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(番外編)謎は謎のまま果てぬ
美術準備室に入った途端、先に来ていた沙織が七海を呼んだ。
「はい、なんです?」
あなたは、と沙織は無表情に七海に頷きかけた。
「ワタボウシパンシェを知っていますか?」
は?
いえ、と七海は首を振った。
「聞いたことありませんね。なんなんです、それ?」
では、と沙織が頷きながら続けた。
「マルチプルタイタンパーはどうでしょうか?」
「いえ、それも聞いたことありませんけど?」
わかりました、とどこか満足そうに頷いた沙織は、一冊の本を取り出して机の上に置くと七海の方に押しやった。
「では、この『ワタボウシパンシェでもわかるマルチプルタイタンパー』を読んで勉強してください」
「今ので、そのワタ何とかがサルであることはわかりましたが、未だにマルチ何とかの方は謎のままです」
「だからこれを読んで勉強しなさいと言っているのです」
「お断りします」