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Campus City  作者: 京夜
不屈の学園都市
10/33

第11話 出発



 白百合館、3階。

 312号室 芹沢美那、芹沢菜緒

 御影はドアを叩いた。


「ハイ」


 ドアが開く。


「あら、せーくん。おはよ」


 紺のブレザーを着た美那が出て来た。

 中では菜緒がコートを羽織っている。


「御影君、おはよー。なかなか愉快な格好してるね」


 愉快と呼べるかどうか知らないが、御影はいつもとは違う格好をしていた。

 都市迷彩の服に、胸に手榴弾を3つ、腰にMX-4とナイフ。M-16ライフルを背中に回してある。

 いつもの皮手袋をはめて御影は立っていた。

 いつもより顔が厳しい。赤くなりかけた青い瞳が不気味に光る。


「部室……。開けてくれないか?」

「いいけど……」


 美那はなにはともあれ、靴をはいた。


「何か、いる物でもあるの?」


 御影は先に歩き出した。


「MX-4用の麻酔弾を1000発ほど欲しい」

「あら、またどっかに殴り込みに行くの?」


 あとから追ってきた菜緒が言った。

 しばらく沈黙が続いたが、重々しく御影は言った。


「綾さんが…………誘拐された」

「は?」


 またしばらく沈黙が続く。


「綾さんが喜多川の奴らに誘拐された」


 御影は綾を誘拐した二人組を思い出した。

 一度、御影はあの二人に会ったことがある。

 校長のライバルである喜多川の私兵である。

 美那と菜緒は理解した。


「それで、その<喜多川>とか言う人の所に殴り込みに行くわけね」


 御影はうなずいた。

 部室前。

 菜緒が鍵を差し込み、ドアを開けた。

 御影はそれを見て、不思議な顔をした。


「たしか、ドアの鍵って、指紋照合だって聞いたけど……」

「ノブを触ったときに指紋照合。それがあって初めて鍵が開く仕組み!」

「私のアイデアなの」


 菜緒はドアをカチャリと開けると、3人は中に入った。

 中では割烹着姿の阿修伽が掃除をしていた。

 6本の腕を巧みに使って掃除をしている。


「あっ、master。おはようございます」

「掃除できた?」


 菜緒は阿修伽の方に行き、美那と御影は端にある小さなドアに向かった。

 ドアを開けると御影が先に中に入った。

 美那は壁にあるスイッチを押し、明かりをつける。

 その部屋は、隣の研究室の3倍の広さがあった。

 見渡す限り棚やラックがあり、制作部で作った物が置かれていた。

 天井は高く、棚はそれぞれ3m近くあった。

 例えれば、少し暗めの体育館と言った所だろう。

 端の方には、10m近くあるロボットがひっそりと立っていた。

 御影と美那は大体真ん中にある通路に入り、15mほど行って止まった。

 左側には武器類が、右側には弾薬類が山と言うほど置いてある。

 右側の棚のガラス戸を開け、緑色の箱を2つほど取り出す。


「はいっ。これね」

「ありがとう」


 御影は受け取ると、さっそくベルトやポケットに入れ始めた。


「それ速攻性だから……。1秒ほどで普通の人は寝てしまうわ……。効き目は大体3時間程度」


 御影は残りの20発をMX-4のマガジンに詰め始めた。


「17、18、19、20。よし、用意完了」


 御影はマガジンをMX-4に入れると、腰に着けた。

 美那はその隣にある、服が陳列してあるところに行き、実験のときに先生が着るような白いコートを取り出し、着た。


「何をしてる」


 御影はおおよそ見当はついていたが、聞いてみた。


「人体実験の課外講習に行く用意」

「平たく言うと」

「手伝わして!」


 美那がにじり寄ってきた。

 予想した通りの答えが返って来る。


「お前が、こういうこと好きなのはよく知っている」


 こいつのせいで何度呼び出され、何個傷を作ったか……

 御影は苦い経験を思い出していた。

 しかし、御影は諦めていた。

 こいつには何を言っても無駄であることはよく知っているからだ。

 何があろうとも、暴れることならすぐ顔を出したがる。

 御影は諦めて、歩き出しながら後ろの美那に言った。


「好きなようにしろ。だけど、人は殺すような真似はするなよ」


 それを聞くと、美那は喜んでどっかに行ってしまった。

 やれやれと思いながら御影は上着を着た。


「あっ、植物人間っていう手もだめだぞ、」


 御影は付け加えた。

 その時、美那は、上着に入れようとしていた2本の試験管を名残惜しそうに元の棚に戻した。

 その棚には、1~5と書いてあり、それぞれ試験管やら、箱が詰まっていた。

 上には“ドラッグ”と書いた板があり、それぞれ、


 1には“廃人もしくは、地獄行き。”

 2には“植物人間もしくは、意識不明行き。”

 3には“細菌関係。”

 4には“麻痺関係。”

 5には“その他。”


 と書いてあった。


 美那は1と2はやめといて色々な物を取り出し、上着の中にしまった。

 その時、ドアから出ようとしていた御影から神の声が放たれた。


「おい、美那。細菌類もだめだぞ」


 こうして、世界が救われたことを誰も知らない。


 さて、美那が行くと言えば絶対に菜緒もついてくる。

 こいつら、仲がいいのか悪いのか知らないけれど、ともかくいつも一緒なのである。

 そして菜緒がついて行くとなれば当の阿修伽がついてくる。

 こうして、4人になり、その4人は一路、綾救出に向かった。




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