寸で避けたところで余波に巻き込まれ、千々に裂け飛ぶだろう。
だが、人間の限界速を遥かに凌駕しているミュールヒルの攻撃を大きく躱すなど、飛んできた銃弾を見てから避けるより厳しく、不可能に限りなく近い芸当だ。
一撃で死ぬような、とのたまう癖にミュールヒル本人は華蓮に対する第二撃の存在を一切想定していない。
何故ならこれは架音達が防ぐ以外にどうしようもない攻撃だから。
だと言うのに、架音の足は地面に縫い付けられ、一歩も動かなかった。
しかもその足を縫い止めているのは味方であるパフェである。
架音の瞳が驚愕で見開かれていく。
「はっ、どう言うつもりか知らんが、後悔すんなやパフェ」
ちらりとパフェの様子を確認すると、ミュールヒルはそのまま振り切った。
ごう、と暴風が方向を変え、砂塵を巻き起こし二人の姿を覆う。
「そ……ん……な………」
顔面を蒼白にしながら架音は膝から崩れる。
「大丈夫じゃ主様。己のお義姉様を信じろ、アレは紛れもなく主様と同じ血を引いて居る」
力無く架音が土煙に目を向けると、フワッと人間大の何かが飛び出す。
そしてぼてっと効果音が付きそうなほど緩く地面に接触するとごろごろと転がった。
「そそ、パフェちゃんの言う通りお姉えちゃんに任せなさい」
体についた砂埃払いながらしっかりと立ち上がる。
多少体は切り傷を負ってはいるが、ぴんぴんした様子で華蓮は胸を張る。
「くっく、参ったなぁ。全然手ぇ抜いた覚えないねんけどなぁ。こうもあっさり生還されるとどうやったん? って聞きたくなるわ」
内容とは裏腹に心の底から楽しそうに、ミュールヒルは華蓮に喋りかける。
「ん~? さっきの? あぁ、魔術を使ってちょ~っと体を軽くして、風で体を保護して後はあなたの攻撃に合わせて上手い事弾かれただけだよ」
と、何でも無い様に華蓮は返答する。
それを聞いて二柱の終焉神は顔を歪める。
言うだけなら何とでも言える。
パフェも全快の状態ならば難なく全く同じ動作をする事が出来るだろう。
だがそれは終焉神であるパフェのスペックだから出来る芸当だ。
人間に毛の生えた程度の存在でしかない者が出来るものではないのだ。
例えるなら紙飛行機を暴風の中に飛ばしたら偶然高く舞い上がり、奇跡的に暴風を逸れて飛んでいく様なものだ。
そんな神技めいた所業を大した事では無いと、言葉には出さずに態度で示しているのだ。
「面白い、ほんま上等や。運命か、奇跡か、どちらの神に祝福されてるのか知らんけど認めたる。お前は闘うに値する敵やと」
「あはは、運命とか、奇跡とかそんな大げさだよ。私が愛し愛されているのは私と――」
そこでいったん区切り華蓮は架音に視線を向け、微笑む。
「――そして家族だけだよ」
そう言いきった華蓮に再び暴風の様な神気を纏い、神鎚が振るわれる。
すると再び先程の出来事を別の角度で再現するようにフワッと華蓮が浮き上がり、振るわれる神鎚の軌道から自ら弾かれる様に天羽でミュールヒルを斬りつける。
何とも言えぬ気持ち悪い不協和音と共にミュールヒルの薄皮一枚にも満たない領域が斬り裂かれる。
「ッ?!」
ミュールヒルに浮かぶのは驚嘆、そして更なる華蓮の行動への期待と好奇心。
薄皮一枚裂かれたところでミュールヒルにとっては意識の片隅にすら残らぬ瑣事。
彼女が一瞬素の儘の表情をし、すぐさま口元に笑みを浮かべたのはそれよりややずれた事柄の事だ。
先程の回避すら神技と言っても過言ではなかった所業だと言うのに、いとも容易く反撃も付け加えて見せたのだ。
