20、事故前
モノゴトリー編のep畏怖のストーリーで、交通事故に遭う話とリンクしています。
魔法生物として産まれた臣子道彦にとって“親の愛情”という由縁がもたらされた時でもあった。それは後の世界線、インシュビ―が最古の世界線で力を失った因果関係を生み出す理由にもなり、闇の世界線でジグルとして№5創生主ニューファザー(父・明彦)の教えを受ける訳、天使マーサ(母・美知恵)の乳を飲む訳にもなった。
――――
「道彦、光は役目を与えてくれるんだよ、私もいずれ役目をお前に与える時が来る。つまりお前は自ら与えられた役目を徐々に人へ与えるだろう。消耗するかも知れないけど、決して枯れる事は無いんだよ」
「じゃあ、あの光は役目を終えるの?終えたら何処へ行くの?俺は嫌だなあ」
「ふふ、お母さんは嫌じゃないわ。嫌という事は好きになるモノが見つかる時なの。お爺ちゃんと、叔母さんに出逢えたように、あなたもチャンスに巡り合えるといいわね」
◇
役目、巡り合わせ・・・それを事前に伝えてくれたら全ての物事が早まる様に、時間が過ぎてゆく。道彦は、ほぼ毎日の様に両親との会話と学校での挨拶、勉学、親友との関りを書かせる事はしなかった。
それで、枯れることの無い愛を受け取ると再び、家路に向かって帰ってくる。そこで帰り道のスーパーで、ある一つの“素材”に巡り合う。
「これは・・・香草・・・?テーブ・ファイリー・・・」
勉学に足りないもの、それは匂いだった。愛を受けるのに頭だけで理解して居ては体にもしもの栄養素が足りない。そこで彼は栄養というか、香りを入れる工夫をした。それは母・美知恵も苦手な匂いだったが、父・明彦と道彦だけは安易に受付けることが出来た。それは靴下と靴垢の擦れて湿った匂いと同じであるが、それに付け加え甘い香りが漂った。
「あなた、臭いですよ?」
「うん、気に入ってる。魚の腐った香ばしい匂い・・・いいアテになりそうだね、道彦?」
「・・・ふぅ・・・す、はァ~~・・・疲れてたんだね、俺も・・・」
隣国のアーキ国では肉料理に欠かせない香草と聞く。その更に南の新緑ある大地に生息するガデラ族では白身魚と、その香草を練ると、甘くほろ苦くタンパクな料理へと変貌する。その旨さと云ったら本国での多国籍料理のトップ4に輝くほどだ。
「道彦、ジパンは広い・・・そして緑が多い・・・」
「どうしたの急に?」
「山を目指してみないか?」
「山?それは生命の誕生を表す?」
「ああ、歴史の最初に生命が宿る前、微細生物が山の頂上になる場を占領していたと、歴史文学の本書に載っていた。それはこのテーブ・ファイリーと同等の香りで、電磁波をも寄せ付けぬほどの“力”が与えられている・・・」
それは明彦の母方の妹に当たり、道彦にとって叔母に当たる人物だった。彼女は自然界の中で生き、定年を迎える以前に職と衣食住をそこへ委ねて来たのである。趣味はイラストレーターとも云われているが、植物博士でもあり、生命学理論に基づく資料作成のアシスタント等を行っている。
多忙で多趣味な博士としても有名な立場であるが、週3日間だけの就労時間で、アドバイスを与える役割として生計を立てていた。
―――静かだねぇ・・・
―――そうだろう?スリーピング・アウトという現象さ・・・
―――へぇ、初めて聞く・・・
明彦は狭い道をクルリと回る様にハンドルに身を任せていた。道彦は風に吹かれて、美知恵は手軽な本を読みながら、自然の空気を堪能していた。そして、付いたのは・・・
「ようこそ、明彦。それに美知恵さんに・・・道彦ね?」
「やぁ、久しぶりだね叔母さん・・・」
「暫くぶりですね、お変わりなく・・・」
「は、初めまして・・・“大”叔母さん・・・」
「あは、叔母さんでいいわ。道彦?」
庭には様々な作物、それに香草が在った。そこにはテーブ・ファイリーの香草植物が3種類ほど在ったのだ。一つ一つ、香りを利き分けていた叔母だが、それを明彦達にも匂わせていた。美知恵を除いて・・・
「庭にはライトーブホール草というのがあってね、少し暗くすると虹色に近い光を放つのよ?夕方から夜になったら見てみるといいわ・・・」
「うん?でもこれは、眩暈の症状が現れるから、あまりお勧めしないって叔母さん言ってたんじゃ?」
「いい子は眠る、強い子は泣く。そんな言い伝えを作って居た人類が、この地に眠るという・・・そんなお話も創ってみたの」
宇宙には何らかの不自然な自然生命体が降りてくるという。それが地上であるにも、宇宙空間の次元にも関わらず、在らぬ方向へと沿ってゆくと云われている。それは宇宙が時と歴史を刻んだ場合、波打つ意志がそのように創ったとされる。それを引き寄せるべき解きたる“ホール”と呼ぶ!
「ああ、眩しい・・・」
「あの山でしょう?」
「うん、太陽よりも強い・・・」
「あれは、神が下した“審判”と呼ばれる気象変化なの。あれに触れるとあらゆる物体・気体・元素・水素が分解を始めて遺伝子をも運んでゆくというわね・・・ささ、目が疲れない内に朝御飯を食べるといいわ・・・」
「はぁ~い」
◆
このような会話が夏休みの間続いた。“叔母”との科学的かつ、自然学的な要素をあしらえた、生命学理論を学び、眩くも光る生命の輝きによって闇を楽しむ時間を通り過ぎ、そしてあの儚くも醜く、つたない生命たる頂きによって分解・再生が始まるのである。それは、山をも覆う。
―――ねぇ、あの光は何なの?―――




