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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
5/8

第6話 BLACKMAGIC



 沖は途中でどっかに行ってしまった。

 空の旅が終わったら迎えに来る、ということだそうだ。


 3人は滑走路に出た。

 広々とした滑走路に風が吹き抜ける。

 少々寒い。

 少し歩くと2、3人が整備しているヘリの前に着いた。

 どうやらこれに乗るらしい。


 AH-64アパッチ。全重量9.5t。30mm機関砲搭載。


 ヒューイコブラと並ぶアメリカの軍用ヘリである。

 全体的にスマートにできているが、両側についた武装が重々しい。

 全体は黒に塗られており、★のマークが二つついている。

 一条が先に歩き、整備士と何か2、3話すと帰ってきた。


「調子いいそうだから、いいよ。乗って」


 と一条が言うので、三人はアパッチのドアの所に行った。

 一条が高い位置にある重そうなドアを開けた。

 中には、二つしかシートがない。

 そう。ヘリは二人乗りだったのだ。


「それじゃ、ごゆっくり」


 と言ったのは一条の方だった。


「さあ乗りましょう」


 御影は綾の手を引っ張った。

 綾は無言ではあるが、必死に抵抗した。

 顔がひきつっている。

 しかしそんな事を気にする御影ではない。

 一条はちょうど後ろを向いていたので知らない。

 結局、綾の抵抗もむなしく、御影と二人で乗ることになった。

 御影は、一つ一つ計器を調べていく。

 しだいにメーターが動きだし、ランプがいくつかつきだす。

 ローターが回る音が聞こえてきた。

 綾にとってこの時間は、死刑前の十三階段をのぼっている気分と同じであった。

 実際その通りである。

 今の綾は神に祈るよりも、あきらめの気持ちの方が大きかった。


(お父さん、お母さん。もうすぐそこに行くかも知れぬ私を、お許し下さい……)


 などと綾が心の中で祈っているなど、御影はみじんも考えず、やがて無情にもヘリは上昇し始めた。

 凄い勢いで上昇はしたものの、大した揺れもなく、綾が心配したほど荒い運転ではなかった。

 実はちゃんと説教に従っているからなのだが、綾は寝ていたので知らない。


 やがて一条が点のようになり飛行場全体が望めるようになった。

 そして今度は飛行場も小さくなり、この学園が全部見えるようになると、御影は上昇を止めた。

 快晴のため今日は富士山がよく見える。


 学園の構成はこうだった。

 北にクラブボックス、東に校舎と寮。西に飛行場、そして南が門である。

 他に、周りの山と、北東にある湖も学園の範囲だそうだ。

 高度からいくと、かなりの高さのはずなのに、学園全体を望むのは難しかった。

 御影が一つ一つ親切に教えてくれる。

 綾は段々気が楽になり、空の旅は楽しく終われそうだななどと思った。少なくとも、ピーという高い機械音が聞こえるまでは……。


 最初、何か故障を知らせる音かと思ったが、そうではなかった。

 御影は左腕にはめてある時計を見た。

 そして左のボタンを押す。


「御影か?」


 時計が聞いてきた。


「その声は、斉藤か!?」

「あたり。緊急コールだ。至急運動場に向かってくれ。安心しろ今日は単なるロボットだ。武装はしていない」


 時計から聞こえてくる声には全く危機感というものがなかった。


「ごまかすな。かわりに何がついている」

「わかる?やっぱり」

「わからいでか」


 御影は何はともあれ、降下を始めた。

 ここらへんから綾の存在を忘れている。


「お前、(BLACKMAGIC)ってマンガ読んだことあるか?」

「?、いや……」

「じゃ、始めから話そう……。名前は<マリオ-77>。見かけは全く人間と同じだ。腕が6本ある事を除いてな。さっき言った通り武装はなし」


 高度3000m。


「かわりに動く速度がはやい。人間の約10倍だ」


 高度2500m。


「装甲は<HIGHMETAL2>。今度新しく開発したやつだ。44マグナムでも撃ち抜けん」


 高度2000m。


「一応弱点はつくってある。向かって左の胸だ」


 高度1500m。


「爆弾は使うな。燃料に核融合を使っている」


 高度1000m。


「熱や音、動くものに反応する。無抵抗の物には反応しない」


 高度500m。


「一応、音ダミーをばらまいて、運動場の真ん中におびきだしてある」


 高度200m。


「後は好運を祈る。GoodLuck!」


 ヘリは下降を止め、水平方向に飛び始めた。

 高度10m。

 下の土が砂嵐のように舞う。

 砂漠のような運動場に黒い点が見えた。

 しだいに御影は速度を落としていった。

 やがて、それが目的の物と分かった1km前で着陸する。

 ローターがしだいに止まっていった。

 M-77がローターの音に反応して、こちらを見た。


 御影はいつもの皮手袋を確かめると、「せいっ」と言って正面の窓を正拳で叩き割る。

 パキッといって、アパッチの前面の防弾ガラスがいとも簡単に割れた。

 しかも局部的に割れるのではなく、全てのガラスが崩れ落ちる。

 M-77はすでに敵と認め走ってきた。


 距離600m。


 御影は服の中から銃を取り出した。

 御影愛用の<MX-4>。制作部で注文して作ってもらった物である。

 部長に設計して作らせたものは、破壊力、精度とも化物じみていたが、残念ながら人間では撃てない。そこで美那と菜緒に改良させたものがこれである。

 現在最高の銃と言ってもよい。

 御影はカートリッジを取り出し弾を点検する。

 20発しっかり入っていることを確かめると。御影は銃をマリオに向けた。


 距離200m。


 一発撃つ。

 遥か彼方。まだ黒い点でしかない敵に対し、御影は正確に左胸に弾を当てる。

 しかし、真ん中の2本の腕でブロックされ、弾は胸に当たることはなかった。


「ふむ」


 などと言って。拳銃を回して遊ぶ。


 距離100m。


 あいかわらず、何の行動も起こさない。


 50……30……20……


 そして10mの所でマリオは飛んだ。

 向かっている所は分かっている。ヘリではない。弾を撃った御影に向かってだった。


 5…4…3…2…


 そして1m。攻撃のため6本の腕が開く。左胸に隙ができる。

 そして戦闘は終わった。

 マリオを蹴飛ばして外に放ると、御影は弾の点検をしだした。

 そして銃を元の所にしまう。

 まったく完璧な動作だった。

 全く無駄がない。ここまでは…………

 御影は何かを忘れていたことに、はたっと気が付く。

 と同時に冷汗が流れた。


「しっ、しまった」


 今度は御影が顔をひきつらせる番だった。

 綾の座っている席をそーっと見る。

 めでたく3度目の気絶。


「また、やっちまった……」


 眠り姫 --- 綾はすっかり死んだという顔をしていた。



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