「なら―――ッ!!」
振り切った神鎚をくるりと反転させ、二撃、三撃と次々攻撃を仕掛け始める。
そしてその度に紙吹雪の様にひらりひらりと舞、華蓮は避け続ける。
その動作は架音達から見ても決して速い動きと言う訳ではないのに、柳に風、暖簾に腕押しと言った具合に攻撃が一切当らない。
暴風の吹き荒れる音と剣がミュールヒルの肌とぶつかり合う不協和音が辺りに響き渡る。
「―――良い感じや。もっとスピード上げんでぇ」
吹き荒れる暴風を更に叩き潰すかのようにミュールヒルの振るう速度が増していく。
「わっわっ!!!」
巨大なミキサーの上に放り込まれたに等しいのに華蓮は可愛らしい悲鳴を上げ、回避し続ける。
とは言え流石に完全に回避し続けるのは難しいのか、今までの掠り傷とは違う明らかな裂傷が所々に刻まれ始める。
「くっそ………ッ!!」
パフェが押さえて無ければ今にも飛び出さんばかりの勢いで架音は戦況を睨みつける。
本当であれば今あそこで戦っているのは自分だと言うのに、今回もここで見ている事しか出来ない。
何と無様、何と無力。
形振り構わなければいけないと言うのに、形振り構えば双子の片割れが死んでしまうと言う矛盾した状況。
行き場のない感情が永遠と出口の開かない炉を回し続ける。
「今飛び出しと所でお義姉さまの邪魔になるだけじゃ。本当の意味で助けたいのであればその感情の発露を全て右腕に込めるが良い。―――――何、出番はすぐ来る」
そんな架音を涼しげな表情で押し止めているパフェは随分と楽観していた。
幾ら攻撃しようとミュールヒルの攻撃が華蓮に直撃する事は無いと、何処かそんな面持ちだ。
それと同時にミュールヒルが今まで気付かなかったほんの僅かな違和感に気付き始める。
「―――ふっ!!」
一瞬フェイクを入れ、攻撃の方向を90度転換し、攻撃する。
また不快な不協和音と共にひらりと回避される。
その次も更にその次も。
最早数十は軽く打ちこんでいると言うのに一向に終りが見えない
―――おかしい、この輪廻華蓮と言う女、何時まで経っても詰まない。
どれだけフェイントを入れようとも、どれだけ連撃を重ねようとも、キッチリと生存ルートを選択するのだ。
未来視? 幸運?
その両方あっても現状は有り得ない。
この現状は攻撃を先読みでき、神がかり的な運の持ち主であっても納得できはしない。
最早運が良かったで済ませられるレベルじゃないのだ。
先読みが出来るのであれば2つ3つは躱せるかもしれない。
それすらも降りしきる雨を避けるに等しい極技を必要とする。
しかし、そこまでしても出来るのは精々その程度が限界なのだ。
如何に攻撃が先読みできようとも圧倒的な身体能力の差は埋める事が出来ず、徐々に体勢を崩す羽目となる。
そうなれば詰将棋の様に不可避の状態に追い込まれ詰まされるのが当然の帰結だ。
そこに運が混じろうが数撃寿命が延びるだけにすぎない。
だがこの女は違う。
一度攻撃される毎にリセットされているかの如く一撃一撃の状況が悪くならないのだ。
だからこの状況はミュールヒルにとって完全に理解の範疇外であった。
適当に神鎚を振り回すだけで方が付くはずの勝負が無限に引き延ばされていく。
フェイントは全て看過される。
相手の行動を見てから選べるはずの後出しじゃんけんの様な三択で迫れば向こうのフェイントで先だしを釣らされる。
一体何が起きているのか?
一切手を緩めずミュールヒルは静かに状況を分析する。
華連が躱し続けているのはどう言う事か?
