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本能寺



時は安土桃山時代


信長は苛立ちを隠せなかった。


「おい、勝家かついえ!腹が減った。

何か持って来い!」


「殿。しばしお待ちを、、、

今日は良いアユが取れております。


それを今晩の飯にと思っておりますので


もう少々お待ちを」



「待てん!なにか甘いものはないのか?

団子でもカステラでも何でもいい。

何か持ってこい!」


「分かりました、カステラとお茶を用意します。」


信長は次の一手に悩んでいた。


中国地方の毛利軍との関係性だ。


どうやって毛利軍より優勢に政治を進めていき


天下統一を成し遂げるか。


織田家にとって毛利軍は


最大の難敵であった。


「猿!何か良い案はあるか?」


秀吉が呼ばれた。


「殿。私にはめちゃくちゃ良い案があります。


ここで申し上げます。


まず、毛利元就もうりもとなりの下に私が出向という形で赴き、兵隊の指導にあたります。


私もだてに織田家の兵隊を率いている

わけではありません。


毛利軍に戦の指導をすることは容易いもの。


そこで友好関係を結びつつ


毛利軍の軍隊の情報を全て入手します。」


「ほー、猿、お前なかなかエグいことを考えるな。それでその後は?」


「はい。そしてタイミングを見計らって

毛利軍に奇襲攻撃を仕掛けるんです。

狙うは元就公のクビ。」


「猿、お前はそう簡単に言うが

勝算はあるのか?」


「大丈夫です。もちろん勝算はあります。

我々、羽柴軍だけでも上手くいけば

元就を捕らえることが出来ると思いますが

そこは念には念を。


明智様に力を借ります。

もしも羽柴軍が劣勢に立たされた時には

明智軍を安芸国あきのくにに呼び寄せ

羽柴・明智両軍で

毛利軍に対すれば

数的にも有利に立て

沈めることは可能かと存じます。」


「そうか、、、確かに猿のコミュニケーション能力を持ってすれば元就公にもうまく

とりつくことは可能であるな。


その上で猿から毛利の内情を筒抜けにさせておいて

隙を見て一気に奇襲を掛けて元就公のクビを狙おうというわけか、、、」


信長はしばし下を向いて目をつむり

考えた後、持っていた扇子を畳に振りかざした。


「よしっ!!猿!この毛利家奇襲作戦


与に全ての権限を与える。


そして与をこの作戦の総大将に命じる。


与が先頭に立ってこの作戦を成し遂げてみろ!


もしこの作戦が成功すれば


我が織田軍の夢の天下統一がぐっと

近付くことになる!!


そうすれば猿!!


与を我の右腕、


家臣の最上級の位置付けの


ポストに用意してみせよう。


失敗はならんぞ!


必ず成し遂げてみろ!」


「ははーっ。殿。有難き幸せ。

必ずやこの毛利家奇襲作戦を


成功させ、織田家の天下統一の


足がかりとさせて頂きます。


何卒、ご支援の程よろしくお願いします。」


秀吉による毛利家奇襲作戦の幕開けだ。





早速秀吉は中国地方の雄


毛利元就に手紙を送った。


「毛利殿

私、羽柴秀吉は


織田家君主


信長の命を受け


毛利家との友好関係を確固なものとしたく


毛利軍の強化を図るべく


数千の兵を率いて


鉄砲隊の訓練実習を行いたいと思っております。


織田家の技術を


毛利軍に伝え


毛利殿と信長


両雄の軍が


結束すれば


今後、歯向かう勢力にも


勝ち続けることが出来ます。


これまでも両軍は共に助け合ってきましたが


これからは軍事的な共有も含めて


協力をしたく存じます。


良き返事をお待ちしております。」


手紙と共に


お酒とお米も贈答品として


備え、使者に送らせた。


数日後、毛利元就から返事が来た。


「羽柴殿


手紙の内容把握した。


ぜひこの軍事協定を結びたく思う。


今回の鉄砲訓練についてお願いしたい。


毛利家一同


そなたを歓迎して出迎えたい。」


秀吉の予想通りの返事となり



信長は上機嫌となった。


「秀吉、まずはよくやった!


戦前の祝杯じゃ。


酒を用意する!


