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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
14/22

第16話 綾救出



 ヴェルサイユ宮殿あたりを思わせるような、豪華で広い部屋で綾は寝ていた。

 壁には億単位の値段のつきそうな絵が掛けられ、なんでもないように彫刻が立っていた。

 真ん中あたりにテーブルがあり、壁にそったところに屋根付きのベッドがあった。


「んーん……」


 綾は目を覚まし、体を起こし、大きく伸びをした。


「あれ、ここ……」


 綾は見慣れない風景を見渡した。


「ようこそ、わが屋敷へ」


 はっきりとした、低くよく通る男の声がした。

 男は、テーブルの横のどっしりとした椅子に座っていた。

 校長とは違い、どっしりとした、威厳のある顔立ち。

 60前後ぐらいだが、スーツを身にまとい、どこかの実業家を思わせる雰囲気があった。


「炎城綾さん。聞いたことがあるかもしれません、私が喜多川一郎です」


 さも得意そうに男は名を告げた。


「あっ、はい……ところで、どこかでお会いしましたか?」

「いや、はじめてですが、こちらはよく貴方を知っています」

「?」


 男は手に持っていたグラスを揺らし、少し飲んだ。


「私は貴方の叔父の悪友でね、ちょっと意地悪してやろうと思いまして、無礼ながら、貴方を誘拐させてもらいました。いや、なに、取って食おうというわけではありませんから、ご心配なく。ただ、3日間、この屋敷にいて下さればいいんです」

「3日間?」

「そう、その間は、不自由のない生活を約束します。そして、期限が切れたら、ちゃんとお返しいたします。三日間、ここにいて下さればいいんです」


 綾はベッドから降り、男の向かいに座った。


「わかりました。だけど、どうして三日間なのですか?」


 綾がそう言うと、男の顔が厳しい顔に変わった。


「勝負です」


 ここでいったん区切れた。


「奴と私の勝負です」

「……どんな内容なのですか?」


 男はグラスを机に置き、立ち上がった。


「三日の間に貴方の叔父が、あなたを助けられるか……。と言うものです」


 ゆっくり歩き、綾の後ろに回り、くっくっと笑った。


「無理な話です。ここの場所を見つけるだけで、二日はかかりましょう。そして、どうして一日でこの要塞を崩すことができましょう」


 男は綾の髪を少し手に取り、そのきれいな長い髪を見た。


「この勝負、私の勝ちです」


 しかし、現実は厳しい。

 その時、勢い良くドアが開いた。


「綾さーん。助けに来ましたー」


 それはぼろぼろの迷彩服を着た御影だった。

 片手に銃を持ち、頭にはちまきをし、さながら、ランボーのような格好をしていた。

 その後ろでは、硝煙が立ちこめ、2、3の人が倒れていた。

 その景色で、何があったか分かる。


「御影君!」


 綾が立ち上がると、それを喜多川が止め、御影に見えるように銃を突きつけた。


「また、お前か。御影」

「また、俺です。一郎さん」


 御影は堂々と中に入ってきた。

 顔にちょっと笑いを浮かべて、緊張感というものが全くなかった。

 しかしその時、四方のドアが開き、中から兵士が出てきて、壁に揃って並び、御影達を囲んだ。

 御影はいっこうに気にせず、片手で銃を握っていた。


「さて、たしかに、まともにやったら勝ち目がないの分かっている。おまえが本気を出したときの凄さは私も知っているからな。だが、この綾嬢に少しでも傷をつけると、やばいのではないかね?」


 御影はなるほどという顔でうなずく。


「これだけの兵士がいる中、無傷はちょっと無理だろう」


 男は得意そうに言う。

 その間も、兵士の銃は御影を狙っていた。

 約50人くらいいるだろうか。


「それに、ここまで来れる奴など、お前以外にはいないだろうしな」

「そうかなー」


 いきなり、天井から間の抜けた声がした。


「未杉君!」

「はい、どうも」


 と言うと、15mはある天井から飛び降りた。

 そして喜多川をあっさり払いのけ、綾を助けた。


「よー、早いな」

「他の奴らももう来てるぜ」


 と言うと同時に、ドアを蹴破って、バイクが飛び出してきた。


「柳瀬沙羅、参上!」


 というとバイクから飛び降り、身長ほどもある木刀の一閃で10人近くをなぎ倒した。

 バイクに乗っていた男は、バイクをそのまま走らせ、2、3人を引き倒して止まり、サングラスを上げ、ニヒルに言った。


「沖直也、参上」


 敵が驚く間もなく、4人が登場した。

 そして、喜多川が何か言おうとしたその時、窓ガラスがいっぺんに割れた。

 そして、その外には黒く塗られたハリアーが、空中で停止していた。

 両翼の20mmバルカン砲が、こちらの方を向き、きらりと光った。


「一条昌也。参上」


 コクピットを開け、一条が言った。

 その頃、中にいた兵士は皆、腰を抜かしていた。

 喜多川も勿論、例外ではなかった。

 御影は走り寄り、綾の手を取った。


「さあ!」


 というと窓に走って行った。

 綾も手を引っ張られ、それに続いた。

 すると、御影は窓のすぐ近くで、綾を抱き上げた。


「それじゃあ、飛び降りるから、しっかりつかまって!」


 御影は窓のへりに足をのっけ、飛んだ。


「えっ! きゃー!」


 綾の悲鳴も高らかに、二人は6階から飛び降りた。

 下では、美那と菜緒の乗ったジープが、待っていた。

 そのジープの上に落ちる。


「ナイス! じゃあ、いくわよー!」


 と美那が言うと車がもう発進した。

 車は人の沢山集まっている方に突っ込んで行った。

 人垣に近づくと、隣に座っていた、菜緒がマイクを取り、叫んだ。


「みんなー! 人質は奪回したわー!」


 すると戦いをしていた学生達は手を止め、その車を見た。

 車の中の綾を発見すると、みんなは、入学の時さながらのように、ジープを囲み、歓声を上げた。

 やっと、落ち着いた綾がそれを見て驚いた。

 なぜなら、まず一つに、全校生徒が綾を助けるために来ていたから。

 そして、もう一つは、三千近くの兵士が地上に横たわっていたからである。

 その中に、一人として学園の生徒はいなかった。

 ジープは、戦車やら、装甲車やらで囲まれていた、本陣の中で止まった。


「さあ」


 と御影が手を引き、二人は車から降りた。

 人と車の円陣の中、綾が車から降りると、歓声が上がった。

 そして、上空からヘリの音。

 みんなが上を見ると、上空からアパッチが降りてきて、中から校長が出てきた。


「おじさん!」


 綾は校長に走り寄り、飛びついた。

 校長も綾を抱きしめ、頭をなでた。


「すまない。私のせいで、こんな目にあわせてしまって」


 いかにもすまなそうに、校長が言った。


「んーん、いいの」


 綾が答える。


「でも、この学園なんか、もう嫌いになっただろう。他の学校に移りたいか?」


 校長が、そう言うと、綾は気づいたように周りを見渡した。


 こちらを見ている傷だらけの御影。

 御影にバンソーコーをつけている、槙。

 少し、横のジープから飛び降りた、美那と菜緒。

 今、駆け込んできた、沖と沙羅。

 未杉、斉藤、榊…………

 そして、綾のために戦ってくれた、みんな。


 それぞれを、ゆっくり見渡し、そして最後にすぐ目の前の校長を見つめる。

 そしてまた校長に抱きついて、言った。


「ううん、いいの。みんな……大好き!!」



【不屈の学園都市 終り】




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