読心や先読みが出来たところで、このような立ち回りは不可能だ。
先も述べた様に絶対的身体能力の差があるからだ。
ならば運かと言われればそれもまた違う。
であれば何が彼女を生かしているか、と言う事になる。
己の攻撃速度、攻撃パターン、それに対する対処の仕方。
先程までのデータ全てを瞬時に再生し、違和感の正体を探る。
「………………ペース、リズム……か」
やがて得心がいったかのようにミュールヒルは呟く。
何の事は無い、彼女を生かしていたのは他でもない己の体だったのだ。
ペース、リズム、そう言った感覚的なモノを華蓮は少しずつずらし、狂わせ、支配しているのだ。
結果ミュールヒルは意図せぬ闘い方を、華蓮は自分の意図するままの闘いを演出した。
圧倒的有利な条件のミュールヒル相手に華蓮はただ一つ、神がかりめいた戦闘センスで立ち回っているのだ。
動作一つ一つがミュールヒルの感覚を惑わす、何一つ無駄が無い立ち回り。
一つ間違えば脆く崩れ消え逝くと言うのに、その姿は演舞の様に美しく輝いていた。
その所作にミュールヒルは知らず心奮わす。
何時だったか、架音が自分の姉を『天才』の別の生き物だと表現した事がある。
その表現は真に正しく。
あぁ、成程コレは別の生き物だ。
と、パフェとミュールヒルの心の感想が奇しくも一致する。
だが、ここまでだ。
一見華蓮がミュールヒルを掌で操り、圧倒的優位に立っているように思えるが、避ける度にその体には徐々に裂傷が増えてきている。
対するミュールヒルは薄皮一枚以下の切り傷を攻撃の度に受けてはいるだけ。
怪我にすら入らない極小のダメージだ。
逆に華蓮はご都合主義でも発生しない限り現状ミュールヒルにまともにダメージを負わす手段は無い。
ならばどちらが先に倒れるかは誰の目から見ても一目瞭然だ。
故にミュールヒルはこの勝負の行方が、華蓮が取る選択が気になって仕方が無かった。
ここまで圧倒的な実力差がありながらまともに闘える様な者がただ時間切れを待つしかないはずが無い、と。
そのミュールヒルの思考すらも華蓮にとっては相手の行動を怠慢にさせるものでしかないのだろうが、それでもミュールヒルは良かった。
違和感の正体を確信したにもかかわらず、何の小細工も弄さず先程と同じ様に神鎚を振り回しているのはそう言う訳だ。
「さぁさぁ、どうすんねん?! まだ何かあるやろ? 見せてみいっ!!」
怒号と共に華蓮に大量の神気が浴びせられる。
それでも華蓮は眉一つ顰めず、緩く微笑んだまま踊り続ける。
「………………………もうちょっとかな?」
ミュールヒルの言葉などまるで気にせず、ただただ冷静に状況を見極めながらポツリと華蓮が呟く。
優に裂傷は大小含め百余は刻まれている。
それでもその動きに一切の衰えを見せないのは強靭な精神力と神すら凌ぎかねない戦闘センスにより機動性を損なう部位に一切の損傷をしていないお陰だ。
――とは言ってもそろそろ限界なんだよねぇ。
至極リラックスした表情のまま華蓮は己の手足の疲労と傷の具合を確かめる。
これまでは分散させ凌いできたが、分散させる場所がそろそろ無くなりつつある。
治癒術も使えない事は無いが、重力操作と風の魔術を解かなくてはならないので初めからその可能性は潰している。
このまま擦り切れるまで時間稼ぎする気など毛頭ないが、そもそも避けているだけが限度で相手を戦闘不能にする方法など不可能だと言う事が華蓮自身身を以てよく解っていた。
元よりこれはミュールヒルが手を抜いて成り立っている闘いだ。
ミュールヒルがその約束を破棄するだけで華蓮も架音もたちどころに死んでしまうだろう。
だがしかし、華蓮はミュールヒルが絶対にその約束を破らぬであろうと言う事を確信していた。
