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11、異歴と孝弘・2

 法と未来、過去と法、いずれも騙そうものなら、消してしまえと判断する人物も居たほどで、そこで話にある少女は行き詰っていたのだと考えを巡らせていた。

 俺はそういった話を道彦と繰り返す。


「それが、子分の命令で上司が退職する由縁になるんだな」

「あぁ、そうだ。ミニー・ハラスメントは海外でも有名なんだよ。だから少女が拳銃を持ったとしても、再犯はあり得るとして希望は持てなかったと泥を塗る。それも法だったという訳だ。お前の両親の事はお悔やみ申す―――グビッ」


 法・・・。時に縛られる内に、詩集を創る人物もいた。それが元で判断が変わり、間違まごうなき判定と下される事もあった。そこで、新たなる審判が下された。それは3メートルにも及ぶ建物に血痕を残した事で、血の誓いを入れたという婚姻例だった。

 それはお互いの血族の証として人生を送る事を契約したのと同じ、効果を示すと云われていた。それは巨大な門を叩く勢いが在った。


『効果とは研究と実験を嗜むものだ。なァ孝弘、君は時間の許す限り友人と飲む機会が在るかも知れないし、無いのかも知れない―――』

『子供に分かりやすく説明してくれ・・・』


 審判と効果が対立する場合、お互いの血を流す事を約束に、唇を噛みあうのだと話される。すると、血を流した分だけ絆が深まり、記憶に強く残るとされる例も俺は読んでいた。道彦がボケるなら、俺もボケてみようとしている内に、一直線な話を巡らせていた事に気付くと、道彦が塞ぐように返答をする。

 お互いの意志を認知するという意味で法とは、固い絆から解れるように魂と意志が重なり合うモノだという事を、かじったのである。


「そういや、異歴って何が語源なんだ?」

「異端、畏怖、異教、異文化、異文明・・・全て意が示されるという意味合いで付けられた歴史だと俺は社会通学で習った事が在る。道彦、全てお前に当てはまるからこれ、勉強しとけよ」


 道彦は俺と異なり、両親を失っている。その事でどのように避難できたのかは警察や消防士によって出来たと言われていたが、自身に何が起きていたのかは未だ研究中である。車体に3メートル級の凹みが出来て居たり、足跡があったのに、全て岩石が落ちて散らばったと解釈されている。


『記憶だよ』

『記憶・・・?』


 事故によって俺の親父も、道彦の両親の命は失われたのに、道彦は“怪我もしていない事”を誰も指摘していない。それも異なる事か、歴史か・・・誰も知ろうとはしなかった。そういう二人だからこそ、ヒカリノキョウカイへ入社出来たのだろう。生命に従って―――。


「今日の朝は光が眩しいモノだった・・・。ところで道彦、そういえばあの試作品はどうなったんだ?」

「ああ、覚えていたのか。遂にライト・オブ・ホールが完成したんだよ!」


―――じゃあさ、聞くけど、お前の言っていた光の束の現象はどんな風に説明するつもりだったんだ?俺にも教えてくれよ。宇宙から運ばれてきた線で出来た熱量だとか、太陽光線が入り混じった網状の束だとか、お前は色々と研究してきた筈だが、黒い束の話と混合していたのか。それとも、道彦自身が事故に巻き戻されて法に求める証章が挙がらなかった事に、角が立ってしまったのか?何にせよ、俺達は刑事じゃねぇ。忘れることの無い事実なんだよ。


―――あぁ分かっているよ、孝弘。まんではつかんで、消しては残して、質しては乱すのに、残るのは成果だって事は重々、理解している。そこに焦点を当てられなかったら、今頃俺は研究者なんかになって居ない。数式だとか自然なる生命の頂きからまさか山から光の束が広がって岩陰に隠れていたなんて事は、誰も信じちゃくれない。実は車内の中に居たのに、何故そこに飛ばされていたのか俺も納得いかない。

それはどうしてなのか、結果が追い付かないんだが何故だ。


“あらゆる自然・科学の生命理論から理解を通り越していたんだよ”

“だから人を救う事を決意したんだ。畏怖なる出来事・・・忘れたりはしない!”


 ―――理解と畏怖・・・随分、長い時を過ごした。そうして父・治具流との“波長”と呼ぶべき対話も不十分だが、それでも交流を深めたように感じられた。

 法と科学と宇宙に沿って、それは何かを言い表したい衝動と交差がこうも起き得る。

 それで尚も、時は過ぎ去り親父は再び仕事へ向かってしまう。そんな風に過ごしていたら、こんな事を言い始めた。


『私もそうして、両親を失った・・・永い記憶だった・・・孝弘、もしも私が居なくなってしまったら・・・“お前”は友を庇ってあげられるかな?』

『うん!』


―――いい子だ―――



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