家来含め我が安土城で大いに盛り上がれ。


与の為に貸切で部屋も設ける。


しっかりと英気を養ってから


中国地方へ出発してくれ!」


秀吉も君主信長からの激励には


胸が高まった。



ただ、そんな織田家の盛り上がりの中で


主要家臣のライバル団


柴田勝家、滝川一益たきがわかずます、明智光秀らは


秀吉への嫉妬心で怒り狂っていたことは


想像に難しくないことだった。






秀吉による毛利軍での


鉄砲研修は見事なまでに


順調に進んでいった。


この研修中に怪しい動きがあっては


計画が台無しとなる為


秀吉は出し惜しみなく


全力で毛利軍に鉄砲技術を伝授した。


いずれ毛利軍を滅ぼした時に


教えた兵達が


今度は織田軍として大きな戦力となることも


見越した想定である。


毛利元就もあまりにも


秀吉の研修精度が高い為


感心しきりの様子だった。


この間に元就は信長宛に感謝状を


送っている。


「織田信長殿


羽柴公の今回の鉄砲研修については


感謝してもしきれない。


本当に有難き幸せ。


この研修により毛利軍の鉄砲隊も


脅威として


今後の戦乱に大きな一手となり得る


ことは想像に難しくない。


引き続きご教授頂くことと


今後の両軍の固い結束を約束する。


毛利元就」


秀吉は徹底した精度高き研修を


毎日毎日繰り返していった。





鉄砲研修も数ヶ月の月日が経ち


いよいよ毛利軍の鉄砲隊の精度も


戦国の世のトップレベルの水準まで


押しあがってきた。


秀吉としても


ここまでの技術が持てればと安心いうレベルまで

来ていたので


このあたりで一旦研修は完了という形にしようと決めた。


毛利元就からも強く信頼を受けながら


秀吉は今回の目的の一つである


毛利家の情報収集も惜しみなく続けていた。


毛利元就の行動


取り巻きの主要家臣達の行動


名高き戦国大名とは言えど


日々のルーティンワークには


ある程度一貫性があった。


そして毛利家のキーマンと言える人物も


浮き彫りになってきた。


そう、福島正則ふくしままさのりだ。

※ここまで確認


この男が毛利家を裏でコントロールしている


超重要人物であることも分かった。


毛利軍のいわば


司令塔と言える人物だ。


福島正則だけは秀吉としては


絶対に警戒をしなければいけない人物であり


また彼に警戒をされては全ての作戦が


台無しになってしまう。


そんな危機感も同時に持っていた。



秀吉は使者を使い信長に対してこんなお願いをしている。


「毛利軍のキーマンは福島正則にあります。

この男にどうしても取り付きたく


殿の自慢の馬達の中で


ぜひ選りすぐりの1頭を


贈呈したく存ずる。」


信長はしばし悩んだが


秀吉の要求を呑み


自慢の馬の1頭である


若獅子わかしし」と名付けた馬を


福島正則へ贈呈することに決めた。


まさに信長と秀吉の関係は非常に良好なものであり


織田家家臣の中でも


特にこの時は明智光秀が


怒りを露わにさせ


暴れ回ってしまった。


「なぜだ!なぜ殿は猿ばかりに、、、


あんな貧乏人よりも


我が明智家の存在意義を懸けても


このおれが殿の右腕にならなくては


ならぬのだ!


あんな無能な猿に


織田家の命運を託せるはずがない!」


光秀の怒りは頂点に達していた。





信長から超高級の馬を贈呈された


福島正則はこれ以上ないくらいの


喜びを滲ませた。


「羽柴殿、この度の貴重な馬の贈呈


言葉では表せぬほど


喜ばしい限り。


本当に有難き幸せ。


毛利家一同、感謝の意を申し上げる。」


全ては秀吉の思うままにコントロールされていた。


毛利家はまさか、秀吉の魂胆を怪しんだり


していない。


そればかりかどんどん秀吉に対しての


忠誠心が高まっていく。


この忠誠心を1番高いところに持ってきた


ところで秀吉は奇襲作戦を仕掛けようと


心に決めていた。



そしてついにその時が来る。






秀吉は羽柴軍幹部である


蜂須賀小六を呼び寄せた。


「小六、本日の夜中


毛利軍に奇襲攻撃を仕掛ける。


狙うは元就公のクビ。


我が羽柴軍の鉄砲隊を用いて


総勢で攻撃にかかる。


これは絶対に失敗は許せぬ計画だ。


命を懸けて任務にあたってくれ。」


「秀吉殿。内容は把握した。


この蜂須賀小六


全てをこの作戦成功の為に


注ぎたいと存ずる。」


秀吉はこれまでの2ヶ月に及ぶ研修期間で


毛利軍の配置などを全てデータ化してきた。


寝る場所や警備の時間帯など


徹底的に調べ上げ、記録に残した。


元就の居場所


そして要注意人物、福島正則の居場所も


完全に把握済みだった。


敵、味方がちょうど寝静まった


午前0時。


蜂須賀小六の合図で


奇襲作戦が始まった。


「いざ、我らが敵は毛利元就。

一刻も早く、全員で攻撃を行う。」


数人の鉄砲隊が元就が居る屋敷へと

進んで行く。


途中の強固な毛利軍警備隊も


鉄砲隊がことごとく発砲していった。


羽柴軍も次々に寝床から起き上がり


鉄砲を片手に続々と蜂須賀小六率いる


鉄砲隊に続いて行った。


「奇襲だー、奇襲!

羽柴軍による奇襲だー!