そしてその確信こそがミュールヒルを攻略する為の僅かな光明である。
架音とパフェが参戦しさえしなければミュールヒルは第一ないし第二契約を結ばず、華蓮は即死せず躱し続ける事が出来るが、華蓮一人ではミュールヒルを倒す決定打が存在せず、決着を遅らせる事しか出来ない。
架音達は第一契約さえ結べば、契約なしのミュールヒルを戦闘不能に追い込める可能性があるが、参戦すれば契約を結ばれ華蓮もろともやられてしまう。
一見どちらを選んでも詰んでいるように思えるが、ここに付け入る隙が存在する。
この状態で華蓮が一瞬でもミュールヒルの気を完全に逸らす事が出来れば、契約を結んだ架音達に一撃だけ契約なしのミュールヒルを攻撃するチャンスが生まれるのだ。
第三神の気を『一瞬気を逸らす事が出来れば』の話だが。
それがどれほど難しいかは言うに及ばない。
だが、メリットが大きいのも事実。
今の架音達に逆転の目など奇跡やご都合主義を除けばコレ以外まず残されてはいない。
その事を華蓮が理解しているのかどうかは不明だが、何かをしようとしている事は確かだった。
「―――よっ……とっ!!」
体を大きく捻り、今までよりも高く宙返りするとミュールヒルから十数メートル離れた位置に着地する。
ミュールヒルがそれを追撃しなかったのは言うまでも無く好奇心からだ。
「さあ、何を見せてくれるんや?!」
追撃をやめておきながらほんの一呼吸すら待たずに疾走を開始するミュールヒル。
楽しみだと言っても棒立ちで技の発動を待つほど酔狂ではない。
堪え性が無いのは事実だが、これは闘いに対するミュールヒルの矜持に因るものが大きい。
要するに敵を前にして無防備な姿を晒す行動をとる奴など端から彼女の頭の中には無いのだ。
そんな様子のミュールヒルに対して全く焦りもせずに懐に手を突っ込む華蓮。
「まずはお試し……何せ初めての試みだから加減とかよく解らないんだよね」
素早く懐から握り拳二つ半程度の長さの棒状のものを取り出す。
そして指で何かの印を結ぶとミュールヒルに向かって放り投げた。
「? なんやこれ?」
飛んできた棒きれの様な何かを一瞥しながらミュールヒルはそれをあっさりと避ける。
いや、避けたはずだった。
ミュールヒルが体を逸らした瞬間、吸い寄せられるようにそれが軌道を変えたのだ。
ミュールヒルの体に付けられた印へと。
彼女は一切気にしてなかったかもしれないが、華蓮が傷付ける事も出来ないミュールヒルへと幾度も斬りつけていたのは理由があった。
コレを外さない為に念入りにミュールヒルの体に魔術陣を刻みつけていたのだ。
天羽を中心に幾つもの魔術陣が起動し、魔力が流し込まれていく。
『禁咒――――神代御供・心魂相剋』
華蓮の声と同時にミュールヒルに接触した棒きれから架音達ですら耳を閉ざしたくなる様な断末魔のような奇声が辺りに大音量で響き渡る。
「―――ッ!!」
ミュールヒルに接触した個所から空間が捻じれ、ミュールヒルの右腕の肉片ごと吸い込まれていく。
如何なる手段を用いたのか、華蓮は天羽ですら薄皮一枚斬る事しか叶わなかったと言うのに、強固であったミュールヒルの肉を削ぎ落しダメージを与える事に成功した。
そしてこの隙を逃すパフェと架音ではなく一瞬の隙が出来たミュールヒルに間髪ずれずに攻撃を仕掛ける。
「―――舐めんなっ!!」
華蓮の攻撃で僅かに反応が遅れたとはいえ、ミュールヒルも架音とパフェがこのタイミングで攻撃を仕掛けてこないとは思っていない。
すぐさま架音達へと肉が削げた右腕で神鎚を握り直し、遠心力で薙ぐ。
僅かに架音とパフェが速いが両者ほぼ相討ちのタイミングで互いの攻撃が交差する。
「「――――――――ッッッ!!!!!」」
ここにミュールヒルと架音達三人の闘いは決着を迎える。