表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
3/33

第4話 二日目の朝



 女子寮前 --- AM7:30


 初めての女子の名前からとったといわれる白百合館の端にあるバイク置き場にバイクをしまうと、御影は近くの階段を上っていった。


 中にはちゃんとエレベーターがあるのにあえて非常階段で上がった御影は、6階の所で止まり、外から開かぬはずのドアを奇妙に開けると鼻歌まじりに中に入っていった。


「えーと603、603……」


 まだ朝早いせいか、廊下にはほとんど人がいなかった。


 10mもいくとすぐに603号室がみつかった。


「おっ、あった」


 603 柳瀬沙羅、炎城綾と書いた札を見ると御影は軽くドアを叩いた。


 トントン


「あっ、ハイッ」


 綾らしき声がすると、やがてドアが開いた。


「おはよう! よく眠れた?」


「あっ、えーと御影さんでしたね? おはようございます」


 綾は笑顔と共に深くおじぎをした。


 おもわず御影も深くおじぎをする。


 今日、綾は茶系統のチェックの長袖によく似た色の長いスカートをはいていた。


 まだ少し眠そうではあるが、外に出る用意はすませたようだ。


「えーと、ではこの学園をご案内するけど、用意は……。いいみたいだね」


「あっ、ハイッ」


「じゃあ、行こう」


 御影が先に歩き出し、綾がその後を追った。


「えーと先ず何から話したらいいのかな……」


 まっすぐ延びた廊下を二人で歩き始めると、まず御影が話しかけてきた。


「あの、叔父さん…………じゃなくて校長先生はどこにいるんですか?」


 昨日合った事は合ったが、まだまともに話もしていない。


 できたら少し話したいし、聞きたいことがあった綾は御影にたずねた。


「あっ、校長? 今たしかニューヨークだったかな、一ヶ月ほど帰れないとか言ってたなー」


「いっ、一ヶ月ですか?」


 エレベーターにつくと御影は下のボタンを押した。エレベーターはすぐ来た。


 チンという音とともにドアが開く。


「しょっちゅうだよ、そんなこと。どうぞ」


 御影は綾に先に中にはいるようにすすめた。


「あっ、どうも」


 けっこう広いエレベーターにのると、御影は1階のボタンを押した。


 軽い浮遊感のあとすぐに、圧迫感。


「えっ、もう着いたの? たしか、私達いたの6階でしたよね……」


「早いでしょ」


 これが最新の設備であり、また、それをここの生徒が造ったと言うことを綾は知らない。


 御影は笑いながら、外に出ていった。


 二人は寮の外に出た。


 外は朝日で明るかった。


 吐く息の白さが、その時の寒さを物語っていた。


 明けたての、まだ少し暗い空と明るい空との色彩が見事に空に彩られていた。


 御影は軽くのびをする。


「んー、いい天気、今日はあったかくなるかなー」


 それに続いて綾も外に出る。


 空を見る。


「ホント、いい天気!」


「さて」


 御影はさっきとは違う置き場に行くと、さっきと違うバイクをとりだした。


 さっきのは白のFZ、こんどのは青色のTZRだった。


「えーと、綾さんはバイク乗れる?」


 意外な質問に少し驚いたが、そのあとすぐ首を激しく横に振った。


「あのー、ふつう高校じゃバイクに乗ってはいけないのではないのですか?」


 御影は始めからついている鍵をまわしエンジンをふかした。


 調子のいい音とともに、激しく排気ガスがでてくる。


「あっ、ほんと? そりゃ知らなかったなー…………ん? こりゃあ少し改造してあるな……」


 後半はどうやら自分に言っているようである。


「知らなかったって……」


「大丈夫、免許有るから」


「あの、失礼ですけど、年齢はおいくつ……」


「17。免許取ったのが16。それじゃ、どーぞ後ろ乗って」


 綾は恐ろしげに後ろに乗った。


「これ御影さんのバイクですか?」


 御影は胸のポケットからサングラスを取り出し、かける。


「違いぃー、ます!」


「す」を合図にTZRは急発進始めた。


「えっ? きゃあァー!!!」


 それから3分間、綾は悲鳴の連続だった。


 御影はそんなことは気にせず、校舎の壁を一つ、二つとよけて行った。


 やがて運動場に突入。


 校舎と運動場の境にある、アスファルトの道路に出ると、やっと御影の暴走も終った。


 当分直線コースが続く。


 運動場では、もう運動部が練習を初めていた。


 広い運動場いっぱいにひろがって、野球部、陸上部、サッカー部、新聞部が走りまわっている。


 空には、銀色の胴体を光らせたF-15が飛んでいた。


 戦闘機だけあって速いが、いかんせん音がうるさい。


 しかし、すぐにどっか行ってしまった。


 ちょっと、シュールな光景であるが、ここでは日常茶飯事である。


「綾さん、もう大丈夫ですから、できたら手ゆるめてくれません? ちょっと息がしにくいもんで」


 御影は、綾のベアーハッグに耐えかねて言った。


「あっ、すみません」


 といって素直な綾は、手をすべてはなした。


 スローモーションで綾が後ろに倒れて行く。


 綾は御影につかまることも忘れ硬直状態に落ちいる。


 急に全く感覚がなくなったので御影は後ろを振り向いた。


 コンマ1もかからずに、事態を理解し綾の腕を掴む。


 綾の腕を前のように掴ませる。


 硬直した綾の手は、まっすぐにのびきっていたが、無理やりまげて掴ませた。


 きっかり30秒間、沈黙が続く。


 そして、綾の悲鳴。


「きゃーー!!!」


 そして、御影にぎゅっとしがみつく。


 御影はしかたないかなと思いつつ、左に曲がる。


 さらに強くしがみついてきた。


 ぐぇ。


 ちょっと、きつい……


 とかなんとかいう調子で10分。綾にとっては地獄の10分だったが、一応目的地には着いた。


 さて、そこは学園内である。


 当り前のことだが、先にこれを書かないと、勘違いする人がいるかも知れないので、先にことわっておく。


 左側、数百mのところにコントロールタワーがある。


 そこから一直線に滑走路が広がり、種々の飛行機がそこにはあった。


 そう、そこはまさしく飛行場だった。


 広いだけの殺風景な飛行場のアスファルトの道を通り抜け、コントロールタワーに向けて走り抜ける。


 御影は人間には大き過ぎる格納庫の前でエンジンをきった。


 広いだけの空間に、エンジンの音がわずかに響く。


 御影は降りようとしたが、降りれなかった。


 そう、綾がシートベルトの代わりをしているからだった。


「あのー……。着きましたよ」


「ほっ、ほんとう?」


 少し声が振るえている。


「もう止まっているでしょうが」


 やがて、恐る恐る手をはなす。


 顔がひきつっているのが解る。


 余程恐かったのだろう。


「ほら、止まっているでしょう?」


 御影は振り返って優しく声をかけた。


 これがいけなかった。


 緊張の糸が切れた綾は、またそのまま後ろに倒れていった。


 御影は後ろに回って受け止める。


「おいおい、大丈夫か?」


 御影は綾の顔を覗こうとした。


 スースー。


 綾はすっかり寝ていた。


 しばらく沈黙。そして御影はつぶやいた。


「あーあ。寝ちゃった……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