殿を守れー!」


発砲音がバンバンと響き渡る中


毛利軍の合図も放たれ


両軍の武士が入り乱れながら


続々とこの戦いに加わっていった。


秀吉は元就を目指す隊列には加わらず


福島正則の居所へ向かっていた。


ほぼ無防備であった福島正則の場所は


すぐに突き止め


秀吉が引き連れた数百の


鉄砲隊の精鋭が一瞬の間に


福島正則を囲い込んだ。


「秀吉殿、、、


何の真似じゃ、、


貴殿は何がしたい?、、、」


「福島殿、、、


許せ、、、


これも我が織田家天下統一の為の


重大な戦争、、、


信長公の夢である


天下統一を成し遂げるには 


毛利元就を倒さねば


先を越されてしまうのじゃ、、、」


「貴殿には和平という概念は無いのか、、、

戦乱の世を静めるべく


元就様は政治を行っておられる。


織田家との同盟もその一つ。


両家が協力し


強固な敵にも屈することなく


立ち向かっていけば


自ずとこの世も一つになれる。


そんな未来図を描いているのが


元就様じゃ。


秀吉殿、今一度考え直せ。


戦う相手は毛利家君主では無い!」


しばしの沈黙の後


秀吉は号令をかけた。


「皆、一斉に鉄砲を向けよ!!」


数十人の鉄砲隊が福島正則に


銃口を向けた。


「福島殿、貴殿はもう終わりじゃ。

いろいろ考えることもあるであろう。


ただ、貴殿の才能をこんなところで

潰すのもこの世においては

非常に惜しいこと。


その才能を天下統一を目指す我が織田軍に


捧げてくれないか。


もちろんそれなりのポストを用意する。


貴殿の力をお借り願いたい。」


秀吉は銃口を向けられる正則に向かって


懇願した。


秀吉としては毛利元就を討つだけではなく


その後の毛利軍の流入も視野に入れた


作戦だ。


正則もそのあたりはすぐに勘づいた。


「ここから慌てても


もう元就様をお守りすることは


不可能じゃ。


微力ではあるが


我のこの身を


誰かに授け


毛利家家臣としての


意義を残していきたい。


その話、承ろう。」


福島正則が降伏。


羽柴軍への寝返りの瞬間だった。






優秀な武将


福島正則を織田軍に加え


羽柴軍は蜂須賀軍に


追いつけ追い越せと歩を進めた。


「秀吉殿、いくら夜中の奇襲攻撃とは言えど


毛利軍の連携の速さは並大抵ではない、、


もうすぐ近隣の城から


吉川元春、小早川隆景、そして毛利輝元などが


総勢で押し寄せてくるはずだ。


例え、元就を捕らえたとしても


毛利家三本の矢の軍が


一斉に集結すれば


我らは信長様の下に帰還するのは


不可能だ。


織田軍もすぐにでも応援をこちらに呼ぶべきだ。」


「無論、そこも想定済み!


近くに明智光秀率いる


明智軍も備えておる。


更には念には念を入れて


滝川一益率いる滝川軍もいる。


すぐに使者を送り、援軍を要請する!」


秀吉の命で


直前に緊急応援の要請の可能性を


示唆していた


明智軍と滝川軍もすぐにここ


吉田郡山城に向かうよう指示を出した。


毛利軍三本の矢が到着する前に


何としても元就を捕らえ


城内で援軍を迎え討ち


明智軍と滝川軍の応援を待つ。


そこまでの計画を正則に伝え


万全の準備の下で


羽柴軍は元就の場所へと進んでいった。





蜂須賀小六率いる


先頭集団が元就の居所へと辿り着いた。


厳重な警備の下


止めど無い発砲音の中で


小六は軍を進めここまで辿り着いた。


襖を開けると


元就は布団の上で正座をしていた。


「お主は何者じゃ?」


元就は落ち着いた様子で呟いた。


「我は羽柴軍家臣、蜂須賀小六と申す。


毛利元就、


もうここまでだ。


降伏するか?」



元就はスッと落ち着いた佇まいで


深呼吸をし


目を瞑った後に


キリッと小六を見つめた。


「我が進む道に悔い無し。


我が軍の負けを認め


降伏をする。」


元就が潔く降伏を認めた場合は


攻撃をせず


捕虜として信長の下に連行することを


秀吉からも指示を受けていた小六は


そのまま元就を捕虜とした。


「この後、すぐに家臣の吉川、小早川、そして輝元が援軍に入る。終戦の指示が間に合う可能性もある為、秀吉殿にもすぐに終戦の旨を伝え、家臣達への攻撃は謹んでほしい。」


元就は小六へ懇願した。


小六もその訴えには同意し 


すぐに秀吉への伝達を急がせた。





小六からの伝達を受けた秀吉は


すぐに明智軍と滝川軍に対して


元就捕虜により


撤退するよう使者を送った。


毛利軍の三本の矢


吉川・小早川・輝元軍についても


元就降伏の知らせを受け


すぐさま軍の撤退に急いだ。


晴れて、秀吉による


毛利軍奇襲攻撃は


見事なまでに成功で幕を閉じた。


早速その知らせを受けた


信長は、大盤振る舞いで秀吉を迎えた。


「猿め!


まんまとやりよった!


でかしたぞ!


