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―3―畏怖の世界線「ジパン・バルラー」  作者: 醒疹御六時
第三章、不動の手ごたえ
22/37

22、事故の正体と記憶の変容


「じゃあ、とっておきの預言を教えてやるよ」


 そのことから車両が“岩で潰れたのでなく”ライト・オブ・ホールの電磁波が中のダーク・オブ・ホールによって“自然な損傷を与えていた”事が判明する。


「預言?それは一体、何だ?」

「お前は必ず、次元の狭間・・・つまり、“魔王”と出逢う!」

「孝弘・・・最古の話ならともかく、魔王とは・・・ゲームでもしたのか?」

「昌弘に付き合えって言われて~、つい・・・ハマってしまったんだよォ~」


 だがその記憶は、世界線変容で“魂枝の剪定”がおきてしまい、闇の世界線でインシュビ―となった道彦は畏怖なる意識に侵された孝弘との思い出と、再生を繰返した後遺症で幼児化しておりその思い出ごと分裂してゆく。


「まず、その“魔王”を倒すのに、条件と目的を果たすための冒険を伝えられるだろう?俺達はおじさんから預言をしてもらったり、生命学理論とは、何か?と聞いて居たり、それは何でだか知っているんだっけ?」

「憶えていないよ。顔を洗って飯を食って、用を足し、学校へ行け。授業を受け、青春をし、友人たちとの語らいを絶やすな、帰って来て勉強をし、飯を食って風呂に入れ・・・これが生命たる根源だと俺は習ってきたが、親父はそんなに偉かった?」

「・・・いや、まァ・・・冒険の基礎だよな・・・」


 ――――父・治具流から習った事は何となく覚えている孝弘だったが、何故成長すると、内容を纏めなければならなくて、大きなモノが小さきモノへ変化するのか、それを生命たる根源だとしてじっくり読む暇など無かった。

 何せ、14歳で父を亡くしたのだから、理解出来る時間はそう、長くはなかった――――。


「魔王って、何て名前が付くのかって事を尋ねるんだよ。例えば、特徴とか、何をしてきてどうして討伐しなくちゃいけないのか・・・等々、色んな話を城下町でも教えて貰うとか、武器・防具ets・・・まァ多いんだよ」

「へぇ、お前ってそんなに趣味、幅広かった?ガキの頃はてっきり虐めに遭っていた方が長くて勉強ばっかりしていた記憶しかないんだけど?魔王って実はお前の事じゃないのォ、」


 岩石を押しのけた巨大生物が、周辺の空気に触れるだけで波紋を寄せて往く。そして、破壊するようにその身を縮めて往くが、まるで人間から遠ざける様に理解されなくなり、同じ仲間たる生物をたった一人で生成し、自然と馴染んでしまうのが特徴だと、よくある内容だ。

 だが、道彦は何故、無傷で生還したのか全く覚えていなかった。



「こないだ、“インシュビ―”って名前で遊んだよな?例えばって話だが、孝弘は“ブレトル”という名前を言っていたよ」

「相談するのもなんだか、普通になって来た。だけどインシュビ―・ブレトルという名前に愛着が湧くんだ。確か、魔王の名前ってプレイヤーが付けるというネットでの話題も随分と流れていたが、俺に取っちゃ子育てと同じようなものだよ」


 そのインシュビ―が”ジグル”へ戻った時に父・明彦は光から闇へと導き、母は闇へと浸食され光と共にジグルを見送り明彦と旅立ったのだった・・・。

 そういう気が道彦自身に在ったのか、孝弘へ話を合わせる様に告げていた。

 最も、理解者同士の親友だからこそできる話であるが、仮に、孝弘の前で再び巨体になれば、その身は意識の奥底の記憶に従って、滅してしまうのだろうと内心、不安に感じていた――――。



「もしも魔王が破壊なら、法律は何だったんだ?アレは生きる事を律する同士の話し合いになる筈だが、いつの間に罰する事を許してきたんだろう?」

「お前だって博士だろう?執刀医であるなら、それくらい分かるだろうに・・・あと、論文的にカタを付けるというのも違うような気がするんだ・・・親父、アイツならどうしているだろうなァ・・・はぁ、」



 もし、魔王がインシュビ―なら、勇者はブレトルという事になる。だが、世界線を越えてきたのなら、その逆も然りであり、魔王ブレトル、勇者インシュビ―という形式も宇宙の馴れ初めで解決させてしまうだろう。

 それ程に、調律した事故の跡というのは余りにも出来過ぎていて、ライト・オブ・ホールの通り過ぎ去る広大な範囲をも、自然災害として捉えてしまうので、道彦自身が見た両親の亡骸は、大変衝撃的なものである。

 その筈が、何事も無かったかのように話せているのは、神から与えられた意志の強さによるものだろう、と言ってみたくなる孝弘だった。



「もし、武器・防具が己の身だったとする。それがもし、70センチ程の手足なら安易に破壊してしまうだろう。事故の痕跡に同じような大きさが在ったと警官は言っていたが・・・あの戦地の片隅にある・・・、いや、何だろうな・・・」


「お前って時々、無傷の話から18歳頃の話まで途切れた反応をするよな?それでよく研究者として博士、医師、教師と様々な職業・資格を得られたモノだ・・・まァ、他国の援助が在ってだろうが・・・気を付けろよ・・・」



 その“予感”通りの事が、預言と異なり友情の中身を変えてしまうとは、思いも寄らなかった二人である。

 それで再び、インシュビ―に戻ってしまったら、仮に孝弘がブレトルに戻るような現象が起きたなら、宇宙の波と網に引っ掛かってしまい、再びマーズが宇宙を産みだした“大いなる意志”へ戻るかも知れない。



「永い時を過ごすんだな、魔王って・・・」

「まったくだ・・・名付けたのにな・・・」


 それも“事後だった”のだろう、と孝弘は道彦の胸に“預言”として告げている。


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