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21、事後

 あれから、俺の両親、俺の知人・友人が自宅へとやってきた。鼻をすする者、涙を堪えきれぬ者、仕事の話を持ち掛ける者、面倒を見てほしいとせがむ者、借金をした等と訴える者など、これらが亡き父が示した“枯れぬ役目”、亡き母の示してくれた“好きなモノ”で“チャンス”なのか?


『臣子君のお父さんこんなに小さく・・・ごめんねぇ、知らなくてつい・・・』

『まっ、あなたのご両親は、スッと立てていたのに、私よりも脆くて崩れて!』

『道彦君、みんな色々と訳があるんだ。だけどね、それを背負ってはいかんよ』

――――――

――――

―――そんな事はどうでもいい―――。

 確かに俺は山を覆うライト・オブ・ホールが散開するのを目の当たりにした。

 だが実際は光の束でなく赤にも似た漆黒の線が、その物質を切り裂くのを感じ取れたのだ。

 ヒカリノキョウカイへ入社する前にそれはダーク・オブ・ホールだと弥美乃罵暖=闇の魔導士バダンの研究結果から知った事だった。それは夢と言う預言で現れた。


“ピチャ・・・ポタ・・・ピチョ・・・”

ここは、何処だ?


“ピチョ・・・ポチャ・・・ポト・・・”

誰も居ない・・・何処なんだ、ここは?


“ポト・・・ベチャ??”

は―――ッ!?


≪すまないね。私の体はもう道彦を抱っこしてやれない~ボロボロ、ガシャ≫


と・・・父さん?


≪ごめんなさい、もう・・・道彦の背中を押してあげられないの・・・グシャ≫


か、母さ・・・ん・・・?



 幼き頃より儚くも醜い夢だ。


 研究の果ては崩れ去るものだと聞く。


 だが俺は、本来であれば父と母と共に潰れて千切れ飛んでいた筈だ。それがライト・オブ・ホールの電磁分解・再生の力場の流れだと分かると、宇宙について知りたくなる。

 以前、孝弘と海で見た宇宙空間から流れる赤い糸、それが血液を再活性化、神経と筋肉、皮膚を覆うその光は体を修復させるため、それで無傷だった事が理解できた。


『君は運がいいんだね~』

『体が無傷だなんて贅沢な悩みだ』


 その現象から父は光で頭部を失い、母は闇で半身が散開していた為に俺自身の記憶に生命学を追求し、生き返らせるという意識・方向性をこの身へと宿す事にしたんだ。


「だが、それは切ない夢だった・・・現実に無い、喜び、哀しみ、慈しみ・・・慈悲なる愛だ・・・」


 そこには誰も居ないし、決して見捨てたりはしない。関係ないかも知れないが、俺は何処かへ飛ばされたような感覚が拭えなかった。もう少し、今一つ掴めない手先を動かせと自らを鼓舞するように近くへ向かいたい。

 静かにその一滴一滴が零れると虹の世界の遥か向こうの世界線へ、飛ばされた気がする。


「理解者が必要だ。寝付けないんだろう?」

「楽な生き方・死に方が存在する」

「それは?」

「ダーク・オブ・ホール・・・全てが刻まれ再生を促す」


 事後、彼は意味が分からないと叫んだ。そして自分が何者で何をすべきなのか理解を越えて知りたいと感じた。時間が“赦そう”とするが、自らを“許そう”とするものは壊れて別の形へと生成される。それが人工生命体たる由縁の導きだった。


「扉を開けて見てみるんだ」

「そこは冷たい?憎い?」

「本当の幻だ。実を言うと機嫌が悪い。言い掛かりだったらゴメンと言葉を投げ返すよ。そう―――、楽になれるようにね・・・」


 周囲を見渡すと、笑い声や心無い悲しみに溢れかえる。地上が面倒な形を仕留めるなら、矢はその上を飛んでゆくだろう。それも宇宙たる根源が時を刻む限り、赦される時がやってくると、天使は微笑んだ。

 「私がたすけてあげます」と悩みを吹っ切るような優しい声が脳裏へと刻まれ、記憶の遥か彼方へ飛ばしてくれる。


「意味など分からなくていい・・・そこは“冷たくて痛い場所”だったなら尚更、理解を通り越している・・・」

「最古の時代へ戻ったかのような感覚を得ただろう?そこから得られたモノは、“殺し文句”だと覚えておきな・・・」

「大切な時間が遮られる時がやってきた。親と呼んでいたソレは、事実と現実と果実だったに違いない。決して、壊れたのでなく、生まれ変っていたのだ・・・」


 唱えるようにそれは、言葉を連ねる。失った時間を取り戻すかのように、結託を促すようにも感じ取れた。自ら取り戻す、生命たる根源の方を宇宙から選んだのに、事後と事故の区別がつかなくなった。


「大きくなり過ぎたのは、決して悪い事ではない。変化をその身に刻んだのだ。小さくともそれは、成長の兆しとなるのだから、恥じる事も無い」

「天使を待っていたらアクビが出てくる。時が刻まれ世界線の中心からでた、更なる胎盤から現れると、キミは教えてくれた」

「その体が重いなら、軽くしてあげよう、と・・・伝えてくれたんだ」



 暗い中を突き抜けるように、外へ出れば赤い炎に見舞われていた。そこは岩盤を吹き飛ばし、車体をも砕いていた。両親は崩れていたのだから記憶にすらなかった。自分がどうして無傷だったのかも、誰も教えてくれはしない。

 もう少し、あの事前の所へ戻りたいと叶えたかった。「俺は何故?」という疑問すら分からなくなる度に、強張った手と足を縛りから解き放とうとした。



「思い出したかい?」

「ああ、思い出した。俺は・・・」



生物

魔法生物

危険生物


認定


もう、何もかも消してしまえ。


――――

 そこで「君は一体何者だ!」と彼は言った。それは先輩・後輩としての立場だが、魔導士たる闇の存在は、消しても再び現れて光の中へと研ぎ澄まされるのである。だから道彦は孝弘との絆の中を彷徨っていたに違いない。


「道彦、久しぶりだな。会いたかった」

「孝弘、俺はお前と共に導かれたんだ」



“アレ”さえ、無ければ―――な・・・。


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