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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
6/8

第7話 病院


 学園内の病院のある一室。

 優雅な個人部屋に綾が寝ている。

 付き添いは御影と沙羅である。


 綾は寝ているし、沙羅と御影の口論もあまり面白くないので、前の事件の説明の時間にします。


 まず制作部の実態。


 知っている人は知っている、M-77。


 結局、制作部というのは現実にない漫画や映画に出てくるものを、面白そうだと言って本当に作ってしまうクラブなのである。


 思い出してみよう。


 制作部に入った時に何があったかを。


 それで結局今回はM-77とめでたく決まったわけである。


 さてでは次にM-77が狂った原因であるが、勿論プログラム中にバグ(間違い)があったわけなのであるが、制作部のあほ部長が作った代物である。少しぐらいおかしくても、立派に作動する。


 さてでは、どうして暴走したかと言うことになるが、これまたできたら思い出して欲しい。


 テスト担当は誰だったか。


 そう、芹沢姉妹の妹の菜緒である。


 彼女には特技がある。


 どんな物でも、バグが少しでもあったものなら、すぐ暴走を引き起こしてしまうという物である。


 今回もテストのため菜緒に作動させた所、見事暴走したのである。


 ちなみに今までの学園に起きた事件総数1351件。


 そのうち菜緒が関わっている数は253件。


 個人件数では、単独トップとなっている。


 これが菜緒に隠された特技である。


 その度に御影が時計で呼び出されるのだ。


 ちなみにこの時計、これも制作部が作ったものであるが、これが学園内の電話の役目を果たしている。


 各自一個持っており、無線部を通して行われている。


 では、話をもとに戻します。


 12時31分25秒 -----


 綾が目を覚ます。

 そのとき御影はおらず、沙羅はそのとき本を読んでいた。


「あれ、柳瀬さんも死んだんですか?」


 これが、綾の第一声だった。

 思いっきりイスからずっこける沙羅。


「あら?ここ……」

「天国ではないみたいね」


 沙羅はどうにか立ち上がりながら言った。


「と言うことは、ここ地獄?」


 綾は真面目に言った。

 沙羅は再度ずっこける。

 廊下からも笑い声が聞こえた。

 沙羅は再度立ち上がる。

 綾はいかにも不安でいっぱいという顔をして周りをきょろきょろ見ている。

 ちょうど、その時外から白衣を着た看護師が入って来た。

 少々笑っている。

 それを見た綾は、漠然だが意味が飲み込めた。


「しょっくじーのじっかんーです!えーんじょーさん!」


 変わった所にアクセントをつけながら、看護師 --- 水無月槙みなづきまきは食事をトレイに乗せて入ってきた。

 足でドアを蹴って閉めると中に入っていき、綾の前にトレイを一つ置いた。

 沙羅の方にも一つ渡すと、椅子を出してきて、それに座った。

 髪を頭の所で結ってあり、今まで出てきた人物からみると少し大人っぽい。

 23ぐらいに見えるが、いま20だそうだ。

 なかなか美人。


 さてでは綾の方を見てみよう

 気絶してしまったため、昨日から何も食べていない綾はじっとお盆に乗った食事を見つめている。

 まるで蛇が硬直状態のカエルを見据えているようであった。

 この(ま)は危ない。

 こうやって意気込むと、いっぺんに……。


 ほらやった。


 綾はもの見事に、いっぺんに食べ出した。

 恥も外聞も捨てという感じだった。

 しかし実際は食事しか眼中になく、二人の存在など忘れているだけであった。


 きっかり2分32秒。


 綾は食べ終り、大きく一呼吸つく。

 沙羅は呆然と今までの綾の姿を見た。

 まるで二重人格でもみるような目で。

 槙さんの方は、美味しく食べてくれたのを見て、喜んでいた。

 少し観点が違う。


 さてまた綾の方を見てみると、

 落ち着いた綾は何か勘違いをしている事に気づいた。

 そして両手を交互にみる。そして布団をどかし両足を見る。


「生きてる……」


 大爆笑。

 沙羅と槙は病院中に聞こえるぐらい大声で笑った。

 その時の綾の格好は悲惨だった。

 バサバサになった長い髪。口の周りにはさっき食べたハンバーグのソースがついている。

 うつろな顔に、悩んでいるため焦点の合ってない目をしていた。


 沙羅と槙がしばらく笑っていると、綾ははっと気づき、耳まで真っ赤にして下を向いた。沙羅は一生懸命笑いをかみ殺し、くっくっと笑う。

 槙はくすくすと笑いながらフキンを取り出し綾の口の周りをぬぐった。

 やがて沙羅はまた食べだしたが、まだ少し笑っている。


 槙は微笑みながら血圧を測るベルトを綾の右手につけ、セットすると逆の手の脈を測りだし、残った手で綾の髪をくしでといた。

 なかなか強引であるが、綾はなんとなく気持ちがよくなりそのまま任せることにした。

 脈は20秒、血圧は1分で調べ終ると紙に書き込み、くしで頭をとかすだけとなった。

 ゆっくり、ゆっくりとといていく。綾はそのまま、また眠りそうだった。


 4~5分もすると沙羅が食べ終った。

 大体同時に槙もとかし終る。


「さて、一応体に異常はないから、いつでも外に出ていいわよ」


 槙はそう言いながら、食べ終ったトレイを片付け始めた。


「昨日もここで寝て、この人に看病してもらったのよ」


 沙羅は満足という顔で綾に言った。

 綾は昨日の事を思い出し、槙を見た。


「二度目なんだけど、覚えてないわよね」


 槙が両手にトレイを持ちながら言う。


「あっ、そうなんですか。たびたびご迷惑をおかけしてすみません」


 綾は深々とおじぎをして謝る。


「だって、お世話する所でしょ? ここ。気にしなくてもいいわよ。できたら、またいらっしゃって」


 そうは言われたが、綾としては出来ればそうならないことを願うしかなかった。


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