7、彌汲孝弘の父・治具流(じぐる)
空港の爆破事件に巻き込まれ死亡した。孝弘は母と二人きりで暮らす事になった。しかし父・治具流はこう言い残した。
『もしも私が居なくなったのなら、それは赤い線を通じて淡い白の子宮・羊水へと包まれる頃だろう。その時は死んだと言わずに、新たなる生命が宿されたのだと感じてほしい』
キーボードには現存する“記号”しかない。
新たなる生命とは生き残る事にも精通し示されていた。
それが変容だと知る孝弘と弘美へ次第に受け継がれてゆくのだった。
※アプソープ・零の世界線より。
受け継がれるそれ等は、受け継ぐという形というよりも分解と再生を期した内容であった。ところが治具流は、それを預言として“再開”させたのだ。
余りにも世界からかけ離れ、世間から見越された内容であるために、総理大臣の秘書で、各地の大統領との間を取る仕事に伏せていたのは、そういった内容の理解が遅れている世界であるからである。
もし、本当に彼を理解するのなら、最古の世界線からその先で成る世界線との通話が必要であると確信した治具流は別次元の世界について想像してみせる事にした。すると思いのほか、生命と宇宙についての交信が行われていた事について、共感者が居たのである。
―――コール・アップ―――
治具流、あなたの研究は正しい。
それに理解は最も先を見抜いている。
それが世間の目に触れると伏せられるのだろう?
そうなるなら私の生命理論を解読してほしい。
どうにかあなたの理解されない部分を補えるように祈るよ。
―――コール・ダウン―――
タニ、君の推論は生命と宇宙の起源に勝るとも劣らない。
私こそ感謝するよ。
だがね、今の世界は人工的な発想を醸し出そうとしている。
もっと熟慮が必要なら、
その最初たる内容を生命学理論として
逆換算するのはどうだろう。
健闘を祈る。
――――
このようにして、彌汲治具流は“預言書”と題した詩集を作成したのである。
パソコン等で作成した内容をそのまま転写したのでなく、あくまで手記に拘る事でその人の感情や内容が理解できるという仕組みを関連付けた。
このジパン・バルラーという世界線が創られたのは、元来は生命たる宇宙の起源が神によって創られたというもので、神は実は単なる一端の意志だった事に相違ないという意味を付け加えてみた。
すると次第に想像力が増し、時間と共に創作期間を無視して仕事をしながらでも作成できる事に気付く父・治具流を見た孝弘は、面白そうだと近寄っては父との会話を絶やさなかった。
そうする事で親子関係が良くなった気がするのは、仕事と学業とお互いが会えない事情があって、それ等を埋められる要素だとして簡潔なる態度を取ってみせる。
するとそれに道彦が寄ってきて孝弘から託されるのだが、その治具流の真意は見えないままで終わっている。
―――最古に眠る存続する“キー”がボードにさえ在れば、幾つものパターンで信号を送れていたに違いない。コール・アップ、コール・ダウンに際する暗号解釈など安易に出来ていたのかも知れない―――と。
ノーマル・タップでは示されない記号、その世界線の言葉が示されないと、生命の由来を表すのに限度があるのだ―――と。
「・・・ろ」
そう、呼ぶ声がする。未来へ残すべき言葉は何か?・・・と。
「・・弘ォ、」
届かない、言葉は声よりも偉大な音なのだ、と。
「うん?」
「孝弘、おじさんは偉大だな。俺達が生まれる起源から最終までの内容を、預言書として纏めてしまっている・・・」
「親父は結構、神経質だったのかも知れないな。俺だったら宇宙の起源や最終を書くよりも、その途中と遊びがどうだったかを伝えるけど、手加減できない内容は親父らしいや・・・」
――――
治具流はこうも予言していた。
お互いの内容や求める事が異なっていたとしても、次第に最終期限がやってくると。その様にしてようやく理解を求め合い、止まらぬ食を太陽から過ぎるまで見ていると。
それが次第に食べる事と同じ状況となれば、周囲に起きている事態は一瞬で干上がり、ようやく自らの使命を全うするかしないかを鑑みる時代を体願するようになるとも書いていた。