この戦勝は我が織田軍にとって


これ以上ない結果。


約束通り、褒美は期待してかまわない!」


またしても信長の秀吉に対する評価は


急上昇する形となった。



明智光秀の周りは


ますます険悪な空気となった。


明智軍家臣


斎藤利三は言う。


「明智殿、お気持ち察します。


しかしここは、同じ織田軍家臣として


我慢の時です。


くれぐれも変な気は起こさぬよう


慎重に事を進めていしましょう。」


「利三、このまま行けば


あの猿は間違いなく信長様の右腕として


長きに渡って、織田軍の政治にも


大きな影響を及ぼす地位になるはずだ。


そうなれば我が明智軍も


どんな処遇を受けるか分からん。


我は明智軍を守る責任がある。


このままでは終われんぞ。」


鋭い眼光で光秀は利三を睨みつけた。


「分かっております。


ただ、焦りは禁物、、、


ここは冷静な判断をお願いしたい。」


満月の光が


光秀と利三を照らす。


静かながらも


メラメラと燃え盛る炎の如く


明智軍の夜は過ぎていく。




毛利元就を捕虜として捕らえ


秀吉による


毛利家奇襲攻撃は


大成功により幕を閉じた。


これにより秀吉は


信長の地位に次ぐ


織田家No.2の肩書を欲しいままにした。


織田軍としてもこの毛利作戦は


軍の勢力を強める意味で壮大な成功となり


毛利元就という大将軍を織田軍として迎え入れ


その家臣


三本の矢とも称される


吉川元春


小早川隆景


毛利輝元


この三勇士をも


仲間として迎えることが出来た。


「猿、本当によくやった。


中国地方の制圧と


毛利軍との合併吸収をも実現させた


この事案は


天下統一に向けて


急加速させるものとなった。


我が織田軍の天下統一も


目と鼻の先にある。


その時を静かに待とう。」


「殿、その時まで油断することなく


しっかりと全うしていく所存でございます。」


信長と秀吉は静かな祝杯をあげた。






明智光秀は信長に呼ばれていた。


「光秀、毛利家4氏と

猿も併せてこの度、会合を開きたい。


飯の支度を与に任せたい。


やってくれるか?」


「も、、もちろんです!やらせて頂きます。

必ずや最高の会合となりますよう

食事の面からおもてなしとモチベーションアップに向けて、しっかりと全う致します。

ご期待下さいませ!」


「良い気合いじゃ!これは楽しみじゃ!

光秀、大いに期待しておるぞ。」


信長は光秀のやる気の満ちた返答に

大いに満足気だった。


光秀としてもこのまま秀吉に家臣としての

差を広げられていては元も子もない。


この大役をいかに成功に導くか、、、


光秀は興奮冷めやらぬ様子で


信長との会議を終えて帰路へと向かった。





いわゆる

織田家・毛利家首脳会談が

設けられることとなった。


この会議での進行役は


重臣である

滝川一益が担うことに。


これもまた信長から抜擢された


非常に重要な役だ。


料理責任者は明智光秀。


そして会議の出席者は


織田信長

毛利元就

豊臣秀吉

吉川元春

小早川隆景

毛利輝元


そして急遽、毛利家から寝返った

福島正則も信長の命で出席することとなった。


この会議では主に


・今後の織田家天下統一に向けての展開

・毛利家重鎮らのポスト検討

・四国や九州、東日本の勢力に対しての対応


これらの事柄をメインとして話し合って

いくことになる。


場所は信長の居城である安土桃山城の


最上階にある


客間。


金メッキで煌びやかな


超高級スイートルームで


催されることになった。


天気の良い日には富士山も見渡せるという


超絶景ポイントだ。


早速、光秀は


この会議の超重要課題である


食事面についての会議を


最も信頼する家臣


斎藤利三と話し合うことにした。






光秀としては


なんとしても最高の料理であったという


称号を得たい。


信長の好物でもある海の幸を


存分に味わえるようなコンセプトで


設計していきたい旨を斎藤利三に伝えた。


「明智殿、それは良い案です。

ぜひとも海の幸を存分に取り入れた料理を

準備しましょう。


牡蠣は毛利氏拠点の安芸国から取り寄せましょう。

そして鯛については駿河国から活きの良い

ものを取り寄せます。


最高の魚料理を提供してみせましょう。」


斎藤利三も意気込んだ。


「肉類もやはり必要になる。

血気盛んな男達の集まりだからな。


そうなるとやはり馬肉か、、、


肥後国に良い馬肉が揃っていると聞いた。


なんとかそこから取り寄せは出来ないものか?」


「肥後国は島津義久が国を治めております。

私の知人をつたって何とか義久に

接触出来るよう動いてみます。


そのルートから最高級の馬肉が準備出来れば鬼に金棒ですな。。


信長様の評価も急上昇するに違いありません。


なんとか開拓してみせましょう。」


光秀、利三の両氏は共に結束し


この料理担当の仕事での成果を絶対的な


使命として全うすべく


全力で動き始めた。





順調に準備は進められ


牡蠣、鯛、馬肉といった


それぞれ最高級の品が


光秀の下に寄せ集められた。


「斎藤殿、どうだった?仕入れのほうは

問題はなかったか?」


「牡蠣や鯛の魚類は 

特段、トラブル無く順調に

仕入れることが出来ました。


ただ、面倒だったのは

島津義久の馬肉です、、、


これはかなりの難航を強いられました、、


詳しいことはまた追ってお伝えしますが


ちょっとした条件を加えられまして、、、


まあただ、品は間違いなく最高級のものが

手に入りましたので


料理に関しては文句ない状態の


仕入れ状況となります。」


馬肉に関しては少し歯切れの悪い返事だったが


ただ、食事面としては


予定通りに事が運べることに


光秀も大変満足した。


あとは本番当日に向けて


しっかりと料理をこしらえて


最高の味を提供することに集中するのみだった。





光秀は調理に関しての一切の責任を


坪内石斎つぼうちせきさいに委ねた。


坪内石斎は料理の世界では有名な人物であり


光秀にもその情報が入っていた。


この会議の為に光秀は幕府を通じて


坪内を呼び寄せ、今回の会議の料理長に命じた。


その報酬には料理人としては桁違いの


金・茶器・米が相当数用意された。


「坪内殿、今回の食事会においては


絶対に失敗が許されない。。。


報酬はたんまりと用意した。


成功の暁には


この報酬全てを与に与えたい。


私が考える


牡蠣・鯛・そして馬肉料理を


この最高級の食材の下に


与の技術で更に最上の料理にしてほしい。


叶えられるか?」


「明智様、もちろんです。


このような大役を命じて頂き


有難き幸せ。


必ずや、信長様を満足させられるよう


精一杯の力を注ぎます。


お任せ下さい。」


「その心意気、気に入った!


