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カンショー!  作者: 安城要
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三度(みたび) 意外

突然ですが、と美術準備室でそれぞれ適当な画集を見ていた時、突然賢人が顔を上げて七海を向いた。

「国立印刷局のお札を作っている人って、普段どんな仕事をしていると思いますか?」

は?

ほら、と賢人は笑った。

「去年、数十年ぶりに新札が出ましたが、ああいうお札の原板彫ったりしている人って、普段どんな仕事をしていると思います?だってほら、新札って何十年に一回しか出ないでしょ?」

とーとつな質問だが、確かに。勤続約40年の間に一回か二回お札の原板彫って終わり、なら、すごくコスパがいい仕事だぞ?

しかし。

さて、と言いながら七海は首を捻った。

「さあ、想像もつかないですけど、あれって切手とかのデザインもしてるんじゃなかったでしたっけ?最近はやたらといろんな柄の切手が出てますし、そんな仕事ですかね?」

実は、と言いながら賢人は奥の倉庫に行くと、すぐに平べったい箱を抱えて戻ってきた。

「大蔵省印刷局の時代には、こんなものも作ってたりしたんですよ」

「なんですか、これ?」

「これは大蔵省印刷局謹製、『凹版美術集 西洋名画シリーズ1』です」

はい?

箱を開いた賢人は下部に大蔵省印刷局と書かれた青い表紙を七海に向けた。

「お札を作る凹判彫刻の技術を磨くため、大蔵省は西洋絵画の複製の版画を作って販売していたのです」

なんと!

日本名画シリーズも有りますよ、と言いながら窓際まで歩いてカーテンを開けて外の光を入れた賢人は、表紙を開いた。

冊子ではなく、一枚ずつばらばらに入った何枚かの絵を取り出して七海に渡した。

それを見た七海は、うわ、と言いながら眩しそうに瞬きした。

「なんか表現しにくいですけど色調というか印刷が3Dというか、なんかすんごいですね、リアル感が目に刺さるというか」

「そうですね。触ってみるとインクが盛り上がっているのが判りますよ」

表紙を撫でた七海は、ほんとだ、と頷いた。

「しかしなんですね、技術の無駄遣いというか、すごい技術力なのに、こんなの作って」

「それは逆じゃないですか。それほど凄い技術を持った人達が大真面目にこんなものを作っているって、面白いと思いませんか?」

ちなみに、と賢人は頷いた。

「国立印刷局では、ご要望に応じて凹版画作ります、ってHPで広告してますよ」

まじか!

「記念品や贈答品として使用できるように装丁もしてくれるそうです(https://www.npb.go.jp/product_service/tech/ohan.html)」

ここまでくると、何やってんだか、だな。

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