時代、次代・・・それは、あらゆるキーポイントで現れるモノゴトで示されているのか、大願する事で見た事も無い時へ移動するのか、とも書いていた。
『時代に総じてお互いの意見が異なる事こそ、大事な時を刻み、大切な思い出となる事を示しているんだよ。孝弘、これはな私の友達と創った作品なんだよ』
『それって誰も教えてくれないって事じゃないか?』
『いいや、教えてくれている。教えてくれないのでなく大事な時間を大切に扱う事を教えてくれているんだよ』
そこに何があるか、無いのかという理論より、既に有機なるものが無機である事に感動を覚えた瞬間を伝えて置きたい意図もあった様だ。それもいとも簡単に簡潔に纏めるのでなく、複雑な沢山の遺伝が流れてきている情報源なのだと教えてくれている。
もしかすると治具流こそ、才の在る人物だったのかも知れないと、孝弘に代わって道彦が受け継いでいたのは、人工生命体と機械生命体を具現化した第一人者だからこそ、自分よりも先に出来ていたのではないかと語っている。
「人類が子宮だったら、人工生命体は糸で、機械生命体は宇宙になるし、神にも成り得る存在なんだな。どうだ?」
「おじさんは、そんな甘い研究などしていない。俺達は生命の起源たる初期しか学んでいないに過ぎないんだよ」
◆
治具流は、遊びと手加減はどちらの魂へ往くのかと意志に沿って描いている。それを図面式に捉えた線画を書き残した。それはまるで我が子の様に親しんだ内容となって居た。
何れの宇宙と次元の意志にも沿わない内容だが、それでも飽くことの無い意見に従い、自らをキーとして表明するような具現化へ挑戦した内容だったことに相違ない。
それ等を理解するには、一度、人を止めない限りは出来ない事だと国外でも語っている人物が複数人居て、おまけに一部の掲載サイトにも載せられて居るが、上部の指示や差し止め在ってか、任期を評する程ではなく、一部の研究対象にも成らない程の寂しさを醸し出している事を分かって居なければならない。
『随分、前にも言ったよね、孝弘。世界の輪廻は愛と情けだけじゃない。泥に塗れて、水で覆うような世間がたくさん存在するんだ。それが罪と赦しだと私は思うんだよ』
『ふ~ん、愛と情けがぐるぐる回って、罪が赦されるまで一直線てことだろ?』
『一理あるね。宇宙の天体は一見回った感じはない。でも、朝がやって来ると日が地平線を明るくするだろう?それが一直線なら、ぐるぐる回るのは今居る大地という事なのさ。分かるかい?』
『いや、分かるというか楽しい時間だよ』
『それは、よかった・・・ペラッ』
◆
もしかすると、自分は何もない時代から来たのかも知れない。さもすれば別の起点から現れたのかも知れない。例えば、全く異なる世界と世界の繋がりを別々の視点で体験していたかも知れない。
Cはシューター、Aはアストラル、Sはセンター、Gはゴラートとして事在るごとに様々な意味を持ち、その世界ごとに異なる名称で呼ばれていたのかも知れない。
そのようにして宇宙の軌道・流気は栓に蓋をした、射出口だったのかも知れず、そこから漏れた泡が塊として星々の形状を創ったのかと感じられた。
「じゃあ、Mは“モラリスト”?」
「“モノゴトリー”なんてのはどうかな?」
アミのように宇宙を漂う血管が揺れ、引き伸ばされた線が各世界を創造され、産毛のような生命の汽笛を鳴らしていたのだろう、とも治具流は各地の人々と話を綴った。それは単なる趣味だったのに“鍵”として、いつの間にか夢中になると止まり場所が仕事の時間になってしまう。
問題は、理解と科学と生命たる由来が現実に留まるか否かであり、それが、世代を超えて新たなる世界を創り出す事は言うまでもない。
『色なんてモノは反応が溶けあうと、8色に輝いて、10個の形態になる時に1を引き、0で止まると虹の様に光るのさ・・・一般的に7色というけど孝弘、“お前”は何色使って勉強しているんだろうね?』
それは、寝そべるような瞬間だった・・・。
父が普段、キミと呼んでいたのに、突如とお前と呼ぶ瞬間があった。
それは意志として―――
時として刻まれる合間に――――
”キー”として――――




