27、人工生命体と機械生命体
人体は年齢を重ねる度に次第に脳の認知機能が衰える様になり、これまでの名称と言語、役割を忘れる。忘れなければ今度は肉体が縮んでゆき温度を感じられなくなる。そうなると寿命を迎え魂が残るだろうとされていた。
だが魂の本性とは歓喜・憎悪・欲望・悲壮から立ち上がるものである。だからその魂を受け継ぐ役割が必要とされるのだ。
◆
「故・脳科学者・榎並勝男 氏23歳の体へ色別哲学者・田藤加奈子 氏91歳の魂たる脳組織を移植する」
「一般主婦・厚木愛永さん39歳の欠損した神経と両腕へ故・パワーアスリート・夏樹タカノ・エーデル 氏45歳の脊椎神経と両腕の筋肉を接合する」
「無職・手島久理子さん21歳の脊椎へ対し、故・越美忠雄さま88歳の骨髄と背中周辺の筋肉の遺伝子を注入する」
様々な役割を担う、人物から役目を終えた人物或いは、役目を担うべき人物へ、故人の生体移植を行う、若しくは分け与えるという形式を取り入れた、人工生命医学という術式が採用されて長い。それで尚も受け継ぎたい・受け継ぐ形を取るのだが・・・、
「被検体の脳に対し脳組織を注入する」
「腕に対し被検体の腕神経を接合する」
「被検体の胴体に対し被検体の胴体の一部を移植する」
それを“魂接合”といい、
それを“継承”とも呼ぶ。
特に後者の継承は更生とも云われており、後に産まれた者だけがその対象とは言い切れるものではない。その継承から与えられる財産(例えば人脈・資産・職業・象徴・選択など)が大きすぎると魂は彷徨うのだ。発明家はそれぞれの専門家として協議し、その魂の有用性を論議する。
その結果として生命・科学が存在し、倫理法則をも侵し生命を蘇らせる事を結論とした。それが人工生命体と呼ばれる。その願いは“もしも生きていたなら”である――――。
「はァ、生き返った・・・136歳か・・・これならお前達との暮らしと知識を共有できそうだ。それに、癌を克服した事だし、痛みも無く散歩も趣味も出来る・・・あとは、視力だな・・・」
「父さん、贅沢言うもんじゃない。ひ孫も驚いている。ワシも113歳・・・人工生命体の手術を受けるつもりだし、父さんとも再び暮らすことも出来るよ・・・」
――――魂は完全な肉体を形成する事は数多な発明家を困らせた。それはやがて悩みとなり部分的な補完が必要となる。そこで注目されたのが機械生命体という人工生命体の一部を移植するという技術であった。その願いは“生き続けてほしい”である。
その本体の作成方法はライト・オブ・ホールの可視化光体エネルギーを利用したもので光化学プリントアウト方式を採用しており、平面上に伸ばすことで皮膚が造られる。
「これなら、生命だけでなく、あらゆる分野の機材にも適応しそうだ」
「是非、使ってほしい。それとリケル、この素材なんだがね・・・」
「ああ、大丈夫だ。機械生命理論は古い技術を活用しているのでね、」
骨格は廃棄用の容器素材 Dscird-cntinaを使用。鉄材と混合させて形成しており無害である。臓器は再生用Frplybk素材を適用。血管や神経も人工素材として生成可能。脳は生前のものを再生させている。機械生命体の場合、ダーク・オブ・ホールの可視化闇体エネルギーを映し込み人工生命体よりも耐久度が70%高く各部位に接続し、人体と結合する機能を持つ。いずれも損傷部位と同じ状態に馴染む特徴を持つ。
「臣子博士はやってくれたよ。でもね、人として活動するには限度があるから、そこがいいの。あなた達も是非、そこら辺の患者さん達だからといって除け者にしないで、如何なる望みなのかを尋ねてきてから、その術式を活用してほしい」
「はァ、望み・・・ですかァ。俺は生活を安定させたくて入ったんだけどなァ、そういう訳にもいかないものなんですね・・・ふぅ、」
「私は、家業が在るから、その引継ぎ手が居ないから、それで否応なく金稼ぎに来たのと変わらないのに・・・いつの間にか医術チームのスタッフとして働いている・・・そうですよねぇ、活用しときますか!」
「人見君?あなたは、“臣子術式”を如何に使うのかを理解しなさい!手国君?あなたは遺伝子学を成長させなさい!二人とも、何れ教える場に立つのだから是非、医術チームとして、一からやってみて!」
◇
この様にして、新たな技術の幕開けは、新たな未来の人材へと引き継がれる。
それが例え、かつて人工生命・機械生命技術で蘇った人材だとしても、人を救う事には変わりないのである、と・・・。




