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8. 新歓トランペット

「和也、明日オフだけど空いてる?」


「え、明日ですか?全然空いてますよ」


 突然の由梨奈からの質問に(なんで俺に?まさかのモテ期到来か?いきなりデートかぁ〜。ちょっと早すぎる気がしなくもないが、積極的なのは嫌いじゃないな〜)なんて対人経験の少ないオタク特有のムフフな妄想を巡らせていたが、


「そう、ならよかった。明日トランペットパートの新歓でご飯でも行こうかって話になっててね。大宮にもOKもらったし和也も来れそう?」


「あ、はい。もちろんです!」


 もちろんそんなミラクルは起きるはずもなく。


(なに勝手に期待して残念がっているんだ俺は。)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃあ新入生2人の入部を祝して〜〜〜〜かんぱーーーい!!!!」


「「「「「かんぱーーーーーーい!!!!」」」」」


 新歓場所は高校生らしく、某ショッピングモールのフードコートだ。

 休日の昼間ということで家族連れもかなり多く、賑わっている。


(まだ入部してそんなに経つわけではないけど、トランペットパートでよかったな。先輩たちはみんな優しいし、大宮はまぁ、まだなんとなく気まずはさ抜けないがそのうち時間が解決するだろう。他パートのこわ〜い先輩たちを見ていると、このパートでよかったと心の底から思える。)


「2人はもうトランペットパートの雰囲気はなんとなく分かったかなー??結構あんな感じでゆる〜くやってるけど、やる時はしっかりやるって感じのパートかなー?特に今年は初心者のみやりんが入ってくれたから、より音楽の楽しさみたいなのを知って欲しくてねー!」


「そうなんですね!ありがとうございます!実はボク、吹部ってアニメで観たみたいなギスギス感があるのかなってずっと心配してたんです。麗暸の他のパートとか見てると結構怖い感じの先輩とかいっぱいいてすごい不安だったんですけど、ひかる先輩たちみんな優しくて丁寧に教えてくださるので、今すごい楽しいです!」


「くお〜〜眩しい〜〜〜〜〜!そう言ってくれて嬉しい!実はあたしらもこの部活の雰囲気はあんま好きじゃなくてさ。こないだコーチが言ってた話とも繋がるけど、吹部のせいで吹奏楽嫌いになるなんて本末転倒じゃん?だからせめてパート内だけでも雰囲気楽しくしてこー的な?」


「でもそのせいで他のパートから真面目に練習しろってしょっちゅう怒られてるけどね。」


(他人事のように話すあたり、ユーリ先輩も同意見なのだろう。この間の件があったから、ひかる先輩が本当に大宮やパートメンバーに吹奏楽を、音楽を好きになってもらいたいと思っていることが説得力を帯びてひしひしと伝わってくる。)


「そんなことは〜気にしな〜い!!ねえねえ、ところで2人はどのジャンルの音楽が好きとかある??音バナしよ!」


「わたし、ジャンルとかあんまりわかんないんですけど、最近はずっとケチャップ無料がいいのにってバンドの後ろで鳴ってるトランペットがすごく好きで!」


「ずとけちゃいいよね〜〜確か原盤であのトランペット吹いてるの嵐山コーチだよ!」


「えほんとですか!?え、身近にそんなすごい人がいるんですね、、、」


「他にも色んなアーティストの作品参加してるから調べてみなー!和也はどう??」


 来た。ここで話しすぎてしまったら引かれるから、無難に答える。無難に。


「俺は専らアニソンですかね。単純に上手い人が多いのと、あのアニソン特有の電子音とか好きなんですよね。あとは最近は声優さん聞き漁ってますね。」


「アニソンの電子音というといわゆるデジロックとかトランス系ってやつかな?ーーそうそう、和也がこの間言ってた天空さんの作品聴いたよ。声優さんなのに歌めちゃくちゃ上手いね。簡単に言ったらいわゆる深くて良い声をしていて、ニュアンスを入れるのがすごい上手いね。あのビブラートの掛け方はなかなかできる人いないと思う。」


「そうなんですよ!あの低めのハスキーボイスが癖になるんですよね〜」


 (さすがユーリ先輩、理解ってるな〜)と感心する。

 自分の推しの良さを共感してもらえるのはなんというか、、、すごくいい!!


 そうそう、と言いながら向日が何かを思い出したようにスマホを取り出す。


「天空さんで思い出したんだけど、これって和也だよね?」


 そう言いながら和也に見せてきたのは、、、、、和也のツイッターアカウントだ。え?


「えなんで知ってんの!?いやなんで知ってるのかは後回しだ。と、とにかく今は誤魔化さないと!流石にあのアカウントの投稿を身内に見られるのだけは避けなければ!)


「ア、イヤ、チガウトオモイマス、、、、、」


「あっはっは!嘘へたーーー!!!!その反応じゃ逆に白状してるようなもんだよ!」


 ひかる先輩が大笑いしている。

 ちくしょう。かわいいな。


「そっかぁ。別人なのかぁ。今話してた天空さんの内容そっくりそのまま投稿してたから、もしかしたら和也じゃないのかなって思ったんだけど。じゃあここで他のツイート読み上げても問題ないよね?えーっと、百合ってえっちすぎr」


「わあああああああああああああああああああ何も聞こえない何も聞いてはいけない何も聞こえるはずがない!!!!!!わあああああああああああああああああ」


「すごい必死な三段活用ですね」


(花見の時のまちる先輩の言う通りだ。この人、性根が腐ってる。どうしよう、やはり暴力か!?暴力で解決するしかないのか!?)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そんなこんなで新歓もお開きになり、帰り道。


「和也ー」


 性悪男が呼びかけてくる。


「なんですか」


 和也は不貞腐れた態度で応える。


「いやいや、ごめんごめん。もしかしたらって思ってね。ななまなってアカウントわかる?」


「分かりますよ。」


「あれ、僕なんだ。」


「はい?どこまで俺のこと傷つけるんですか?流石に冗談きついですよ。」


「いやほんとに。」


 見てこれと言ってスマホを見せてくる。


「え、まじじゃないですか。え。じゃあこないだアカウント見せたくないって言ってたのは?」


「普通にこんな激キショアカウント人に見せられないでしょ〜」


 ななまなさんといえば和也と同じように声優だとかアニメだとかのツイートをブヒブヒ言いながら投稿している人間だ。

 和也は完全に消費豚ではあるが、ななまなさんは推しや好きなアニメの楽曲をカバーして投稿して、本人から反応をもらってまでいるので、俺たち消費豚よりは先のステージに進んでいる。


「えじゃあなんで同じような投稿してる俺のアカウント晒したんですか」


「ちょっと魔が差しちゃって」


(こいつ、、、、、、男のてへぺろに価値はねぇんだよ)


「まあだからお詫びに僕のアカウントも教えてあげたってわけ〜。内緒ね。じゃあまた!」

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