頼む、頼むぞ、坪内殿。


絶対に成功を掴もうぞ。」


光秀にとって


全ての準備が周到に進められていった。





蜂須賀小六率いる


先頭集団が元就の居所へと辿り着いた。


厳重な警備の下


止めど無い発砲音の中で


小六は軍を進めここまで辿り着いた。


襖を開けると


元就は布団の上で正座をしていた。


「お主は何者じゃ?」


元就は落ち着いた様子で呟いた。


「我は羽柴軍家臣、蜂須賀小六と申す。


毛利元就、


もうここまでだ。


降伏するか?」



元就はスッと落ち着いた佇まいで


深呼吸をし


目を瞑った後に


キリッと小六を見つめた。


「我が進む道に悔い無し。


我が軍の負けを認め


降伏をする。」


元就が潔く降伏を認めた場合は


攻撃をせず


捕虜として信長の下に連行することを


秀吉からも指示を受けていた小六は


そのまま元就を捕虜とした。


「この後、すぐに家臣の吉川きっかわ、小早川、そして輝元てるもとが援軍に入る。終戦の指示が間に合わぬ可能性もある為、秀吉殿にもすぐに終戦の旨を伝え、家臣達への攻撃は謹んでほしい。」


元就は小六へ懇願した。


小六もその訴えには同意し 


すぐに秀吉への伝達を急がせた。






並々ならぬ周到な準備の末


遂にその日がやってきた。


舞台となる安土城の麓の城下町では


前夜からお祭りの如く


賑わい、会議当日の朝から


たくさんの人で街は盛大な盛り上がりを


見せていた。


織田家一同がこの会議への


意気込みを強く注いでいる証だ。


まさに織田家にとっての最重要会議


題して


『織田・毛利首脳会談』が取り行われる。




司会進行役は滝川一益だ。


午前の会議は無事終了した。


会議に行われるこの昼食が


明智家最大の見せ場となる。


首脳メンバーは場所を安土城最上階に


移し、食事会が取り行われる。


光秀、斎藤利三、坪内の食事会主要メンバーに


とてつもない緊張感が走る。


信長、元就、秀吉、吉川、小早川、輝元、福島


7人が席に着いた。


光秀の合図で最初の食事が運ばれる。



安芸国産の牡蠣料理。


『生牡蠣のレモン漬け』だ。


大きな牡蠣肉が


とろける食感を生み出すまさに絶品。


坪内の1番の自信作


最初の一発目でかなりのどデカい攻撃を


仕掛けるイメージでの料理だ。


「うまい!!!これは美味いぞ!!」


信長は唸った。


他の幹部達も一同に大きく相槌を打った。


まさに先制パンチはその場を


制圧した。




興奮冷めやらぬところで


更に二打席連続ホームラン狙いの


駿河産 鯛の刺身と焼きだ。


刺身と焼きを両方味わえる


贅沢な仕上がりに


幹部達は盛り上がった。


味も文句無し。


「最高じゃ、、、我が吉田郡山でも


こんな鯛料理は食べたことが無い、、


絶品じゃ、、、」


今度は元就が唸った。


まさに二打席連続ホームランとなった形だ。


豪華な料理が続き


ある程度、幹部達のお腹も


それなりに満たされた中で


最後に登場するのが


肥後産の馬肉だ。


難攻不落、島津義久を口説いて


仕入れた最高級の肥後産の馬肉。


締めの逸品となるが


こちらも刺身と焼き肉が


両方味わえる形だ。


「まさに、至福の瞬間。


これは最高の料理に他ならんですな。」


秀吉も上機嫌に言葉を発した。


まさに大成功。


光秀が監修したこの食事会は


全ての幹部を唸らせる最高の


食事会となって


休憩を終えることとなった。


この大役に数ヶ月の準備期間を


身を削る思いで過ごしてきた


光秀と利三は


幹部達が午後の会議に戻った後は


倒れ込むように


布団へと入っていた。


明智家最重要課題であった


織田・毛利首脳会談の食事会は


まさに大成功で幕を閉じた。





「明智殿、明智殿、起きて下さい!!」


斎藤利三の声に明智光秀は目を覚ました。


「なんじゃ、、、利三か、、どうしたことか?」


「なんとか、本日の織田・毛利首脳会談が無事閉幕しました。これで我が明智軍としても


安泰といきたいところですが


実は厄介な問題を一つ抱えております、、」


「なんじゃ、、」


光秀は聞き返す。


「島津義久から調達した肥後産の馬肉の件です。


あの件は最高級の馬肉を頂戴し


何も文句は無い形なのですが


その際に条件を突きつけられたという


話をしたかと存じます。」


「うむ、、、確かにそれは伺った。

果たしてその条件とは?」


「実はその条件と言いますのが、、、


最高級の馬肉を差し出す代わりに


織田軍の鉄砲をいくつか頂戴したいとの


ご要望がございました、、、」


「なにっ??


