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(番外編)八犬伝!(おまけ編)
七海さんは、と呼ぶ声に顔を上げる。
「今週末、早希さんと例の映画を見に行くのでしたね」
沙織の言葉に、ええ、そうですけど?と七海は頷いた。
では、と頷きながら、沙織はホワイトボードにペンを走らせた。
向水五十三太。
「この人物を知っていますか?」
は?
「何て読むんですか、その名前?」
では、と七海の問いには答えず、沙織は再びペンを走らせた。
設楽四九二郎。
「この名前は?」
「いえ、知りませんが?」
ではこれはどうですか、と沙織が再び素早くペンを走らせる。
須本太郎。
奥利狼之助出高。
高飛車和女九郎。
はあ?
「一体誰なんですか、その人達?」
はい、と沙織は頷いた。
「いずれも、名は体を表す、を地で行くような『南総里見八犬伝』の登場人物です。上から、ムコウミズイサンタ、シタラシクジロウ、スッポンタロウ、オクリオオカミノスケデタカ、タカビシャワメクロウと読みます。映画を見に行くのでしたら覚えておくとよいでしょう」
映画には出てこねえよ、そんな変な名前のモブ。