10、異歴と孝弘・1
俺は19歳の頃、ヒカリノキョウカイへ入る前に、生体理論と法律をかじった事がある。
そこに物理と化学反応が起きる事、起きた事から方向性を見出さなければ全てが無駄になる。だから法律をかじった。よく分からない所があるのに分かろうとするのが俺の特徴だから。生体理論も同じように如何に爆破され、爆破された部分が再生するのか知りたかった。
万が一俺以外の大切な人が人工的な措置を受けられる時が来るまで、科学とこの体格の良さを活かしてやる。そうじゃないと親父・アイツが預言を残し死んだ理由が分からなくなるからな。
「もしも私が孝弘の元から居なくなったら、選ばれたのだと思ってほしい」
「もしも俺が道彦の元から去ったなら、それは預言に選ばれたと考えろよ」
法律とは何時になく成功と裏切りに、何れかの審判を下す。それにしても誰かが居なくなった場合に済ます様に生き永らえると、新たな法律を下そうとしてしまう。俺が親父を空港の爆破事件で失ったように、そして道彦のように、両親が事故を起こし亡くなったのに対し、正当な判決を下さない者も居る為に、長い期間はそこへ囚われて、人生の幾つかを失う事すらあるのだ。それを覚悟で挑まなければ、法で調律を立てる事さえ厳しいという。
「孝弘、お前そこまで知って居るなら、研究者の道よりも正義を下す裁判官へ就職してみてはどうだ?」
「表と裏に遮られて息苦しい時代を送るだけだ。そんなのに構っていたら祈りなんて来ないだけだぞ、現・研究者さんよ」
長い時間、調律を保てずに誰かを宛にしようとすると、逆に裏切られた内容に変更される。そんな時こそ代理人を立てる必要が在るが、代理人とて一人の人間であり、どちらが正しいという事を判断し兼ねる。
俺にとって法とは時間の取引であるために、あまり金銭的な内容とは異なると信じて居る。もし、何らかの損害を被ったのなら保証金を支払わなければならないが、保証も出来ぬ命のやり取りなら、道彦の方が詳しい。こうして異歴は成立された訳ではない。
『孝弘、私からすると実は、間違いは正しく説明され直され、正しくは誤りの箇所が増えていた事に、延々と調べられる研究・合算のテーマになる事を意図している』
『親父?』
辿り着くまでの正義と正論という題目・テーマ。過去に思い出に浸り、その思い出に時を失った少女が居る。その少女は拳銃を所持していたが、正当防衛とは見なされなかった。記憶する限りの誤りと訂正。どちらかと言えば凶器殺人の首謀者として検察・審査されたのである。そこはもう人形と機械の世界。何故なら相手は自殺したのでなく、殺害された方だったとされる。
――――この様にして生命の補償を行うには、異端なる信教が必要な場合があり、それが普通であっても普通では無いと認められたならば、人生の大半を失うといっても過言ではない。だから、道彦を失う事は、孝弘を失う事に等しいのだと彼は語っている――――。
「それなら、彼女も人工生命体に生まれ変わらせたらどうだろう?」
「ダメだ道彦。お前は医術を備えて何れ失敗するぞ、そんな事言っちゃダメだ、」
確かに、失うと言えば異端なる人工生命体に生まれ変わらせれば、失った時間と生命と記憶を維持できるかもしれない。しかし、その価値観だけは変える事の出来ない話になるので、専門的な意見が連ねられなければ、どれが正解で不正解なのか判断し兼ねる。
『生命維持には根本的な科学の発明が、ようやく生命の頂きを表すかどうかに掛かっている。そこは冷たい大地かも知れないし、説明しきれない宇宙の根源に至るかも知れない・・・すると君は事件と法律との調停を可能にするのかな?』
『親父、目を覚ませよ・・・、寝言は飯を食ってからでいいよ・・・』
記憶を維持するという事は、失った魂と意志を結合させる技術であり、本人その者の、魂と意志を尊重させる技法ですらないので、孝弘は畏怖なる出来事が起きる事を予測してしまう。そういう意味では父親と似てしまったのかも知れない。
「歴史は変わるんだ。そうやって時代も変わってきた。なのに、お前は失った事を再び変化の兆しに入れて復活させてしまえば、変化をも恐れぬ歴史と時代がやってくるとでも思っているのか?」
「酔い過ぎだ。そういう意味で俺は研究していない。法的にどこまでが許容範囲なのか、改めて実験する場面で気付かされてしまうんだ」
俺は、実際はどうなのか、と熱弁する。しかし道彦は事実は捻じ曲げる事の出来る、と判断する。それが意味ある異だと、嵩み継がれた意志とは異なる方法へと変化することは、失うより大切なことだと二人は感じていた。何れの道に転んだとしても再生する時に、憂いなき事が魂に宿ると、人工生命体にも貢献するのだと意見を合わせていた。