我が軍の鉄砲が欲しいと??


それは利三、、、いくらなんでも


受け入れることは出来ぬ要望だと


思うが、、、」


「明智様、それは私としましても充分承知の上、、、しかしながらあそこまでの最高級の馬肉を差し出して頂いた島津義久の懇意、、、

これを無下にすることはあってはならないという気持ちも確かにありまする故、、、」


「さすがにその願いを我の依存で

二つ返事と承諾するのは


さすがにもって承知出来ぬこと、、、


これは困った問題になった、、、」


利三の懇願に対して


光秀はどうにも困った様子を隠せないといった


状況になってしまった。





光秀は散々考えた挙句


一つの結論を出した。


「織田軍の鉄砲を島津義久に差し出す。」


「明智殿、その結論で間違いありませぬか?」


利三は唾を飲み込んで聞いた。


「決めたことじゃ。それで良い。」


光秀は一点を見つめた。


しかしながら簡単に織田軍の鉄砲を


島津義久に渡すことは


信長の決定無い中では出来るはずもない。


かといって信長にこんな相談をした時には


怒りを買ってしまう可能性は非常に高く


光秀は昇進どころかその立場さえ


危ぶまれる。


散々考えたとはいえ


そもそも光秀の選択は一つしか無かった。


「信長にバレないように鉄砲を島津義久に

送る」


この作戦を決行することを決めた。





光秀は利三と共に周到に作戦を立て


まずは明智軍が持つ鉄砲を


少しずつ九州の島津軍に送る


手配をした。


秘密裏に島津義久側と


明智側の使者を使い


馬と籠を使いながら


周りに鉄砲の輸送をしていることが


バレないように


少量ずつの鉄砲を徐々に送っていった。


島津義久からは200丁の鉄砲の輸送が


求められており


ある程度の月日をかけて


全てを送る予定となった。


しかしながら明智軍には


鉄砲は100丁しかなく


残りの半分はどうしても


織田軍のどこかから


調達していく必要があった。


光秀はこの問題には相当頭を悩ませた。




「柴田勝家に協力してもらおう」


光秀は利三との会議でそう言った。


「勝家は例の織田毛利首脳会談において


信長様から役をもらえなかった


家臣の1人だ。


多少なりともふて腐れたりしている


部分があるはず。


そこに我々のこの話を持っていき


鉄砲の調達について協力してもらおう。」


「しかし、明智殿、、、


どのように勝家殿を動かせるのですか?


