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カンショー!  作者: 安城要
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(番外編)我が先人達(陰謀ハンター桜間さん2)

おや?

早希と並んで美術準備室の戸口をくぐると、本日の一番乗りは意外にも桜間であった。

「今日は早いで・・何見てるんです?」

これは、とじっとタブレットの画面を見ながら桜間は振り返りもせず言った。

「これは、ヤン・アダム・クルーゼマンの『アイザック・ランベルトゥス・ファン・デン・ベルヒとマリア・クレマーの二重肖像画』(https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ee/Jan_Adam_Kruseman_-_Portret_van_Maria_Cremer_en_haar_zoon_Mr._Isaac_Lambertus_van_den_Bergh_van_Heemstede_-_1966.10_-_Museum_Het_Valkhof.jpg)という絵です」



ちなみに、と七海は奥の倉庫と桜間の顔を見比べた。

「なんで正式部員でもない桜間さんが勝手に倉庫の鍵開けてタブレット出してきてるんですかね?どうやって鍵を開けたんですか?隠し場所は教えていないはずですが?」

あの程度と鍵、とふふん、と笑いながら桜間は肩越しに何かの数センチの小さな金属棒のようなものを数本広げて背後の二人に見せた。

「あの程度の鍵を開くことは何でもありません」

「やったのかよ、ピッキング」

「これが桜間瞳子が犯罪者への道を歩み始めた第一歩であった、ってか」

「謎があれば解きたくなる」

言いながら、桜間は全身で二人を振り返って見上げた。

「鍵があれば開きたくなる。これ人間の真理です」

「前の方はともかく、後の方はどうかと思いますよ」

「ふつーに犯罪ですから、それ」

それで、と言いながら七海はタブレットの画面を指差した。

「それ、どういう絵なんですかね?」

逆に、と桜間は手に取ったタブレットの画面を二人に掲げた。

「どういう絵だと思いますか?」

どういう絵って、と顔を見合わせた後、七海と早希は再びタブレットの画面を見つめた。

「肖像画ですよね、ふつーに」

「ちょっと歳が離れて見えますから夫婦ですはなさそうですね。親子?」

「苗字が違ったろ?」

「そうだっけ?」

そうですね、と桜間は頷いた。

「じゃあ、嫁いだ叔母さんとか?」

「叔母さんと甥で一緒の絵に収まるか?正月に親戚が集まった時のスナップ写真じゃないんだぞ?」

んじゃあ、と七海は桜間を見た。

「結局、どういう関係なんですかね、この二人」

はい、と桜間は頷いた。

「私の説では」

「出たよ、私の説」

美術準備室ここでそれが出たら、ほぼ100%間違いなんだよな」

私の説では、と語気を強めて桜間は繰り返した。

「この二人は夫婦です」

だから、夫婦にしては年取りすぎてるだろ、嫁さんの方が?

「それも新婚です」

はい?

七海は瞬きしながらタブレットを見つめた。

「この、頭の飾り物をとったらおそらく逆モヒカンだろうおばはんとこの男がですか?」

「そうなのか?」

「実はそうなのだよ。クルさんの描いた肖像画で、逆モヒおばさん出てくるんだよ。そのころの流行の髪型かもしれない」

髪型の事はともかくとして、と桜間が口を開いた。

「確かに二人の歳は離れています。しかし、彼らが夫婦であることは間違いありません。ただ、二人が歳の差を乗り越えて純粋に愛し合っていたかというと、それも違うのです。二人の結婚には思惑があったのです」

「政略結婚、ですか?」

違います、と桜間は首を振った。

「この二人の結婚は計略結婚だったのです」

はい?

この男、と桜間はタブレットの中の男を指差した。

「この男、アイザックはクレマー家が代々受け継いできた禁書と秘密を隠した絵をその目にするためにマリアに近づき、甘い言葉で彼女を誘惑し、まんまと結婚まで漕ぎつけました。そしてクレマー家に潜り込むことで禁書と絵画を手にしたのです」

はあ・・?

「もちろん彼女の両親はそんな彼の策略を見抜き結婚に反対します。しかしアイザックは暗殺者を雇って父を暗殺、心臓発作に似た症状を起こす毒薬を使って母を毒殺したのです」

「推理にも届かない妄想を言い切るなよ」

そして、と桜間は続けた。

「そして彼はマリアに言います。結婚の記念に二人の肖像画を描いてもらおうと。しかしその実、その二人の肖像画に不自然に本と絵が描かれているのは、彼がそれらを手に入れた栄光の瞬間を絵に残そうとしたのです」

「よくもまあそれだけ適当なストーリー思いつきますね。桜間さん、小説家に向いてるんじゃないですか?」

「それ、お前がいつも賢人さんに言われてる奴だろ?」

またまたそして、と桜間が続けた。

「まんまと禁書と絵を手に入れたアイザックにとって、もうマリアは不要な存在です。この絵が完成してから五日後、彼女を悲劇が襲うのですが」

が?

「続きはまた来週」

「なんだよ、また来週って。さっきまでどうでもよかった話なのに、地味に気になるよ」

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