表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

18. 合宿②(由梨奈と大宮〜10年間必死に求めていた探し物〜)

「肉だあ〜〜〜〜〜〜〜っ!」


 日も落ちかけ、少し気温も下がってきたところでバーベキューの準備が始まった。

 ここぞとばかりに駆り出される男子部員たち。

 吹部に限らず軽音も女子部員が全権を握っており、こういった火起こしや力仕事の雑用は男子部員に命じられるようである。


 先ほどまで海で泳いでいたので、女子部員たちは今は上着だけ羽織っている様子だ。


 実の所、和也は脚フェチである。


 元来、男という生き物は「胸派か尻派か」と聞かれれば、多くの者は胸派だと答えるだろう。

 もしそこで尻だと答えるやつがいたとしても、そいつはどちらかと言えば尻が好きなだけで、結局のところいざ大きい胸を目の前にすると逆らえないのである。


 しかし和也は違う。

 姉の影響もあり、高身長でスタイルがよければ、胸なんてなくてもいいとさえ思っている。

 そして今は女子たちが上着を着用していることで、脚だけがより目立って露出しているのである。


(水着で全身の肌が露出しているのもそれはそれで眼福だが、こうして脚に視線を奪われるのは大変素晴らしいな、、、。これが肌露出における引き算の美学なのか、、、)


「よし、火の準備できました」


「こっちも食材いつでも行けるよ〜!」


 そんなこんなでトランペットパートはバーベキューの準備が整い、肉や野菜を網に乗せ始めた。

 由梨奈は大宮とは対角線上に位置取っており、距離を取ろうとしているようである。

 大宮としても少しずつストレスが溜まってきているようで、いつもよりあからさまにテンションが低い。


「まちる、それ生焼けだよ」


「大丈夫です。今日の私の胃袋は猫なので。」


(この2人が付き合ってるって、、、?なんかもう恋愛よく分からん、、、)


 和也はいまだに夏祭りで大宮に言われた、向日とまちるが付き合っているという事実が腑に落ちていない。

 いや、納得していないとかそういう問題ではない。

 単に全くその事実を頭で認識・理解できないのだ。


 そんなこんなで何事もなくバーベキューは進行し、パートメンバーのお腹も膨れてパートによっては片付けを始めている頃、大宮がついに我慢できずに切り出してしまう。


「そう言えばなんですけど、ユーリ先輩ってぼくの事苦手だったりします?」


 パート全体に緊張が走る。


「え、、、、いや、、、そんなこと、、、」


 由梨奈が目を泳がせながらしどろもどろに答える。


「だってユーリ先輩って皆のこと名前で呼んでるのにボクのことだけ名字で呼ぶじゃないですか。で、なんとなく普段もぼくだけ避けられてるのかなって思ったりしてましたし、今日なんかは特に近づいたら避けてるなって思ってて。思ってることがあるなら素直に言ってくれたら助かるんですけど。まぁ確かにこの性格なので嫌われやすいのは理解してるんですけど、でもパート内でそういう雰囲気を持ち込むのはよくないんじゃないかなって思ってて。」


「大宮、違うんだ」


「みやりん、違うの!」


 思わず口を出してしまった和也とひかる先輩の声が重なった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 時は少し遡って海水浴で和也と由梨奈が話をしていた頃。


「、、、和也、ちょっと待って」


 そう言って由梨奈が海に向かおうとしていた和也のことを引き止める。


「パートのことだからね、どうにかしないととは思っていたんだ。付き合いが長いひかるにはすぐに勘づかれちゃったんだけど、和也にも話しておかないとだね。私ね、、、、」


(今までよほど頭を悩ませてきたのだろう。確かに大宮のことが苦手だという気持ちもよく分かる。他人を顧みずにズバズバ言ってしまう性格だし。ユーリ先輩もこの数ヶ月でかなりストレスが溜まっていたのだろう。息も少し荒くなっている。)


 由梨奈は数回大きく深呼吸をして呼吸を落ち着けてから話し始めた。


「私、大宮のことが好きなんだ。」


「ハゑ?」


 変な声が出た。


「え、それって、、、、恋愛感情でってことですか?」


「うん、もちろん。私、昔から女の子にしか性的魅力を感じなくて。でもアニメを観ていると不思議とショタと男の娘に魅力を感じてしまうんだ。ただ現実のショタとか男の娘に性的魅力は感じなくて。中身は男だからね。そこで思ったんだ。幼い見た目の女の子がショタみたいな見た目をしていてくれたら最高だなって。普通はそんな子が現実にいるはずないって思うでしょ?私もそう思ってたよ。でも違った。新年度が始まって入部してきた子の中に素晴らしい輝きを持った子がいたんだ。しかもその子がまさかのトランペットパートに入ってくれた。これが何を意味するか分かる?和也。」