まさか、鉄砲を100丁くれと言っても


そんな危険な橋は渡るとは思わぬこと、、」


「そうだな、、、


交換条件をしよう。


もし我々の作戦に協力してくれるならば


今後、信長様の後継者争いなどで


家臣同士で対立が起きたとき


真っ先に同盟を結んで他の家臣達との


戦いに全面協力をする協定を結ぶ。


勝家も血気盛んな性格の持ち主だ。


あらゆる面で武力の優位性を保っておきたい


気持ちは強いはず。」


「分かりました、、ではその作戦で


勝家殿に接触を試みてみましょう、、


全てはこの作戦の成功の為


そして光秀様の昇進の為です、、


必ずや成功を遂げましょうぞ。」


暗闇の中の会議は


静かな光が風のように揺れていた。





光秀の命を受け、利三は柴田勝家側に


接触を試みた。


そして見事に交渉成立。


勝家側から鉄砲100丁の調達に成功した。


「利三殿、見事じゃった。

あの勝家の傲慢な性格さゆえ


少し心配はしていたが


すんなりと交渉は進んだか?」


「あの勝家殿の性格は我もしっかりと

熟知済みです。


しかしながら


この作戦を伝えた途端


嫌に素直に話が進み


とんとん拍子で交渉が成立しました。


確かに、内部争いが起きた時に


我が軍と同盟が組めるというのは


柴田側にもメリットは大きいとは思うのですが、、、、


とにかくとても腰を低くした様子で


光秀様によろしく伝えてくれと、、、


千利休の製作した


この金の湯呑みまでも頂いた次第です。」


利三は光秀の目の前に


光り輝く金の湯呑みを差し出した。


「こんな高価なものを、、


勝家殿、、、


相当今回の首脳会談での無役が


心を痛めているのであろう、、、


藁にもすがる思いであったことは


察するに難しくない、、」


「そんな状況を見越しての今回の


勝家殿への鉄砲調達依頼であったわけですね、、、


光秀様の先見の目は


間違っておらぬことが証明されました。」


まずは一安心といった状況の


光秀と利三は静かに祝杯をあげた。





交渉の通りに事は進み


柴田軍から100丁の鉄砲を


調達した明智軍は


島津義久に約束の鉄砲200丁を


贈呈することに成功した。


織田軍には秘密裏で進めていった作戦の為


もちろん信長はこの事実を知る由も無い


光秀としては


信長に知られることなく


島津側に鉄砲を送ることができ


一安心といったところだった。


しかし数日後に


異変が起こる。


「光秀様!光秀様!」


慌てた様子で斎藤利三が


光秀の元に駆け寄ってきた。


「どうした?」


怪訝そうな顔で光秀は訊ねる。


「まずいことになりました、、、


信長様から突然の呼び出しがかかっております。」


利三の表情は強張っていた。


「1人で安土城に来いと、、、


大変お怒りのご様子です、、、」


振り絞った利三の声は


正気が失われたような声だった。


「まさか、、、


まさか、、、」



光秀は唖然とした表情で


利三を見つめた。





光秀は安土城の


信長の待つ部屋に通された。


「座れ。」


目も合わすことなく


静かに信長は呟いた。


「全て、勝家から聞いておる、、」


静かに信長は言った。


光秀の表情は一気に青ざめた。



勝家が、、勝家が裏切った、、


なぜ??


同盟まで交わした勝家が、、、



「猿、滝川一益、柴田勝家、そして明智光秀、、


これらの家臣達は


我の家族同様と思って


これまで過ごしてきたつもりだ、、、


それを貴様はやすやすと


我に内緒で


島津義久と手を組んで


大切な我が軍の鉄砲を


横流しした、、、


この罪を貴様はどう考えるつもりだ?」



「も、、、もうしわけございません!!


