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カンショー!  作者: 安城要
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(番外編)音楽と絵画

美術準備室ぶしつに入った七海は、先に来て大机に向かって美術本に目を落としている夏樹を見つけて、こんにちは、と声をかけた。

あれ?

無視?

そこで気配に気づいたのだろう、顔を上げた夏樹は髪で隠れて見えなかったヘッドホンを外しながら、こんにちわ、と笑みを見せた。

「ごめんなさい、気づかなくって」

と小さくワイヤレスのヘッドホンを振る。

めずらしいですね、とカバンを置きながら七海は夏樹の近くの椅子に腰かけた。

「夏樹さんが、音楽聞いてるとか」

別に珍しくはないわよ、と照れたように笑った後、夏樹は頷いた。

「今日は思いっきり浸りながら絵を見ようと思って、ムソルグスキーの『展覧会の絵』なんかをエンドレスで聞きながら」

ああ、と納得顔で七海も頷いた。

「確かにあの曲聞くとなんとなく絵を見たいような気になりますね、パブロフ犬というか。それもなんとなく『モナリザ』なんかを」

そうそう、と笑い合ったところで、こんにちわ、と言いながら沙織が入ってきた。

「今日はにぎやかですね」

いやいつもだろ?と思いながら、沙織が席に着くのを待ってから七海は、沙織さん、と呼びかけた。

いつもの、無表情と言うか表情の読めない沙織の顔が七海を向く。

「沙織さんは、普段音楽とか聞きます?」

多少は、とここまでの流れがわかっておらず七海の意図が読めないのか沙織は小さく頷いただけだった。

「へえ、どんな系統聞かれるんですか?」

以前は、と一瞬何かを思い出すような表情になってから、沙織は頷いた。

「幼少期はピンク・フロイドなどの洋楽系を聞いていましたが」

幼少期っていつ?そのチョイスは親の趣味?それとも自分で?

「現在は普通にJ POPを聞いています」

「へえ、例えば?」

例えば、と沙織は頷いた。

「はっぴいえんど、ロス・プリモスなどを」

それって、J POP?

たとえば、と沙織はうっとりと宙を見つめた。

「はっぴいえんどの『愛飢を』の歌詞などは詩情たっぷりで泣かせます」

“あ”から“ん”まで五十音をリズムに乗せただけじゃん、あれ。

最近は、と沙織はしたり顔で続けた。

「東京スチャラカパラダイスオーケストラなどを愛聴しています」

「私の知ってるのに似てますけど、絶対パチモンですよね、それ?」

あの、と沙織は確信を持って七海に頷きかけた。

「あのスチャラカスチャラカという和太鼓のリズムに乗ったBon Danceの総踊りのパフォーマンスは圧巻です」

「和太鼓のリズムはスチャラカじゃありませんから。それと和太鼓と盆踊りが出てきた時点でパチモンでも偽物にせもんでもない別物べつもんですよ。あと本当にパチモンのそんなグループあるのかと思いましたけど今作ったでしょ、それ?」


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