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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
8/8

第9話 真夜中の無謀な侵入者



 真夜中12時 ----


 学園の正門の前で黒ずくめの2人の男が立ちすくんでいた。


「兄きー。どうやって侵入するんですか?」


 長身の痩せこけた男が、隣の太った男に聞いた。


「うるせい!おまえも少しぐらい考えろ!」


 男達は考える。

 しかし考えても、前にそびえ立つ壁は変わらない。

 結局、そのまま登ると言うことに決まった。


 一応装備は一人前だった。

 それぞれ4つの吸盤を手と足につけ、ぺたぺたと登って行った。

 15mも登ると、二人はてっぺんに着いた。

 上にはやはり鉄条網がはりめぐされており、それを取らなければ進入は不可能だった。

 小太りの男が言った。


「ペンチ」


 痩せこけた男が答える。


「へ?」


 しばらく沈黙。

 再度言う。


「ペンチ」


 そして再度答える。


「へ?」


 小太りの男の肩が震えているのがわかる。


「ペンチをわたせと言ってるのだ!」

「ペンチなら下です」

「取ってこい!」

「あー、ずるいですよ。一人だけらくしようとして……」


 小太りの男はただ、じろりと痩せた男を見た。


「わっ、わかりましたよ。行けばいいんでしょ。いけば」


 とぶつぶつ言いながらペンチを取りに行った。

 これを取りに行くのだけで15分は要すると言うのに、彼らはこれを初めとして、数十回忘れ物を取りに行った。

 結局、塀一つ越えるのに、3時間かかった事になる。


 そして、どうにか、学園内。

 ここは校舎と運動場の境にあたる所で、まわりには、すこし並木があった。


「一応ターゲットの確認をしよう。写真」


 と太った男が言うと、痩せた男は胸のポケットから写真を取り出した。

 胸についているライトをつける。

 それは綾の写真だった。

 写真の綾は普段の時のあの可愛らしい笑顔で、にっこり微笑んでいた。




 情報部、部室 ----


 山というテレビが置いてある、そんなに広くない部屋の中。

 今日の監視として二人が残っていた。

 綾と長々と話してしまい、罰としてやらされている未杉と、その後輩Aである。


「部長、どうやら侵入者のようです」


 コンピューターの画面をみながら、Aは淡々と言った。


「あん?」


 といって今日の出来事が書いてあるレポート用紙を読んでいた未杉が、その紙を机に置いて、Aの方に近付いて行った。


「どこだ?」


 と言って未杉はコンピューターの画面を見た。


「35ブロックです」


 Aは画面でている2つの点を指さした。


「いま切り替えます」


 というと画面が赤外線カメラにかわった。

 二人の男がくっきりとあらわれる。


「うちの学園の者でも、関係者でもないようです」


 Aはとなりの画面出てくるデータを見て呟く。


「んじゃ追い出すか……」


 未杉は頭をかきながら、各クラブの予定の書いてあるディスプレイの方を見た。


「いま起きているのは……。天文部と制作部か……」


 Aの頬に冷汗が流れる。


「ぶ、部長。まさか……」


 未杉は横にあるプッシュホンらしき物を取ると、プッシュを押した。


「もしもし、こちら情報部。あっ、斉藤?侵入者を発見したんだ。ブロックは35。数2人。適当に放り出して欲しい。以上。よろしく」


 といって電話を切る。


「ちょっと、かわいそうじゃないですか?」


 勿論、侵入者に対してである。


「眠たいから、きげん悪いの」


 といって、未杉はひとつ大きくあくびをした。


 制作部 ----


 朝、御影によって壊されたマリオもすっかり再製され、部室の中で色々動き回っていた。

 これは半自立型と呼ばれるもので、命令を出さなくても自分で考え行動できるのである。

 ちなみに、このマリオは菜緒によって新しく命名された。


 命名 --- 阿修伽あしゅか---


 6本の腕という所から阿修羅というのと、全く関係のないアショカ王と飛鳥をたしたものである。


 さて、初登場の斉藤徹さいとうとおる

 ちょいちょいとはでてきたが、一応登場は始めてである。

 この制作部の部長。又の名を変態……とは言われないが、ともかく変わった男だ。

 かなり大きいが、痩せているし、すこし背中がまがっているので、そんなに大きくみえない。

 顔はべつにマッドサイエンティストのようには見えない。

 ごく普通の高校生の容貌をしている。


 白衣を着て、机に腰掛けて、時計と話していた。

 やがて時計と話し終ると、これ以上ないというぐらいの笑みをうかべていった。


「実験台がやってきた」


 誰もが背中に悪寒を感じそうな声だった。

 それを聞いて、美那や菜緒も喜んだ。


「ほんとですか?」

「35ブロックに2人の侵入者。撃退せよとの命令だ。菜緒!」

「ハイッ!」


 菜緒は横にずらしておいたマイクを口元にもって行き、阿修伽に指令をだした。


「コード32513F、指令。ブロック35へ移動」


 というと、いままで遊んでいた阿修伽の動きがとまり、計算を始め、そして動きだした。


「行ってまいります!」


 明るい声を出して阿修伽は出て行った。

 1秒で、阿修伽の姿はは見えなくなる。

 そこで部長が一言。


「だれだー、女言葉を教えた奴はー」


 さてそのブロック35。

 二人は地図で確認すると、移動しようとした。

 そのとき、闇のむこうに光る二つの点があらわれた。


「兄貴、なんですか?あれ」


 といって、その点を指さす。


「え?」


 と言うと、二人は恐る恐る、少し近づいてみた。


 制作部部室。


菜緒:「Ready…………。Go!!」


 35ブロック。


「うわー、ゆ、幽霊だー」


 といって、二人は逃げた。同時に阿修伽が追う。

 結構二人の逃げ足は速く、阿修伽はなかなか捕まえられない。

 といっても時間の問題だった。


 二人は綾の誘拐が目的だったので、武器はナイフしかない。

 とうとう端に追い詰められた二人は、無謀にもナイフで攻撃をしかけた。

 阿修伽は結局2本の腕だけで始末が終る。


 制作部部室。


「作戦完了、確認。ごみ箱にでも捨ててきて、戻ってきてらっしゃい」


 菜緒はマイクを横にずらす。

 一息ついて、部長にウィンクをした。

 情報部部室。


「終ったようです」


 Aは相変わらず画面を見ながら言う。


「連絡してから1分30秒か。けっこう速いな」


 といって未杉はまたあくびをした。


 秋の夜長。

 学園は静かであった。



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