そんなつもりでは、、


そんなつもりでは、、」


ひたたる汗を拭う余裕もなく


ただただ下を向いて


答えることしか出来ない、、



「こういう裏切り行為を許してしまっては


他の家臣達に示しがつかん、、、


松平元康まつだいらもとやす


話をつけてある。


もう貴様に用は無い。


すぐに明智家総勢


我が織田軍から排除を命ずる。


松平元康の下で


指示に従え。


それ以上はない。


今すぐ向かえ。」



事実上の除名の命令だった。


光秀ではなく斎藤利三


そして明智家総勢が


織田軍から排除されてしまった。


命だけは助けてもらえたが


松平元康の下に行けば


このケースの場合


奴隷として扱われるか


一生涯


明智家の人間は農民として


昇格することは一切無いだろう。


光秀は途方に暮れながら


安土城を後にした、、、





光秀は自城に戻り


全ての内容を利三に話した。


「勝家殿が裏切ったか、、、


許せん、、、」


利三は怒りに震えた。


一方の光秀のほうは憔悴しきっており


怒りすら通り越しているような


状態だった。


「光秀様、、希望を捨ててはいけませぬ、、


我らが明智家は


ここから這い上がりましょう、、


松平元康様のところに


行ったとしても


絶対に我は明智家としての誇りを


忘れることはありません。


光秀様、皆の力で


もう一度這い上がってみせましょうぞ。」


光秀は一瞬、利三を見つめたが


相槌もすることなく


下を向いた。


暗い暗い


明智家の夜が過ぎていく。





信長は重要な会議を終え


今後の天下統一の目標に向け


ある程度のスケジュールが


決まりつつあった。


この会議で決まった役職は以下の通りだ。


将軍:織田信長


副将軍:毛利元就


最高幹部:豊臣秀吉


最高幹部補佐:吉川元春


東日本エリア統括幹部:福島正則


西日本エリア統括幹部:小早川隆景


軍事部長:滝川一益


軍事部長補佐:柴田勝家




一連の明智光秀による

島津義久への賄賂事件前は


軍事部長補佐は明智光秀が就任する


予定であった。


柴田勝家はこの人事決定を何らかの


ルートで事前に把握していた。


そんな中で明智側から島津義久事件の


協力の誘いを受け


明智側に協力協定を結んでおきながら


それを裏切り、信長に密告をした。


全ては勝家の想定通りに事が進み


見事に勝家は光秀の就く予定であった


ポストを奪い取った形となったわけだ。




そんな織田家の


人事決定を終えた中で


今後は信長は


東日本エリアの重鎮である


武田信玄と交渉を行い


見事に同盟を結ぶことが出来れば


そのまま京に登り


朝廷と天下統一の儀を行う予定で


幹部らと意思を統一させていた。





一通りの会議と準備を終えた信長は


数人の部下を連れて


休息に入ることにした。


束の間のオフを取ろうというわけだ。


休息地は秀吉に


山城国の本能寺を勧められ


そこでゆっくりと休むことにした。


一週間ほど休息を取ってから


また業務に戻る予定にした。


本能寺には信長の秘蔵っ子である


森蘭丸など


ごく僅かの側近のみが帯同した。



その頃、明智光秀は


既に駿河の松平元康の下で


元康の雑務担当として業務にあたっていた。




「明智殿、信長様はどう思っているかは


分からぬが、貴殿の能力は我は非常に買っておる。


今は我慢の時だが


必ずや貴殿の力が必要になる時が


織田軍はやってくる。


その時まで


なんとか我の軍の下で


腐らずに頑張ってほしい。」


松平元康は光秀の想像とは全く違い


人格者であった。


決して、大柄な態度で光秀を迎えることなく


フラットな対応を見せてくれた。


光秀はこの松平元康


後の徳川家康が天下を取ることになる


将軍になることは


もしかしたら想像していたかもしれない。



「ところで信長様も山城国の本能寺で


一週間程の休養に入ると伺った。


我もあと数日したら


少しの間だけ休暇を取ろうかと考えておる。


その時は、明智殿も気兼ねなく休んでもらっていいぞ。」


独り言のように呟きながら


元康は部屋へと戻っていった。





光秀は松平元康の下に来てから


しばらくの間


悶々としたまま


日々を過ごしていた。


日々の雑務にあたりながら


今後の明智家の行く末


自身の待遇


考えても考えても


明るい未来を見据えることは出来なかった


斎藤利三は


なんとか前向きに声を掛けてくれ


明智家の発展を諦めないように


悟してくれた。


光秀の中では


諦めずに光を求めて


前向きに進んでいきたい気持ちと


光秀が抱える数百の部下達の


今後の行く末を案じた時に


自身は織田軍で残っていけたとしても


その下の者達はどうなるのか


分からない。


大将としての責任が


光秀の心には重くのしかかっていた。


そんな折に


松平元康から


信長の休暇の話を聞いた。



光秀はピンと来た、、


いや、ピンと来てしまった、、、



そして



その晩、



斎藤利三を部屋に呼んだ。





「いかがなさいましたか?明智様、、」


突然の呼び出しに斎藤利三も動揺していた。


「利三、、2度は言わぬ、、


よく聞け、、、」


利三に緊張感が走った。



「明日の夜明け前、、


本能寺を攻める、、


我が明智軍総勢で戦い抜く


兵を1万集めろ、、、


ここから明日の夜中に出発し


夜明け前に本能寺で敵を討つ、、、


すぐに準備しろ。」



光秀は前を見ることなく


下を向いて決して大きな声ではなく


話しているが


その言葉の強みと怖さは


これまで利三は見たことが無いような


殺気に溢れるものだった、、


利三は光秀の全ての考えを


この言葉のみで理解し


すぐに覚悟を決めることが出来た、、



「分かりました、、、


すぐに準備に取り掛かります、、、」



利三の声は震えていた、、



光秀は動く、、、


出世というレベルではない、、


これはもう天下取りの戦いとなる、、、



明智家のプライドを懸けての


戦争が


始まろうとしていた、、、





深夜3時


光秀は全ての準備を整えて


出陣した



集まった兵は13,000人


斎藤利三も


光秀の命を受けてから


凄まじいスピードで


兵と鉄砲を集めた


明智軍の兵隊が


光秀の号令で


一斉に士気を高めて


軍を起こした



この戦の最高指揮官の


光秀が声高に叫んだ



「皆の者、、よく聞け!!


我が明智軍は


全ての戦いに勝利する!!


そして今回の敵は、、、、




本能寺にあり!!!!!」



グォーーーーーッ!!!!!!!!


大群が


真夜中に大きな叫び声を上げた。




深夜4時には


目的地の本能寺に


明智軍は到着し


完全に寺の周りを包囲してみせた。



軍事隊長の斎藤利三が号令をかけた。



「皆の者、鉄砲と槍で総攻撃をかける。


目的はただ一つ、、、


信長の首だ!!!!!」



グォーーーーーーーッ!!!



ものすごい大群の叫び声に


本能寺の中も


大混乱した。


信長の側近


森蘭丸が槍を持って信長の助けに向かったが


寺の中は既に火の海状態



火を放たれ大火事が起こっており


信長の寝静まる部屋に


辿り着くのは既に困難な状態だった



「信長様!!


信長様ーっ!!!」


森蘭丸の声は


明智軍の大群の中では


全く響くことはなかった。



撃てー!!!!!!


そこかしこから


大きな声が飛び


鉄砲が幾度となく放たれた


数百の兵しか織田軍はおらず


戦争に立ち向かえる状態ではなかった


「信長はどこだー!!


信長を探せー!!!!」



斎藤利三が先陣を切って


隊を誘導させた。



明智軍の勝利は既に決まっていた。





火の海となった


部屋で信長は


もうどこにも逃げる場所は無かった



明智光秀の軍が攻めてきたことは


掛け声で分かった。



「光秀、、、


お前が我の天下統一を


阻むのか、、、


我の敵は


毛利でも


武田でも無かった、、、


我の敵は


我が織田軍であった、、、」



ポツリと信長は呟き


最後を覚悟した。


もう何も抵抗出来ない、、、


逃げることも出来ない、、



火の海の中で


信長は静かに


その時を待った、、、





夜も開け


辺りは明るい日差しで照らされていた


しかしながら


本能寺は


火の車、、、


まさに大災害の状況だった


明智軍が完全に支配し


織田信長の数百の兵は


ほぼ全滅状態であった




「我が明智軍の勝利!!!


本能寺を制圧した!!!」




甲高い声で


斎藤利三が叫んだ。


ウォーーーーーーーッ!!!!!!!


1万を超える明智軍の


反応は


山城国全体に


響き渡るかのような


地響きを見せた。



「いざっ、、、


退散!!!!」



明智光秀は勝利を確信し


兵に指令を出した。



これで


これで


良い、、、


これで良いんだ、、


我が明智軍の同志を守り抜くには


我は


こうするしかなかった、、、



いや、、、



我が天下統一を成し遂げないと


いけなかった、、、



信長様の天下統一を


指をくわえて


見るわけにはいかなかった



我の才能を、、、


我が明智軍を守るには




これしか無かったのだ、、、、




明智光秀は


涙を流しながら



本能寺を後にした。。。





〜完〜










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