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(番外編)突っ込む
これが、と賢人はスクリーンに映し出した一枚の絵を七海に示した。
「パブロ・ピカソの『裸足の少女』です」
なるほど、と七海は頷いた。
「この絵では本当に裸足かどうかわかんないっすよね、題名詐欺っすか?」
ため息をついた賢人は、ではこんなのはどうでしょうか、と画面を切り替えた。
「同じくピカソの『人生』です」
はい、と七海は頷いた。
「人生終わっちゃってる感じが上手く表現出来ている大変よい絵かと思います」
部室に再びため息が響いた。
では、同じく青の時代のこんな絵はどうでしょうか、と賢人が再びスクリーンを切り替える。
「これは『海辺の母子像』です」
はい、と七海が再び頷いた。
「この絵は連作になっていて、次の絵で彼女は鑑賞者に背を向けて子供を抱いたまま海の中に入って行くわけですね。「補陀落やー」とか唱えながら?」
「罵るか突っ込む以外の感想はないのですかね、あなたは」
「ていうかむしろ賢人さんが突っ込みどころ満載の絵ばかり見せてくるのでは?」