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―3―畏怖の世界線「ジパン・バルラー」  作者: 醒疹御六時
終章、確かなる手ごたえ
35/37

35、破滅と破壊

親友同士の葛藤を描いています。


――道彦、預言を思い出すんだ。


「お前はきっと発明の扉で苦しむだろう。そんな時があるから常に人を省みず謝りもしない。それでお前がいつか恨まれる日が来るだろうから、命だけは気を付けろよな?」

「そうか孝弘アレだ。予言通りだとお前は健康診断で糖尿病。行って来いよ“ペシッ”」

「・・・っと、そうだよな、でもお前にだけは言うよ・・・じゃあ、さようなら!」



 俺は道彦に預言を託した。

 だがその危険を省みなかった代償が、

 研究と実験という形で謝りを訂正しなかったのだ。



「博士、あなたは何故・・・こうまでして・・・計画を壊す・・・?」

「臣子博士ぇ、もぅ―もォ十分ですっ!亡くなった人達の魂が壊れてしまう・・・!」

「ええい、うるさい!俺は永久なる生命体を実行・継続するのみだ――、どけぇァ!」

「あ、あなたはぁ~、計画を壊すつもりですかァ~~?壊れたら・・・もうその地位も失い、“チャッ”我々もジパンから消されるんだァ―っ!やめろォォ“―ドスッ”」


“ブシャ―ァ・・・ぐっ?あァ~ぁ―・・ッ!”


 道彦は大事に至らなかった。だが、その立場については長期的な審議が求められた。なにせ同志を失ったのだから執着心の強い道彦の場合その苦悩は尽きる事がない。

 だから俺の託した“さようなら”という意味を理解したのは人工生命体にも応用可能な医師免許を剥奪されてからだった。


「このぉ、臣子家の恥さらしめ!」「あなたの手術で後遺症が残った!」「この悪魔め!」

「お前のせいで魂が死んだァ!」「人工生命体の出力暴走事件!」「臣子道彦の自滅劇!」



――――――――だがその一方で、


「お前はあの事故さえなければ、両親も失うことなく普通に生活が出来ていた人間なんだ・・・背負うな・・・栄えある希望よッ!」


「臣子家の恥さらしなどと思うんじゃないぞ?」

「生き残ったのなら生き遂げるんだ!」

「あなたが居たから我が子が生きて戻れたんです、めげないで下さい!」

「天使の腕!」


 道彦は迷った。免許が無ければ自身が人工生命体へ自ら培った技術をその手で確かめる事は出来ない。だから機械生命体という形をとり、設計から論文に時間を費やしたのち、後任へと託したのだった。彼は幹の筈。それがまるで自らの枝を剪定してゆく様であった。


「俺は間違っていたんだ。だから君にこれを託したかった」

「先生、いえ、臣子博士・・・決してあなたの成果、無駄にはしません!」

「私も、貴方の導きだした人類移民計画に助力を要請してゆきます!」

「間違っては成功でしょう?間に合わない命だってありますよぉ!」

「それを継ぐ者が手足となる。現に、ここに居るじゃないですか?」


――――

 だが、俺の父・治具流の預言には『計画とは永遠でなく費えてゆくものだ』と記されていた。それを道彦は最後まで読まず心に留めていなかった。唯々、“失った愛”を巻き戻すかのようにその努力と奉仕から蘇ることのない魂だけを追い求めていた。

 だから結果的にあいつは闇の世界線を創ったのだろう。それでもチームを築くべき時がやってくる。



「なァ、お前のお陰で沢山助かったんだぞ?失敗は成功。お前はきっと省みることなく謝罪するような暇がない。決めて前を向くんだ。この予言書はもう俺達に必要ない」


「孝弘・・・お前・・・やはりお前こそ博士号を取るべきだ、俺と組め!」

「いいんだ。いつか俺もお前も居なくなるかもしれない。だが“さようなら”なんて言葉は過去に閉まっておけよ。もう十分闘ってきたんだって。それも必要ないんだからな?」


 俺達は結局博士号を取得した。お互い頑固で譲らない所は言い合う。だからいつまでも親友だという事を忘れたりはしなかった。そして“道彦その時まで祝杯を挙げようぜ!”と彼に伝え、その後の“核融合生命体の事故”によってライト・オブ・バーストが発生。

 結局リプラに眠るスタヴァ―の意志が働き事なき抑えられたが、そうして変容を遂げたのは俺だけだった。


「なぁ、孝弘・・・これで、いいんだろう?」


―あぁ、

「俺が、誤りを正したとしても、失敗は失敗」


――そうだよ、

「苦しいよ。お前と一緒に居られないなんて」



―――これでいいんだよ、馬鹿。


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