(番外編)陰謀論の女
桜間さん、と美術準備室の戸口にその姿を見つけた途端早希が椅子から立ちあがった。
「あなたに一つ申し上げたいことが有ります」
「なんでしょうか?」
はい、と早希は頷いた。
「20世紀にの初頭頃から、19世紀のから続く革命や政変の影には常にイルミナティの存在がある、と訴始めたネスタ・ウェブスターというイギリス人の女性がおりました」
ほう、と興味深そうに頷いた桜間は、それで?と先を促した。
「彼女の著作や説の突拍子の無さに、彼女の訴えは当然世間に無視されます。しかし彼女はそれすらイルミナティの暗躍によるものだと信じて疑いません。そして晩年になると彼女は近隣の住人さえイルミナティの影響下にあると思い込み、訪問者と話をする時は常に相手に銃口を向けて話をしたそうです。あなたも、陰謀、陰謀、などと言っているといずれ彼女のようになるのでは、と老婆心ながらご忠告申し上げたい」
じっと早希の言葉に耳を傾けていた桜間は、聞き終えた後も無言で暫く考えた後、ありがとうございます、と早希に向かって頭を下げた。
「ご忠告感謝いたします。今の言葉、心に沁みました」
じゃあ、と二人のやり取りを聞いていた七海が言いかけると、はい、と桜間は頷きかけた。
「私はまだまだ脇が甘かったようです」
は?
「私も早速身辺に気をつけるようにしましょう。とりあえずコー〇ンで拳銃を買ってこようと思いますが・・あ、コーナ〇ってedyって使えましたっけ?」
いえ、と早希は首を振った。
「edyは使えません」
「っていうかその前に〇ーナンに売ってねえよ、拳銃。更にその前に、あんたみたいのがいるから日本で銃器の個人所有が認められないんだよ!」