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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
12/26

第13話 綾の行き先



 御影たち4人は、ワゴンに乗って出発した。

 運転は美那である。

 車は学園を出て、町に続く一本道を通っていた。


 車の中では、情報部にあるコンピューターの<YURA>と交信はできないかという御影の注文により、菜緒がいろいろ改造していた。

 ラジオを引き出し、途中の回線経路につなぎ、そのコード線を阿修伽の情報処理の回路につなぐという芸当を、菜緒は10分でやってのけた。


「よく、そんな事ができるな……」


 御影は感嘆した。

 御影は頭が悪い方ではない。

 いやむしろ良いと言った方がよいくらいである。

 一度、見聞きした事は忘れないのである。

 しかし、勉強は好まず、授業でやったことのみ憶えているだけである。

 それに加えて機械も好まない。

 だからせっかく制作部が重装強化服などをつくっても、着ることはない。

 むしろ、ナイフや剣などの方が喜ぶ。

 さて、無線にのせ、阿修伽がBIG COMPUTER <YURA>に侵入し始めた。


「パスワードって聞いてますけど、どなたか知りませんか?」


 阿修伽が聞いてきた。


「M・I・S・U・G・I」


 御影が答える。


「解りました。コンタクトします」


 阿修伽は目をつぶり、交信し始めた。


「MISUGIって……。」


 菜緒が聞いた。


「そう、あいつ部長になったら、いきなり自分の名前をパスワードにしやがったんだ」


 未杉君は、見かけによらず目立ちたがり屋だった。


「何の情報を引き出すのですか?」

「喜多川関係の資料。最初は綾さんの誘拐先になりそうなところを割り出して欲しい」

「解りました……」


 生徒会室 ----


「ゆきちゃん。ちょっとあの男の様子を映像に出してくれないかな?」


 榊はちょっとボーイッシュな格好をしている、髪の短い女の子に言った。

 書記の岡田由岐おかだゆきである。

 由岐と呼ばれたその女の子は、手前にあるコンピューターを操作し始めた。


「今出ます」


 と言うと、榊の机からテレビが出てき、何やら映像が出て来た。


 病院の手術室 ----


 中は消毒液の独特の臭いがした。

 青い部屋の中に、3人いた。

 一人は脈拍などを調べる機械の前。一人は台の前。

 そしてもう一人は、台の上…………

 そうあの男である。

 未杉は部屋が覗けるマジックミラーの後ろにいた。

 台の前の男 --- 演劇部の副部長をやっている男であるが、今、やってきた男を切り開いていた。


 ちょうどその時、男が起きた。


「なんだ? ここは……」


 男は周りを見回したが意味が解らなかった。

 てっきり拷問室にでも運ばれるもんだと思っていたのである。

 部屋は青く、少し暗かった。

 男は首しか動かすことができず、不自由ながら周りを見た。

 そして自分を見た。

 布が壁になっているため見えないが、自分の腹を何かしているのだけは解った。

 男は青くなった。


「起きましたか」


 台の前の男がぼそりと言った。

 ひ弱そうな声であった。

 男は必死に自分の腹を見ようとした。

 見たくはないが、何をされているか知りたかった。

 しかし体は動かない。

 反抗することさえも出来なかった。


「動かないで下さいよ。内臓が出てきちゃいますよ」


 台の前の男は、恐ろしいことをさらりと言った。


「自分の小腸って見た事ありますか? 今見せてあげますからね……」


 男は血のついた小腸の一部を持ち上げてみせた。

 男は目をつぶりたかったが、つぶれなかった。

 恐いもの見たさのような物であろうか。

 ただひたすらに、自分の腸を見ているしかなかった。 


「先生! もうよして下さい! 血圧がどんどん下がってます!!」


 機械の前に立っていた少女が言った。

 青い布地の服を着、帽子とマスクをしていた。

 この少女こそが、演劇部の部長である。


「かまわん。別に死んだってよかろう」

「でも、情報が……」


 二人は非情な会話をした。

 唯一まともな事を言ってくれた少女も、実は情報のためだと知って、男はさらに青くなった。

 そして、狂った。


「狂ってる。狂ってやがる。だ、だれか助けてくれー! 何でも話すから! どうか……」


 最後はすすり泣きに変わっていた。

 男はだまされている事に、全く気づいていない。

 腹を裂く話も、脈拍の話も全くの嘘である。いや劇と言った方がいいだろう。

 未杉は鏡ごしに笑っていた。


「うまいなー。あの二人。今度の劇、見に行こっ」


 ワゴン内 ----


「今情報が入りました。行き先はこの町から北20kmほど離れた所です」


 阿修伽が言った。

 御影はそれを聞いて驚いた。


「もう調べた奴がいるのか……」

「ということは」


 御影と菜緒が顔を見合わせる。


「榊が動くな」


 御影が言うと、二人は笑った。


「久しぶりに、学園が動くぞ!」




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