「あ、、、、はい(分からない。)」


 今までの寡黙な先輩のイメージを覆されるほどのマシンガントークに気圧され、和也はとりあえずはいと言うしかなかった。


 最初のうちはボソボソ喋り始めた由梨奈だが、話し続けるうちにどんどん熱を帯びてくる。


「でしょ?これまでずっと、10年間必死に求めていた探し物が見つかった気分なんだ!しかも今日の大宮の格好、見たでしょ!?好きな子がスク水を着ている。それはそれはもう、、、えっちすぎる!その事実だけで白米かき込めるだろう?さっき和也は私が大宮のことを避けているって言ってたけど、あれは避けたくて避けてるんじゃなくて彼女の輝きが眩しすぎて避けざるを得ないだけなんだ!」


「なるほど!」


 和也には全く分からない世界だった。

 多少なりとも自分が魅力を感じていた女性には意中の男がいたとなれば、NTR的な感覚が頭を支配するはずだったが、まさかの同性愛となると、嫉妬心さえ起こらなかった。

 情報量が特殊すぎて和也の頭はオーバーヒートを起こしていた。


「でもそんなに好きなら大宮に想いを伝えてみたらいいんじゃないですか?」


「絶対やだ」


「なぜ」


「ショタの見た目をした雄んなの子なんて本来この世に存在していい存在じゃないんだ。それこそ国をあげて丁重に保護するレベル。私なんかが近づいてはいけないんだ、、、」


 そう遠い目をして話す限界オタクに、何もそこまで卑下するようなことでもないと声をかけようと思ったが、そう伝えてしまうとこれまでに形成されてきた先輩の価値観を否定してしまうような気がして、和也はそれ以上の気が利いた言葉をかけることができなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「大宮、違うんだ」


「みやりん、違うの!」


 思わず口に出してしまった。


(もちろんユーリ先輩のことを尊重すると大宮に想いを伝えるということは避けるべきだろう。でも、今この空気で本当のことを言わずにどうこの場を切り抜けることができるだろうか?避けてなんかいないよ。本当は大宮のことが嫌いで、、、そんな嘘つける訳がない。ならばもういっそのこと本当のことを説明するしかない。)


 そこで同時に声をあげたのはひかるだった。


「ごめんねみやりん!本当はもっと早く伝えておくべきだったんだけど、なかなか言い出せなくて。ユーリはその、、、みやりんのことが、、、好きなの。」


「、、、、、え?」


 大宮も想定外すぎる返答に相当戸惑っているようだ。


「だ、だってボク、この見た目ですけど一応中身は女ですよ?女が女を好きになるなんて、、、え?」


 先日の夏祭りの記憶が脳裏に蘇る。


「ユーリはね、恋愛対象が女の子なんだ。もちろんみやりんが他に好きな人がいるのは理解してるし、それは尊重したいし応援もしてる!でもあたしもこれまでずっとユーリのこと見てきて、ユーリのことも応援したいというか、、、だから、ちょっとだけユーリと2人で話してもらうことってお願いできるかな、、、?」


「ちょ、ちょっと待ってください!ボクに好きな人がいるって!?しかもユーリ先輩がぼくのことを!?ね、ねえまちるん先輩、ボクはどうしたらいいんですか、、、!?」


 相当焦っている様子である。顔が真っ赤だ。


(大宮に好きなやつなんていたんだな。全く気が付かなかった。というかそこでまちる先輩に答えを求めるのも違う気が。)


「まぁなんですか。私もユーリ先輩にそんな気持ちがあったということはつゆ知らず。でもまぁ、時代が時代だからありなんじゃないですかね。せっかくなので話だけでも聞いてあげては。」


 由梨奈はというと、大宮に自分が大宮を避けていると思われていたことによるショックで、口を開けながら遠いところを見ていた。


「えっ、あー、うん、、、。わかりました。話を聞くくらいなら、、、」


 そう言って赤面したままの大宮と放心状態の由梨奈は宿泊施設の中へ入って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