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26、ライト・オブ・ホール

※インディアン的な表現が入ります。

 俺は裸のまま山林へと向かっていた。放浪の旅とはそれをも試練と言い開き直れるモノらしい。それまでに共にしていた衣服と下着に靴を失っただけではなく、本人証明・携帯電話・金銭・革袋・布・歯ブラシだけは置いて、その様な恰好で山林へとやって来た。

 覚えられる距離で、近くの草道の方に、だ。裸の方が俺には見合った姿のようだ。


――――

「あの戦地付近の店での出来事は、何だったのかな?」

“覚えていないのなら、オレが少しだけ思い出させてやろう”

「うん??・・・気のせい・・・だよな、」


 それにしても、太陽の光がこれほど眩しいとはあまりに不自然だ。木々が透き通って見えている。だがそこには二つの人の形が俺に近付いていた。まるで気が付かなかった。


[アプ、時の眼に幹が映る。枝は死か?]

[枝は道。イデュ、手を時へ3葉向けろ]

挿絵(By みてみん)

 アブという人は“目の前に何者かが現れこちらを見ている”と言う。一方でイデュという人は“その者がこちらを見付けたなら回り込んで連れて行け”と伝える。

 俺もこのような場面を想定して各異国の言語を習得していた。これら言語は例えば『土と岩と太陽の方角を示し、水の音が幾千も流れるなら岩の凹凸を伝い、太陽の光の指す場所へ向かう様に』と伝えてゆく行為である。

 ――――つまり意味など分からなくとも俺の言葉に置き換えればいいのだ。


「すみません、何か着るモノを分けて貰えないでしょうか?」

「何だって?我々の着物が欲しいというのかい。どうするイデュ?」

「仕方ない。大人になったばかりで不便なのだろう。アブよ、彼を村へ連れて行こう」


 俺の体は木の幹の皮を巻きつけられ、しなりのある丈夫なツタで固められた。彼等はその葉をすり潰し動物の血と混ぜて煮ている。葉緑体と液素と油。よく見るとそこには生命の源が溢れている様にも感じられた。


「これを肌へ塗るのだ。これで我等の民に傷付けられないだろう」


 荷物は未だに何処へ置いてきたのか覚えている。見つからない様に忘れられない様に、そして生命の根源なるこの民族達との暮らしによって、俺は新たなる世界へと導かれる。18歳という年齢をも超えた種族となるのだ!


      ◆


「若い」

「俺が若いというのですか?」

「あぁ。見失うなよ、自分自身を隠すな」


『なぁ、道彦ォ、お前って人込みに隠れる癖があるんだなぁ。幼馴染だから隠れなくてもいいのになぁ・・・』


 ハッとした瞬間だった。

 アブはイデュと共に狩りに出かけていった。

 他の者に何処へと向かったか尋ねるが、「ここでじっとしていろ」と言われるばかり。

 ここでも俺は堪えて、じっと家族に“なりそう”な者達を待って居ろというのか?

 もう、両親を失ってから落着かないのが困ると、叔母から言われていたが、成人なんだから少しは見過ごしてほしいと考えより先に、思う節があったのだ。


―――2カ月後―――


 荷物を取って来た。アブとイデュはそれを最初から分かって居たかのように、受け入れていてくれた。俺は一瞬だけ恥をかいたが、民族たる部族も「お前のモノは挑戦だ」と言って喜んで迎え入れてくれた。それと最近、山の方に光の束が見掛けられた。

 俺達はその場へ一度向かってみたいと願い出ると、族長は構わないと首を縦に振ってくれた。アブとイデュは他の野生動物が食料なので逃げないかどうか、部族を災厄に追いやらないかどうかを確認する事。大して俺は、事故前と同じ光の束かも知れなくて見てみたいと、あの頃に何が起きたのかと証明したくて行ってみたい理由が在った。

 そして、その翌日に俺達は山の方へと向かって行ったのである。


「ミチヒコ、お前は以前、アレに出逢ったと言っていたな?」

「そうですね。痛みも何も得られませんでしたが・・・俺以外が崩れて壊れていた・・・」

「そんな不思議な現象が起きるなら、我等も同様の事が起きるだろう・・・一刻も早くに確かめなければな・・・」


 二人の足はゆっくりとしていたが、俺からすると足が速い。それに肉体が僅か二ヶ月で鍛え切られたような違和感さえある。

 何故、そのような現象が起きていたのか理解はできないが、異なる生命が人体に宿ると、遺伝内容が変わるという話を外国に来てから生命に関する本で読んだ事がある。

 そうこうしている間に、山の付近までやって来た――――。


――――

「ミチヒコ、ここからは道が直立している。上るための縄だ。これを掴め」

「我等を見逃すな。そして覚えろ、道は険しいと―――、」

「はい!」


 足を固めながら、ゆっくりと昇ってゆく。そして空気が薄らいでゆくのを感じ取れる。それでも体が勝手に慣れて往くその感触に、俺は不思議と楽になった事を確認出来た。アブとイデュは多少息を切らしていたが、俺は何とも無かった。

 孝弘よりも体力の無い俺が、それ以上に慣れて往くのを感じ取れたのだった。


     ◇


 標高6千メートル。

 その頂きに光の束らしき痕跡が在った。

 しかし、光は薄かったのである。


「コレをこの、光へ飛ばす!」


 “ヒュン”と俺の前にゆっくりと飛ばされた。それは野生動物の肉片だった。

 イデュはまるで、餌をやるように光へ与えたのである。俺はその光の様子を眺めた。クレーターのような窪地くぼちまばゆきながらも、その光は肉片を吸収していった。

 それが、細かく溶けては砕けた。そして返って来た物が・・・、


「これは、くだだ・・・」


―――1カ月後―――


 俺はその管を族長から「持って帰る様に」と、分けて貰っていた。

 それは12センチ程の長さのまま保たれ、腐る事も無く何らかの生命にも培養し、移植できそうな素材と成っている。

 それは成長を促したいという意志が在るようで、全く分解する事も無かった。もし、コレを持って帰って叔母に渡したなら知り合いの研究所へ持っていかれるだろう。そうすると別の生命体の研究理論の本書にでも載りそうだろう。

 俺は部族へ別れを告げて、そして荷物と共に本国へ帰っていった。


――――

「叔母さん。ただいま!コレ、お土産です」

「・・・ふふ、可愛らしい“子”」


 それから”ヒカリノキョウカイ”で孝弘と再会し、人工生命体理論を一から学び直す事で博士号を取得、そして俺の意志は「人を救いたい」という気持ちが相成って、医療現場にも足を運び、科学者としても成立したが・・・それも後の話になるだろう。


 その“管”が、“ライト・オブ・ホール”として蘇るまで・・・。


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